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第3章 戻ってきた救世主
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「それにしても何がどうなってんだ。屋敷の中に入ってきたと同時に執事やメイドが、兄さんが暴れているから助けてくれって血相変えて頼むもんだから見に来たらこれだ」
シード様は不機嫌そうな表情で、わたしを見た後にエルファのほうにも目を向けた。
エルファはマディアスに介抱されている。
彼女は鼻血を流しているのか、鼻を押さえていて彼女の手は血で真っ赤に染まっていた。
私のせいだわ。
エルファの様子が知りたくて、痛む体を何とか上半身を起こす。
すると、シード様がロビースト様を押し退けて、わたしの所へやって来ると片膝を付いた。
「酷いもんだな。遅くなってわりぃ。ソレーヌって女のことでちょっと色々とあって出かけてた。だから、お前らが来てることを昨日知ったんだ。どっかのクソ野郎が俺には内緒にしててな」
「……クソ野郎とは誰のことですか」
ロビースト様が苦虫を噛み潰したような顔をして尋ねると、シード様は顔だけ上げて答える。
「わかんねぇのかよ。お前だよ。性格悪いよな。騎士に剣を抜かせるために女に暴力ふるうなんてよ」
「……どういうことですか?」
わたしが尋ねると、シード様は教えてくれる。
「そこにいる、お前が連れてきた騎士が気に食わねぇんだよ」
「どうしてです?」
「あれじゃね? 自分よりも顔が良いのが許せねぇんじゃねぇの?」
「そ、そんなわけないでしょう!」
ロビースト様は顔を真っ赤にして叫んだ。
そんなロビースト様は相手にせず、シード様はマディアスに話しかける。
「騎士も我慢したのは偉いが、主人をボコらせてたら騎士の意味ねえぞ。剣を抜くのは良くねぇが素手でいけ、素手で。兄さんに関しては俺が許す」
「申し訳ございませんでした。私は騎士失格です」
「違うわ、マディアス! この家の当主はロビースト様よ! 剣を抜いていたら、あなたが危なかった」
ロビースト様のことだもの。
自分が悪くても、この屋敷内で剣を抜き、ロビースト様に切っ先を向けたということで、マディアスが悪いということにしたでしょう。
叫んだからか、腰に激痛が走り、思わず前のめりになると、シード様が聞いてくる。
「横になるか?」
「はい」
ゆっくりと立ち上がろうとすると、シード様がわたしの体を抱き上げた。
「えっ!?」
「悪いな。このほうが早いだろ」
「あ、え! あ、あの、申し訳ございません」
あっという間に、わたしはベッドの上に寝かせられてしまった。
「この家には医者が常駐してっから呼んできてもらおう。それから、そこの侍女も診てもらえ」
わたしにそう言ってから、シード様は廊下に集まっていたメイドたちに声を掛ける。
「聞こえただろ。仕事しろ!」
「は、はい! すぐに医者を呼んでまいります!」
メイドたちが散らばっていくと、ロビースト様が叫ぶ。
「わたくしの家の医者ですよ! 勝手に使わないでください!」
「お前の家の中で起きたことだろ。公爵令嬢に暴力ふるいやがって。あと、侍女のこともそうだ。侍女だからって暴力ふるってもいいわけじゃねえんだよ。馬鹿か」
「いくら何でも言いすぎでしょう!」
「……へえ?」
シード様は言葉で噛みついてきたロビースト様に近づき、彼のシャツの襟首を掴む。
「言い過ぎ? お前に言われたくねぇんだが?」
「わたくしは当然のことしか言っておりません!」
「お前には当然でも、俺には当然じゃねぇんだよ」
シード様はマディアスではなく、様子を見に来ていた部屋の外にいる騎士に命令する。
「こいつを部屋に連れて行け」
「ふざけたことを言わないでください! わたくしはセフィリアに用事があるんです!」
「用事ってなんだよ。暴力をふるうことか? そんなことが用事になるんだったら、近いうちに俺がお前にその用事ってやつをやってやるよ。それとも、今この場でしてほしいのか?」
「わ、わたくしはそんなことは一言も言っておりません!」
ロビースト様はヒステリックに叫ぶと、シード様の手を振り払って、逃げるようにわたしの部屋から出て行った。
入れ替わりに、メイドに引きずられるようにして白衣を来た年配の男性がやって来た。
「ちゃんと診てもらえよ。夜にまた様子を見に来る」
シード様はわたしの顔を見て言うと、エルファとマディアスにも声を掛けて部屋を出ていく。
今回は助かった。
でも、これからはどうなるの?
不安な気持ちが胸に押し寄せてくると同時に、殴られた時に切ったのか、口の中で血の味がすることに、今初めて気が付いた。
シード様は不機嫌そうな表情で、わたしを見た後にエルファのほうにも目を向けた。
エルファはマディアスに介抱されている。
彼女は鼻血を流しているのか、鼻を押さえていて彼女の手は血で真っ赤に染まっていた。
私のせいだわ。
エルファの様子が知りたくて、痛む体を何とか上半身を起こす。
すると、シード様がロビースト様を押し退けて、わたしの所へやって来ると片膝を付いた。
「酷いもんだな。遅くなってわりぃ。ソレーヌって女のことでちょっと色々とあって出かけてた。だから、お前らが来てることを昨日知ったんだ。どっかのクソ野郎が俺には内緒にしててな」
「……クソ野郎とは誰のことですか」
ロビースト様が苦虫を噛み潰したような顔をして尋ねると、シード様は顔だけ上げて答える。
「わかんねぇのかよ。お前だよ。性格悪いよな。騎士に剣を抜かせるために女に暴力ふるうなんてよ」
「……どういうことですか?」
わたしが尋ねると、シード様は教えてくれる。
「そこにいる、お前が連れてきた騎士が気に食わねぇんだよ」
「どうしてです?」
「あれじゃね? 自分よりも顔が良いのが許せねぇんじゃねぇの?」
「そ、そんなわけないでしょう!」
ロビースト様は顔を真っ赤にして叫んだ。
そんなロビースト様は相手にせず、シード様はマディアスに話しかける。
「騎士も我慢したのは偉いが、主人をボコらせてたら騎士の意味ねえぞ。剣を抜くのは良くねぇが素手でいけ、素手で。兄さんに関しては俺が許す」
「申し訳ございませんでした。私は騎士失格です」
「違うわ、マディアス! この家の当主はロビースト様よ! 剣を抜いていたら、あなたが危なかった」
ロビースト様のことだもの。
自分が悪くても、この屋敷内で剣を抜き、ロビースト様に切っ先を向けたということで、マディアスが悪いということにしたでしょう。
叫んだからか、腰に激痛が走り、思わず前のめりになると、シード様が聞いてくる。
「横になるか?」
「はい」
ゆっくりと立ち上がろうとすると、シード様がわたしの体を抱き上げた。
「えっ!?」
「悪いな。このほうが早いだろ」
「あ、え! あ、あの、申し訳ございません」
あっという間に、わたしはベッドの上に寝かせられてしまった。
「この家には医者が常駐してっから呼んできてもらおう。それから、そこの侍女も診てもらえ」
わたしにそう言ってから、シード様は廊下に集まっていたメイドたちに声を掛ける。
「聞こえただろ。仕事しろ!」
「は、はい! すぐに医者を呼んでまいります!」
メイドたちが散らばっていくと、ロビースト様が叫ぶ。
「わたくしの家の医者ですよ! 勝手に使わないでください!」
「お前の家の中で起きたことだろ。公爵令嬢に暴力ふるいやがって。あと、侍女のこともそうだ。侍女だからって暴力ふるってもいいわけじゃねえんだよ。馬鹿か」
「いくら何でも言いすぎでしょう!」
「……へえ?」
シード様は言葉で噛みついてきたロビースト様に近づき、彼のシャツの襟首を掴む。
「言い過ぎ? お前に言われたくねぇんだが?」
「わたくしは当然のことしか言っておりません!」
「お前には当然でも、俺には当然じゃねぇんだよ」
シード様はマディアスではなく、様子を見に来ていた部屋の外にいる騎士に命令する。
「こいつを部屋に連れて行け」
「ふざけたことを言わないでください! わたくしはセフィリアに用事があるんです!」
「用事ってなんだよ。暴力をふるうことか? そんなことが用事になるんだったら、近いうちに俺がお前にその用事ってやつをやってやるよ。それとも、今この場でしてほしいのか?」
「わ、わたくしはそんなことは一言も言っておりません!」
ロビースト様はヒステリックに叫ぶと、シード様の手を振り払って、逃げるようにわたしの部屋から出て行った。
入れ替わりに、メイドに引きずられるようにして白衣を来た年配の男性がやって来た。
「ちゃんと診てもらえよ。夜にまた様子を見に来る」
シード様はわたしの顔を見て言うと、エルファとマディアスにも声を掛けて部屋を出ていく。
今回は助かった。
でも、これからはどうなるの?
不安な気持ちが胸に押し寄せてくると同時に、殴られた時に切ったのか、口の中で血の味がすることに、今初めて気が付いた。
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