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31 ごめんね(リアムside)
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父上達との話し合いを終えたあと、アイリスと一緒に邸に戻る際に、彼女に聞いてみた。
「アイリス、今回のこと、契約違反だと思ってるよね?」
「……はい?」
厄介なことに巻き込んでしまい、嫌われてしまったかもしれないと思っていた。
けれど、アイリスは僕の質問に不思議そうな顔で小首を傾げただけで、怒っている様子には見えなかった。
「だって、契約条件はお飾りの妻で、君が嫌なことはしなくて良いって言っていたのに、君に嫌なところへ行ってもらわないといけなくなった」
「そんなことは気になさらないでください! 私がもっと、貴族としてのマナーを学んでいれば、こんなことにはなりませんでしたし、元々は先に私の家族がご迷惑をかけていますから……」
アイリスは悲しそうな顔になり、しゅんと肩を落とした。
男爵令嬢の生活が長かっただけに、普段の彼女には気品が足りないと言われればそうかもしれない。
けれど、僕にはそんなことは気にならなかった。
逆に、そうじゃないことに癒やされていたから。
もちろん、社交場では良くないことだから、プリステッド公爵令嬢はそこを責めてくるつもりなんだろう。
「アイリスが気にすることじゃないよ。それよりも僕のせいで本当にごめん」
「リアム、お飾りの妻になる時に、王家主催のパーティーなどには出る約束でした。今回は王家主催ではありませんが、マオニール公爵家や領民にとっては良いお話でもあります。出なければいけない時だと思います」
アイリスはにこりと微笑んで続ける。
「せめて、恩返しとして、それくらいさせていただけませんか?」
「それは、助かるけど……」
こんなことを思うのは、領主として失格かもしれない。
でも、口には出さず、思うだけなら許してほしかった。
アイリスにお茶会に出てもらうことは、大人の事情といえば、当たり前の判断だろう。
だけど、彼女に嫌われたくなかった。
お茶会に行くことによって、彼女が落ち込み、僕から離れていこうとするんじゃないかと思うと怖かった。
僕のことを嫌うくらいなら、行かなくていい。
そう、言ってしまいたかった。
こんな気持ちは、公爵としては絶対に口に出してはいけないことくらいわかっている。
「リアム、まだ、お茶会までには時間があります。付け焼き刃になるかもしれませんが、プリステッド公爵令嬢の思い通りにならないように頑張りますので、そんな顔をしないでください!」
僕が暗い表情をしているからか、アイリスはいつもよりも元気に笑う。
お飾りの妻だなんて、自分から彼女に言い出したことなのに、今となっては後悔している。
熱量を返せないだとか、そんなことを言うんじゃなかった。
返せないとかじゃなくて、自分の好みの女性に出会えていなかっただけだったのに。
「無理はしなくていいよ。君が笑っていてくれるのが一番だから」
「リ、リアム? どうしたんですか、いきなり!?」
「正直な気持ちを伝えただけだよ」
「ありがとうございます……! あ、もしかして、今のは、私が動揺しないかどうか確かめるテストだったりしますか?」
「そんな意地悪なことはしないって」
苦笑すると、アイリスは頬を少しだけ赤くして微笑む。
「笑ってるように心がけますね」
「うん」
頷いて、柔らかな彼女の左頬に触れた。
すると、頬だけではなく、耳まで赤くして、アイリスは僕を見た。
「リアム……?」
「ごめんね」
あんなことを言ったのに、好きになってしまってごめん。
お飾りの妻にしてあげられそうになくてごめん。
謝りたいことはたくさんある。
たくさんの思いを込めて、彼女に言った。
でも、彼女にしてみれば、突然、謝られたにしかすぎなかった。
「どうして謝るんですか?」
「君に迷惑をかけてるから」
「迷惑なんてかけられていません!」
「お飾りの妻をお願いしたんだよ」
「私は世界で一番幸せなお飾りの妻だと思いますから、気になさらないでください」
微笑む彼女を見て思った。
もし、君を好きになってしまったと伝えたら、アイリスは、契約違反だと言って、僕の前からいなくなってしまうんだろうか。
「アイリス、今回のこと、契約違反だと思ってるよね?」
「……はい?」
厄介なことに巻き込んでしまい、嫌われてしまったかもしれないと思っていた。
けれど、アイリスは僕の質問に不思議そうな顔で小首を傾げただけで、怒っている様子には見えなかった。
「だって、契約条件はお飾りの妻で、君が嫌なことはしなくて良いって言っていたのに、君に嫌なところへ行ってもらわないといけなくなった」
「そんなことは気になさらないでください! 私がもっと、貴族としてのマナーを学んでいれば、こんなことにはなりませんでしたし、元々は先に私の家族がご迷惑をかけていますから……」
アイリスは悲しそうな顔になり、しゅんと肩を落とした。
男爵令嬢の生活が長かっただけに、普段の彼女には気品が足りないと言われればそうかもしれない。
けれど、僕にはそんなことは気にならなかった。
逆に、そうじゃないことに癒やされていたから。
もちろん、社交場では良くないことだから、プリステッド公爵令嬢はそこを責めてくるつもりなんだろう。
「アイリスが気にすることじゃないよ。それよりも僕のせいで本当にごめん」
「リアム、お飾りの妻になる時に、王家主催のパーティーなどには出る約束でした。今回は王家主催ではありませんが、マオニール公爵家や領民にとっては良いお話でもあります。出なければいけない時だと思います」
アイリスはにこりと微笑んで続ける。
「せめて、恩返しとして、それくらいさせていただけませんか?」
「それは、助かるけど……」
こんなことを思うのは、領主として失格かもしれない。
でも、口には出さず、思うだけなら許してほしかった。
アイリスにお茶会に出てもらうことは、大人の事情といえば、当たり前の判断だろう。
だけど、彼女に嫌われたくなかった。
お茶会に行くことによって、彼女が落ち込み、僕から離れていこうとするんじゃないかと思うと怖かった。
僕のことを嫌うくらいなら、行かなくていい。
そう、言ってしまいたかった。
こんな気持ちは、公爵としては絶対に口に出してはいけないことくらいわかっている。
「リアム、まだ、お茶会までには時間があります。付け焼き刃になるかもしれませんが、プリステッド公爵令嬢の思い通りにならないように頑張りますので、そんな顔をしないでください!」
僕が暗い表情をしているからか、アイリスはいつもよりも元気に笑う。
お飾りの妻だなんて、自分から彼女に言い出したことなのに、今となっては後悔している。
熱量を返せないだとか、そんなことを言うんじゃなかった。
返せないとかじゃなくて、自分の好みの女性に出会えていなかっただけだったのに。
「無理はしなくていいよ。君が笑っていてくれるのが一番だから」
「リ、リアム? どうしたんですか、いきなり!?」
「正直な気持ちを伝えただけだよ」
「ありがとうございます……! あ、もしかして、今のは、私が動揺しないかどうか確かめるテストだったりしますか?」
「そんな意地悪なことはしないって」
苦笑すると、アイリスは頬を少しだけ赤くして微笑む。
「笑ってるように心がけますね」
「うん」
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すると、頬だけではなく、耳まで赤くして、アイリスは僕を見た。
「リアム……?」
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謝りたいことはたくさんある。
たくさんの思いを込めて、彼女に言った。
でも、彼女にしてみれば、突然、謝られたにしかすぎなかった。
「どうして謝るんですか?」
「君に迷惑をかけてるから」
「迷惑なんてかけられていません!」
「お飾りの妻をお願いしたんだよ」
「私は世界で一番幸せなお飾りの妻だと思いますから、気になさらないでください」
微笑む彼女を見て思った。
もし、君を好きになってしまったと伝えたら、アイリスは、契約違反だと言って、僕の前からいなくなってしまうんだろうか。
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