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7 一応、聖女ですけど……
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王城に着くと、ラン自らが謁見の間までわたしを案内してくれた。
謁見の間で両陛下に挨拶を終え、しばらくは、セーフス国内にある実家でゆっくりしたい旨を伝えると、自分の国に聖女がいることは歓迎だと言ってくださり、各国にも伝えてくださるとのことだった。
そして、婚約者がいなくなったことを再度、確認されたので、婚約破棄されたと伝えると、ランとの婚約を考えてほしいと言われてしまった。
わたしとランがそれを聞いて慌てたからか、両陛下は笑って、結論は急がないと言ってくださったので、家に帰って両親に相談することに決めた。
改めて、歓迎の宴を開くから今日のところは帰って良いと言われ、謁見の間を出ると、ランに話があると言われた。
特に、この後の用事もないので、ランと少し話をしてから帰ることにした。
王子と伯爵令嬢という関係性ではなく、王子と聖女だと、身分に大きな差がないため、人前以外では、ランディス殿下をランと呼び、敬語も使わなくて良いという話になった。
「そういえば、リンファがアウトン国に連れて行かれたあとの話なんだけど」
「あ、うん。何かあった?」
「俺のところに話す犬が来たんだよ」
「話す犬?」
驚いて聞き返すと、ランが頷く。
「ああ。自称フェンリル」
「自称というのがよくわからないけれど、フェンリルって、わたし達の世界では伝説の生き物であって、実物を確認した事ってないんじゃないの?」
「ああ。だから、自称だし、見た目だけではフェンリルだとは思えない」
フェンリルというのは、私達の世界では灰色の長い毛を持つ、普通の狼よりもひとまわり大きなオオカミのことだ。
アウトン国で読んだ歴史書では大型犬よりもかなり大きな体をしていると記述されていて、聖なる獣や、聖獣とも言われており、多くの人々の信仰対象にもなっている。
「その、自称フェンリル? は魔物ではないのね?」
「無害だと思うんだが、それを確かめてもらいたいんだよ。すごく口調が偉そうだけど、見た目は異国の可愛らしい犬なんだ」
「異国の犬……」
――どんな犬なのかしら? フェンリルというくらいだから、大型犬よね?
連れて行かれたのは、ランの自室だった。
未婚の男女が部屋で二人きりというのもどうかと思われたけれど、自称フェンリルについては、両陛下とランのお兄様しか知らないらしく、城の中だということもあり、誰かに見られて言いふらされることもないだろうということで中に入った。
――子供の頃とはいえ、結婚の約束をしているわけだし、両陛下だって、私とランとの婚約を考えてくださっているくらいだから、別に良いわよね?
人様の部屋なので、あまりキョロキョロと見回さないようにして、ランの後について部屋の奥に進んでいく。
ウォークインクローゼットをまるまる、自称フェンリルが使っているらしく、ランが扉を開けると、甲高い声が聞こえた。
「おい! ランディス! 腹が減ったのじゃ。クッキーを持ってくるのじゃ!」
声が聞こえてきた方向の足元を見てみると、小さな真っ白い三角耳の犬が、ランを見上げていた。
「犬種はチワワというらしい」
「チワワに似てるだけじゃ! 本当はフェンリルなのじゃーっ!」
黒目がくりくりで、ふわふわの毛を持つ犬は、わたしの両掌くらいの大きさで、ぷるぷる体を震わせて叫んだ。
可愛い!
そう思ったあと、ランに聞いてみる。
「えっと、これ、フェンリル?」
「自称フェンリルのチワー」
「チワー?」
聞き返すと、チワーはわたしの方に顔を向けて言う。
「ランティスはネーミングセンスが壊滅的じゃ! チワワに似てるから、名前はチワーだなどとぬかしよるのじゃ!」
「おい、リンファのスカートの中を覗くなよ」
「ランティス! わしは聖獣じゃぞ! そんなことをするわけがながろう! む! この感じは、お主、聖女じゃな!?」
チワーはランに抗議するように、何度か左の前足で床をペシペシと叩いたあと、ハッとしたように口をあけて、わたしを見上げた。
「はい。一応、聖女ですけど……」
「やはりな! ちょっと失礼するぞ」
チワーはそう言って、左の前足を私の右足にのせた。
すると、突然、わたしとランの目の前に、熊くらいの大きさのふわふわした、灰色の長い毛を持つ生き物が現れた。
大きさが規格外だけれど、それを考えなければ優しい目をした狼とも言える。
「リンファ!」
ランがわたしを引き寄せ庇うように立ってから、大きな動物に向かって尋ねる。
「チワーなのか?」
「そうじゃ! こんにちは、のチワーじゃ!」
「チワワのチワーって言ってるだろ」
胸を張って言うチワーに、ランが呆れた顔で言った。
謁見の間で両陛下に挨拶を終え、しばらくは、セーフス国内にある実家でゆっくりしたい旨を伝えると、自分の国に聖女がいることは歓迎だと言ってくださり、各国にも伝えてくださるとのことだった。
そして、婚約者がいなくなったことを再度、確認されたので、婚約破棄されたと伝えると、ランとの婚約を考えてほしいと言われてしまった。
わたしとランがそれを聞いて慌てたからか、両陛下は笑って、結論は急がないと言ってくださったので、家に帰って両親に相談することに決めた。
改めて、歓迎の宴を開くから今日のところは帰って良いと言われ、謁見の間を出ると、ランに話があると言われた。
特に、この後の用事もないので、ランと少し話をしてから帰ることにした。
王子と伯爵令嬢という関係性ではなく、王子と聖女だと、身分に大きな差がないため、人前以外では、ランディス殿下をランと呼び、敬語も使わなくて良いという話になった。
「そういえば、リンファがアウトン国に連れて行かれたあとの話なんだけど」
「あ、うん。何かあった?」
「俺のところに話す犬が来たんだよ」
「話す犬?」
驚いて聞き返すと、ランが頷く。
「ああ。自称フェンリル」
「自称というのがよくわからないけれど、フェンリルって、わたし達の世界では伝説の生き物であって、実物を確認した事ってないんじゃないの?」
「ああ。だから、自称だし、見た目だけではフェンリルだとは思えない」
フェンリルというのは、私達の世界では灰色の長い毛を持つ、普通の狼よりもひとまわり大きなオオカミのことだ。
アウトン国で読んだ歴史書では大型犬よりもかなり大きな体をしていると記述されていて、聖なる獣や、聖獣とも言われており、多くの人々の信仰対象にもなっている。
「その、自称フェンリル? は魔物ではないのね?」
「無害だと思うんだが、それを確かめてもらいたいんだよ。すごく口調が偉そうだけど、見た目は異国の可愛らしい犬なんだ」
「異国の犬……」
――どんな犬なのかしら? フェンリルというくらいだから、大型犬よね?
連れて行かれたのは、ランの自室だった。
未婚の男女が部屋で二人きりというのもどうかと思われたけれど、自称フェンリルについては、両陛下とランのお兄様しか知らないらしく、城の中だということもあり、誰かに見られて言いふらされることもないだろうということで中に入った。
――子供の頃とはいえ、結婚の約束をしているわけだし、両陛下だって、私とランとの婚約を考えてくださっているくらいだから、別に良いわよね?
人様の部屋なので、あまりキョロキョロと見回さないようにして、ランの後について部屋の奥に進んでいく。
ウォークインクローゼットをまるまる、自称フェンリルが使っているらしく、ランが扉を開けると、甲高い声が聞こえた。
「おい! ランディス! 腹が減ったのじゃ。クッキーを持ってくるのじゃ!」
声が聞こえてきた方向の足元を見てみると、小さな真っ白い三角耳の犬が、ランを見上げていた。
「犬種はチワワというらしい」
「チワワに似てるだけじゃ! 本当はフェンリルなのじゃーっ!」
黒目がくりくりで、ふわふわの毛を持つ犬は、わたしの両掌くらいの大きさで、ぷるぷる体を震わせて叫んだ。
可愛い!
そう思ったあと、ランに聞いてみる。
「えっと、これ、フェンリル?」
「自称フェンリルのチワー」
「チワー?」
聞き返すと、チワーはわたしの方に顔を向けて言う。
「ランティスはネーミングセンスが壊滅的じゃ! チワワに似てるから、名前はチワーだなどとぬかしよるのじゃ!」
「おい、リンファのスカートの中を覗くなよ」
「ランティス! わしは聖獣じゃぞ! そんなことをするわけがながろう! む! この感じは、お主、聖女じゃな!?」
チワーはランに抗議するように、何度か左の前足で床をペシペシと叩いたあと、ハッとしたように口をあけて、わたしを見上げた。
「はい。一応、聖女ですけど……」
「やはりな! ちょっと失礼するぞ」
チワーはそう言って、左の前足を私の右足にのせた。
すると、突然、わたしとランの目の前に、熊くらいの大きさのふわふわした、灰色の長い毛を持つ生き物が現れた。
大きさが規格外だけれど、それを考えなければ優しい目をした狼とも言える。
「リンファ!」
ランがわたしを引き寄せ庇うように立ってから、大きな動物に向かって尋ねる。
「チワーなのか?」
「そうじゃ! こんにちは、のチワーじゃ!」
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胸を張って言うチワーに、ランが呆れた顔で言った。
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