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26 育ての親との決別 ③
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「聞こえなかったようでしたら、もう一度言いましょうか。お礼の言葉を伝えるのは大切なことですものね」
笑顔でそう言ってから立ち上がり、深々と頭を下げる。
「養子縁組を解消していただきありがとうございます。そして、今まで本当にありがとうございました。。我が子だからこそ可愛いと思えるのだと、そんな話をよく耳にします。ですので、血の繋がらない私を育ててくれたことは、精神的にとても苦労されたかと思います」
実際は、エルンベル伯爵夫妻は子育てはしておらず、ナニーなどに任せていた。
でも、本当のお母様が亡くなった時点で、わたしは放り出されていてもおかしくない状況だった。
それなのに、伯爵は私を捨てなかったし、後に嫁入りした夫人も私を邸に置いてくれた。
それは世間体を考えのことなのかもしれない。
でも、結果的にここまで生きていられたのは、彼らのおかげでもある。
だから、エルンベル邸に置いてくれたことや、私にお金を使ってくれたことには感謝している。
放り出されていたら、私はミオ様の話し相手になることもなかったし、フェリックスに出会うこともなかった。
……ミシェルにしてみれば、自分の両親が私を放り出してくれておいたほうが、まだ良い結果になっていたかもしれない。
自分と比べる相手がいないから、ミシェルの性格ももう少しはマシになってるかもしれなかったからね。
「今頃になって有り難みがわかったのか」
「……私が養子だったことを隠していたのは、お二人の優しさからだったのですよね。それについても感謝しています」
さすがのエルンベル伯爵夫妻もこれが嫌味だということに気が付いたようで、顔を真っ赤にして何か言おうと口を開いた。
でも、私の隣に座っているミオ様を見たことで、何とか感情を抑えられたようだった。
でも、ミシェルはそうじゃなかった。
ミシェルが笑顔を作って私に尋ねてくる。
「あの、養子縁組の解消の書類は役所に提出されたんですか?」
「ええ。色々と段取りに手間取ってしまって、今日の朝に提出させてもらいました」
私も笑顔を作って答えると、ミシェルは挑戦的な笑みを浮かべる。
「では、あなたはもうお姉様ではありませんので、シェリルさんと呼ばせていただきますね。エルンベル伯爵家と縁が切れたのですから、もうあなたは貴族ではありません。ですから、今日からは平民としての暮らしをしていくんですよね?」
「それがそうでもないんですよ」
「は?」
ミシェルが聞き返してきたので、相手が誰だかは伝えずに養子の話をする。
「離婚したのでエルンベル姓に戻ったわけですが、養子縁組の解消で私が平民になるという話を知った、とある貴族の方が私を養子にしたいと言ってくださったの」
「ど、どういうことだ、まさか、エイト公爵家の養子になるんじゃないだろうな!?」
ミシェルではなく、エルンベル伯爵が血相を変えて聞いてきた。
「いいえ」
「私の家がシェリルを養子になんてしたら、お兄様はシェリルと結婚できなくなってしまいますから、それはありえませんわ」
言葉少なく答えただけの私に代わってミオ様が丁寧に答えてくれた。
「……フェリックス様は、まだシェリルさんに未練があるんですか」
ミシェルが怒りなのか悔しさなのかわからないけれど、体を打ち震わせてミオ様に尋ねた。
「そうですわね。ずっとお兄様はシェリルのことを思い続けていましたわ。でも、誰かさんとは違ってシェリルのことを本当に愛しているから、婚約中も結婚後はシェリルの迷惑になりそうなことはしていませんでしたわね」
「手紙を送っていたじゃないですか!」
伯爵夫人が反論すると、ミオ様は失笑する。
「返事がこなかったので送っただけですわ。途中からは迷惑になっているのだと思って諦めましたもの」
「その手紙は私の元には届いていませんので、迷惑どころか何も知りませんでした。申し訳ございません」
「シェリルのせいではありませんわ。謝らないでくださいな」
「ですが、私の送った手紙に返事がこないこともおかしいと思うべきでした」
私とミオ様が茶番劇をしていると、エルンベル伯爵夫妻は無言で私だけ睨んできた。
お兄様は諦めたような顔をして黙り込んでいる。
その時、ミシェルが私たちの会話に割り込んできた。
「エイト公爵家ではないというのであれば、誰がシェリルさんを養子にするんですか!?」
「そのうちわかりますわよ」
ミオ様の答えでは納得がいかないミシェルは私に尋ねてくる。
「どうせ、男爵家か子爵家、良くて伯爵家なんでしょう?」
「いずれわかることですが、どうしても今知りたいんですか?」
「ええ。ぜひ!」
ミシェルはどうしても私にマウントを取りたいようだった。
ため息を吐いてから、ミオ様に視線を送る。
ミオ様は私の視線を受け止めて頷くと、予定通りにメイドに指示をすした。
「ミシェルさん、私の兄になってくれる方が外で待ってくれているので、どうせならご紹介しますね」
「ええ。お願いします」
私が話しかけると、不安そうにしているエルンベル伯爵夫妻とは違い、ミシェルは挑戦的な笑みを浮かべて頷いた。
※
次の話はミシェル視点になります。
笑顔でそう言ってから立ち上がり、深々と頭を下げる。
「養子縁組を解消していただきありがとうございます。そして、今まで本当にありがとうございました。。我が子だからこそ可愛いと思えるのだと、そんな話をよく耳にします。ですので、血の繋がらない私を育ててくれたことは、精神的にとても苦労されたかと思います」
実際は、エルンベル伯爵夫妻は子育てはしておらず、ナニーなどに任せていた。
でも、本当のお母様が亡くなった時点で、わたしは放り出されていてもおかしくない状況だった。
それなのに、伯爵は私を捨てなかったし、後に嫁入りした夫人も私を邸に置いてくれた。
それは世間体を考えのことなのかもしれない。
でも、結果的にここまで生きていられたのは、彼らのおかげでもある。
だから、エルンベル邸に置いてくれたことや、私にお金を使ってくれたことには感謝している。
放り出されていたら、私はミオ様の話し相手になることもなかったし、フェリックスに出会うこともなかった。
……ミシェルにしてみれば、自分の両親が私を放り出してくれておいたほうが、まだ良い結果になっていたかもしれない。
自分と比べる相手がいないから、ミシェルの性格ももう少しはマシになってるかもしれなかったからね。
「今頃になって有り難みがわかったのか」
「……私が養子だったことを隠していたのは、お二人の優しさからだったのですよね。それについても感謝しています」
さすがのエルンベル伯爵夫妻もこれが嫌味だということに気が付いたようで、顔を真っ赤にして何か言おうと口を開いた。
でも、私の隣に座っているミオ様を見たことで、何とか感情を抑えられたようだった。
でも、ミシェルはそうじゃなかった。
ミシェルが笑顔を作って私に尋ねてくる。
「あの、養子縁組の解消の書類は役所に提出されたんですか?」
「ええ。色々と段取りに手間取ってしまって、今日の朝に提出させてもらいました」
私も笑顔を作って答えると、ミシェルは挑戦的な笑みを浮かべる。
「では、あなたはもうお姉様ではありませんので、シェリルさんと呼ばせていただきますね。エルンベル伯爵家と縁が切れたのですから、もうあなたは貴族ではありません。ですから、今日からは平民としての暮らしをしていくんですよね?」
「それがそうでもないんですよ」
「は?」
ミシェルが聞き返してきたので、相手が誰だかは伝えずに養子の話をする。
「離婚したのでエルンベル姓に戻ったわけですが、養子縁組の解消で私が平民になるという話を知った、とある貴族の方が私を養子にしたいと言ってくださったの」
「ど、どういうことだ、まさか、エイト公爵家の養子になるんじゃないだろうな!?」
ミシェルではなく、エルンベル伯爵が血相を変えて聞いてきた。
「いいえ」
「私の家がシェリルを養子になんてしたら、お兄様はシェリルと結婚できなくなってしまいますから、それはありえませんわ」
言葉少なく答えただけの私に代わってミオ様が丁寧に答えてくれた。
「……フェリックス様は、まだシェリルさんに未練があるんですか」
ミシェルが怒りなのか悔しさなのかわからないけれど、体を打ち震わせてミオ様に尋ねた。
「そうですわね。ずっとお兄様はシェリルのことを思い続けていましたわ。でも、誰かさんとは違ってシェリルのことを本当に愛しているから、婚約中も結婚後はシェリルの迷惑になりそうなことはしていませんでしたわね」
「手紙を送っていたじゃないですか!」
伯爵夫人が反論すると、ミオ様は失笑する。
「返事がこなかったので送っただけですわ。途中からは迷惑になっているのだと思って諦めましたもの」
「その手紙は私の元には届いていませんので、迷惑どころか何も知りませんでした。申し訳ございません」
「シェリルのせいではありませんわ。謝らないでくださいな」
「ですが、私の送った手紙に返事がこないこともおかしいと思うべきでした」
私とミオ様が茶番劇をしていると、エルンベル伯爵夫妻は無言で私だけ睨んできた。
お兄様は諦めたような顔をして黙り込んでいる。
その時、ミシェルが私たちの会話に割り込んできた。
「エイト公爵家ではないというのであれば、誰がシェリルさんを養子にするんですか!?」
「そのうちわかりますわよ」
ミオ様の答えでは納得がいかないミシェルは私に尋ねてくる。
「どうせ、男爵家か子爵家、良くて伯爵家なんでしょう?」
「いずれわかることですが、どうしても今知りたいんですか?」
「ええ。ぜひ!」
ミシェルはどうしても私にマウントを取りたいようだった。
ため息を吐いてから、ミオ様に視線を送る。
ミオ様は私の視線を受け止めて頷くと、予定通りにメイドに指示をすした。
「ミシェルさん、私の兄になってくれる方が外で待ってくれているので、どうせならご紹介しますね」
「ええ。お願いします」
私が話しかけると、不安そうにしているエルンベル伯爵夫妻とは違い、ミシェルは挑戦的な笑みを浮かべて頷いた。
※
次の話はミシェル視点になります。
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