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8 負担にはなりませんね
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「見たか、ランディス! これがわしの本当の姿なのじゃぞ!」
えっへん、といった感じで鼻を鳴らしたチワーだったけれど、すぐにまた、チワワの姿に戻ってしまった。
「な、なぜじゃ!?」
チワーはおろおろしたあと、わたしを見上げて言う。
「そうか……。聖女の力が足りんのじゃな」
「どういうことですか?」
「わしは聖なる力を奪われて、こんな姿になってしまったのじゃ。聖女から力を分けてもらえればと思ったのじゃが……」
「……聖なる力?」
聞き返すと、チワーは真剣な顔で言う。
「とにかく、わしにクッキーを食べさせてくれ。お腹がペコペコなのじゃ」
チワーはウォークインクローゼットの中から出ると、近くにあったソファーの上に飛び乗ろうとした。
でも、ジャンプ力が足りずに、前足を上げてソファーにもたれかかるような形になり、後ろ足だけでは体が支えきれないのかプルプルし始めた。
「何をやってるんだよ」
ランがチワーを片手で抱えて、ソファーの上にのせてあげた。
「ふむ、ありがとうランディス。褒めてつかわす」
「それは光栄だよ」
あしらうようにランは応えると、わたしの方に振り返る。
「リンファもこっちに来て座れよ」
「うん、ありがとう」
ランはチワーの横に座ったので、私は黒のローテーブルをはさんだ向かい側に座らせてもらった。
ランはローテーブルにのっていた、クッキーが入った小瓶の蓋を開け、中から一枚だけ取り出すと、それを半分に割って、チワーの口元に持っていく。
「ほら」
「すまぬな」
チワーはランにクッキーを食べさせてもらうと、ソファーの上にちょこんと座った状態で口を開く。
「わしの正体はフェンリルなのじゃが、力が弱っており、現在はチワワの姿でしか過ごせぬ。これは、フェンリルの外見で小さくなると、身の危険が増えるからじゃ」
「チワワでも誘拐されそうな気がするのですが」
「だから、ランディスの部屋に居候しておるのじゃ」
口の周りの毛にクッキーのかけらをつけた状態で誇らしげな顔をされても、というか、チワワの姿で偉そうにされても可愛いだけだわ。
そんなことを口にすると怒られそうなので質問をしてみる。
「チワーは、現在、力を奪われているという状態なのでしょうか?」
「そうじゃな。民の人のフェンリルへの信仰心や神や聖女への信仰心が薄れておる。特に、ここから遠い東の地に怪しい気配を感じるのじゃ」
東の地と聞いて、わたしとランは顔を見合わせた。
アウトン国はセーフス国からちょうど東の地にあたる。
私という聖女がいなくなったから動き始めたということ?
「何か、不穏な動きを感じられるのですか?」
「そうじゃな。だが、一応、もう一人の聖女がおるから、魔物も警戒しておるようじゃが」
「先程、フェンリルらしき姿になられたのに、また戻ってしまったのはどういうことなのでしょう?」
「お主は聖女ではあるが、信仰心が足りないようじゃ」
「申し訳ございません」
謝ると、チワーは首を何度か縦に振る。
「それが絶対に悪いことだとは言わぬが、わしを元の姿に戻すまでの聖なる力には足りぬのじゃ。ただ、持ち前の正義感の強さで、魔物から人々を守るための守護の力は飛び抜けておる」
「では、役目を果たすことは可能ということですか?」
「そうじゃな。あと、リンファに触れている間は、わしも元の姿に戻れるやもしれん」
チワーの言葉を聞いたランが焦った顔で尋ねる。
「それって、リンファの負担になるんじゃないのか?」
「聖なる力を借りるだけじゃ。ちょっと体力は奪われるやもしれんが、寝てる時に使う体力くらいだと思えば良い」
「それなら、そこまでの負担にはなりませんね」
納得すると、チワーも首を縦に振る。
「じゃが、本当の姿になるには広いところではないと辛いな。あの小部屋では、元の姿に戻ると身動きが取れぬ」
ウォークインクローゼットでは、本来の大きさでは狭いものね。
「普段はチワーの姿でいいだろ」
「そうじゃな。あとは、チャージが出来るかを試してみたいのじゃが」
「チャージ?」
わたしとランの声が重なった。
「そうじゃ。すぐにフェンリル化せずに、体内に聖なる力をためておき、ここぞという時に少しでも長く元の状態に戻れるようにするのじゃ」
チワーはそう言うと、ランに顔を向ける。
「クッキーはついとらぬか? まだ良い匂いがするのじゃ」
「毛についてるよ」
そう言って、ランが毛についていたクッキーのかけらを取って食べさせてあげると、チワーは満足そうにして、ソファーの上から降りた。
「では、早速試してみるのじゃ!」
チワーはわたしの足元までやって来ると、キラキラした大きな目を向けてわたしにお願いしてくる。
「すまぬが抱き上げてくれ」
「あ、はい」
両手で抱き上げて太腿の上にのせると、チワーはくつろいた状態になってお腹をつける。
「ふむ。良い感じじゃ」
チワーが顔もわたしの太腿の上にのせようとした時だった。
「……これは」
チワーはその場で立ち上がり、ランに向かって叫ぶ。
「東の地に心当たりはあるのじゃな!?」
「ああ。リンファを追い出した国がある」
「聖女を追い出すだなどど馬鹿なことを! ついに動き始めるぞ! ラン! リンファ! これからわしの言う事に従うのじゃ!」
一体、何が動き始めるのかはわからないけれど、とにかく、チワーの言うことに従うことにした。
※次話はチーチル視点です。
えっへん、といった感じで鼻を鳴らしたチワーだったけれど、すぐにまた、チワワの姿に戻ってしまった。
「な、なぜじゃ!?」
チワーはおろおろしたあと、わたしを見上げて言う。
「そうか……。聖女の力が足りんのじゃな」
「どういうことですか?」
「わしは聖なる力を奪われて、こんな姿になってしまったのじゃ。聖女から力を分けてもらえればと思ったのじゃが……」
「……聖なる力?」
聞き返すと、チワーは真剣な顔で言う。
「とにかく、わしにクッキーを食べさせてくれ。お腹がペコペコなのじゃ」
チワーはウォークインクローゼットの中から出ると、近くにあったソファーの上に飛び乗ろうとした。
でも、ジャンプ力が足りずに、前足を上げてソファーにもたれかかるような形になり、後ろ足だけでは体が支えきれないのかプルプルし始めた。
「何をやってるんだよ」
ランがチワーを片手で抱えて、ソファーの上にのせてあげた。
「ふむ、ありがとうランディス。褒めてつかわす」
「それは光栄だよ」
あしらうようにランは応えると、わたしの方に振り返る。
「リンファもこっちに来て座れよ」
「うん、ありがとう」
ランはチワーの横に座ったので、私は黒のローテーブルをはさんだ向かい側に座らせてもらった。
ランはローテーブルにのっていた、クッキーが入った小瓶の蓋を開け、中から一枚だけ取り出すと、それを半分に割って、チワーの口元に持っていく。
「ほら」
「すまぬな」
チワーはランにクッキーを食べさせてもらうと、ソファーの上にちょこんと座った状態で口を開く。
「わしの正体はフェンリルなのじゃが、力が弱っており、現在はチワワの姿でしか過ごせぬ。これは、フェンリルの外見で小さくなると、身の危険が増えるからじゃ」
「チワワでも誘拐されそうな気がするのですが」
「だから、ランディスの部屋に居候しておるのじゃ」
口の周りの毛にクッキーのかけらをつけた状態で誇らしげな顔をされても、というか、チワワの姿で偉そうにされても可愛いだけだわ。
そんなことを口にすると怒られそうなので質問をしてみる。
「チワーは、現在、力を奪われているという状態なのでしょうか?」
「そうじゃな。民の人のフェンリルへの信仰心や神や聖女への信仰心が薄れておる。特に、ここから遠い東の地に怪しい気配を感じるのじゃ」
東の地と聞いて、わたしとランは顔を見合わせた。
アウトン国はセーフス国からちょうど東の地にあたる。
私という聖女がいなくなったから動き始めたということ?
「何か、不穏な動きを感じられるのですか?」
「そうじゃな。だが、一応、もう一人の聖女がおるから、魔物も警戒しておるようじゃが」
「先程、フェンリルらしき姿になられたのに、また戻ってしまったのはどういうことなのでしょう?」
「お主は聖女ではあるが、信仰心が足りないようじゃ」
「申し訳ございません」
謝ると、チワーは首を何度か縦に振る。
「それが絶対に悪いことだとは言わぬが、わしを元の姿に戻すまでの聖なる力には足りぬのじゃ。ただ、持ち前の正義感の強さで、魔物から人々を守るための守護の力は飛び抜けておる」
「では、役目を果たすことは可能ということですか?」
「そうじゃな。あと、リンファに触れている間は、わしも元の姿に戻れるやもしれん」
チワーの言葉を聞いたランが焦った顔で尋ねる。
「それって、リンファの負担になるんじゃないのか?」
「聖なる力を借りるだけじゃ。ちょっと体力は奪われるやもしれんが、寝てる時に使う体力くらいだと思えば良い」
「それなら、そこまでの負担にはなりませんね」
納得すると、チワーも首を縦に振る。
「じゃが、本当の姿になるには広いところではないと辛いな。あの小部屋では、元の姿に戻ると身動きが取れぬ」
ウォークインクローゼットでは、本来の大きさでは狭いものね。
「普段はチワーの姿でいいだろ」
「そうじゃな。あとは、チャージが出来るかを試してみたいのじゃが」
「チャージ?」
わたしとランの声が重なった。
「そうじゃ。すぐにフェンリル化せずに、体内に聖なる力をためておき、ここぞという時に少しでも長く元の状態に戻れるようにするのじゃ」
チワーはそう言うと、ランに顔を向ける。
「クッキーはついとらぬか? まだ良い匂いがするのじゃ」
「毛についてるよ」
そう言って、ランが毛についていたクッキーのかけらを取って食べさせてあげると、チワーは満足そうにして、ソファーの上から降りた。
「では、早速試してみるのじゃ!」
チワーはわたしの足元までやって来ると、キラキラした大きな目を向けてわたしにお願いしてくる。
「すまぬが抱き上げてくれ」
「あ、はい」
両手で抱き上げて太腿の上にのせると、チワーはくつろいた状態になってお腹をつける。
「ふむ。良い感じじゃ」
チワーが顔もわたしの太腿の上にのせようとした時だった。
「……これは」
チワーはその場で立ち上がり、ランに向かって叫ぶ。
「東の地に心当たりはあるのじゃな!?」
「ああ。リンファを追い出した国がある」
「聖女を追い出すだなどど馬鹿なことを! ついに動き始めるぞ! ラン! リンファ! これからわしの言う事に従うのじゃ!」
一体、何が動き始めるのかはわからないけれど、とにかく、チワーの言うことに従うことにした。
※次話はチーチル視点です。
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