35 / 51
34 頼りになる味方
しおりを挟む
それから約1週間後、リュカが何を言おうとしていたのか、私は知ることになった。
「リリー、紹介するわ。私の兄の婚約者であり、今回、私の護衛に付いて下さるフセラブル辺境伯の令嬢のリアラ様よ」
「お初にお目にかかります。リリー様。リアラ・フセラブルと申します」
カーテシーをしてくれたリアラ様は、学園の制服を着ていても違和感がなく、彼女が護衛であるだなんて見た目だけでは全くわからなかった。
護衛というから、一見、気の強そうな方かと思ったけれど、そういう訳でもなさそう。
黒色の長い髪を1つにまとめてシニヨンにしているリアラ様は、目が大きくて笑顔の似合う、可愛らしい顔立ちの方だった。
スレンダーな体型で、私よりもかなり体の線が細い。
「リリー・ミアシスと申します。お会い出来て光栄です」
カーテシーをしてから挨拶をすると、ティナ様が笑顔で口を開く。
「リリー、リアラ様はもうすでに学園を卒業されておられるのだけど、私たちの護衛をするには、制服姿のほうが違和感がないからということで制服を着てくれているの。本当は年上なのよ?」
「えっ!? そんな風には見えません!」
驚いてリアラ様を見て言うと、リアラ様は苦笑する。
「違和感がないのであれば良かったです。卒業してから制服を着るなんてって思う人もいるでしょうし、せめて、違和感なく着れていたら良いかなと思っていましたので」
「あの、フセラブル辺境伯令嬢、私は伯爵令嬢ですので敬語を使っていただかなくても結構です」
「ですが、今回、リリー様の護衛も私の仕事になりますので」
「そ、そんな! 身分が高いだけでなく、年下の私には敬語なんていりません!」
「そう言われましても」
困った様子でリアラ様がティナ様を見ると、視線を受けたティナ様は苦笑して私に言う。
「あなたは将来、隣国とはいえ王妃になるのよ? リアラ様の婚約者である私の兄は王子だけれど、王様にはならないんだから、あなたのほうが立場は上よね? ……でも、そうなると、私もあなたに敬語を使わなくてはいけなくなるわね」
「それとこれとは別なのではないでしょうか 今の段階では、お二人の身分のほうが上です」
「わかったわ。あの、リアラ様。リリーには普通に話をしてあげて下さい」
「本当に良いんですか?」
リアラ様が尋ねてきたので、大きく首を縦に振ってから頭を下げる。
「もちろんです。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
リアラ様も頭を下げてきたので、何度かお互いにペコペコと頭を下げあったあと、顔を見合わせて笑う。
良い人そうで良かったわ。
いくらリュカの紹介であっても、気の合わない人物だっているだろうからと心配していたのよね。
リアラ様はティナ様の兄であり、自分の婚約者であるルーザーから、ティナ様と私の身辺警護を頼まれたとのことだった。
「くれぐれも無茶はしない様にと言われたけど、護衛なんだから、多少の無茶は必要よね」
好戦的な性格なのか、リアラ様が両拳を握りしめて、なぜか瞳をキラキラさせる。
私よりも年上みたいだけど、外見だけじゃなくて、中身も年上の様には見えないわね。
そう思いつつ、頼りになる味方ができて心強かった。
*****
その日の昼休み。
ティナ様の場合は食事は毒味役の女性に食べてもらったあと、少し時間を空けてからでないと食事をすることができない。
だから今は別のテーブルに座られていて、私とリアラ様で食事をしていた時だった。
向かいに座っている、リアラ様が尋ねてくる。
「詳しくは聞いていないんだけど、とある女性に接したくないのよね?」
「そうなんです。よくわからないんですけれど、とある女性が私に何かと接触しようとしてくるんです」
私から接触しようとするならまだしも、テレサのほうから接触しようとしてくるなんておかしい。
リュカも言っていたように時間が巻き戻る前も、わざとテレサは私と廊下でぶつかったのかもしれないわ。
私とテレサは別クラスだった。
廊下ですれ違う際にぶつかり、それを機にテレサから話しかけてくる様になって親しくなった。
私は何年も前から、彼女に目をつけられていたのかもしれない。
アイザックが目的で近づいてきているようではない。
彼女たちは何を考えてるの?
「リリー様、顔色が悪いけれど大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
本当は大丈夫じゃない。
だけど、しっかりしなくちゃ。
何のためにリュカがリアラ様を私の護衛につけてくれたのかわからなくなってしまう。
俯けていた顔を上げて、リアラ様に謝る。
「心配をおかけして申し訳ございません」
「気にしないで。それにしてもよっぽど嫌なのね」
心配そうな表情で私を見たリアラ様だったけれど、すぐにハッとした顔になって、後ろを振り返った。
「どうかしたんですか?」
「視線を感じたから、何かなと思ったんだけど、リリー様たちが警戒している意味がわかったわ」
「……どういうことです?」
「彼女、こちらに殺気を帯びた視線を送ってきていたから」
先程までリアラ様が見ていた方向を見ると、そこには複数の女子生徒と一緒にいるテレサの姿があった。
「リリー、紹介するわ。私の兄の婚約者であり、今回、私の護衛に付いて下さるフセラブル辺境伯の令嬢のリアラ様よ」
「お初にお目にかかります。リリー様。リアラ・フセラブルと申します」
カーテシーをしてくれたリアラ様は、学園の制服を着ていても違和感がなく、彼女が護衛であるだなんて見た目だけでは全くわからなかった。
護衛というから、一見、気の強そうな方かと思ったけれど、そういう訳でもなさそう。
黒色の長い髪を1つにまとめてシニヨンにしているリアラ様は、目が大きくて笑顔の似合う、可愛らしい顔立ちの方だった。
スレンダーな体型で、私よりもかなり体の線が細い。
「リリー・ミアシスと申します。お会い出来て光栄です」
カーテシーをしてから挨拶をすると、ティナ様が笑顔で口を開く。
「リリー、リアラ様はもうすでに学園を卒業されておられるのだけど、私たちの護衛をするには、制服姿のほうが違和感がないからということで制服を着てくれているの。本当は年上なのよ?」
「えっ!? そんな風には見えません!」
驚いてリアラ様を見て言うと、リアラ様は苦笑する。
「違和感がないのであれば良かったです。卒業してから制服を着るなんてって思う人もいるでしょうし、せめて、違和感なく着れていたら良いかなと思っていましたので」
「あの、フセラブル辺境伯令嬢、私は伯爵令嬢ですので敬語を使っていただかなくても結構です」
「ですが、今回、リリー様の護衛も私の仕事になりますので」
「そ、そんな! 身分が高いだけでなく、年下の私には敬語なんていりません!」
「そう言われましても」
困った様子でリアラ様がティナ様を見ると、視線を受けたティナ様は苦笑して私に言う。
「あなたは将来、隣国とはいえ王妃になるのよ? リアラ様の婚約者である私の兄は王子だけれど、王様にはならないんだから、あなたのほうが立場は上よね? ……でも、そうなると、私もあなたに敬語を使わなくてはいけなくなるわね」
「それとこれとは別なのではないでしょうか 今の段階では、お二人の身分のほうが上です」
「わかったわ。あの、リアラ様。リリーには普通に話をしてあげて下さい」
「本当に良いんですか?」
リアラ様が尋ねてきたので、大きく首を縦に振ってから頭を下げる。
「もちろんです。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
リアラ様も頭を下げてきたので、何度かお互いにペコペコと頭を下げあったあと、顔を見合わせて笑う。
良い人そうで良かったわ。
いくらリュカの紹介であっても、気の合わない人物だっているだろうからと心配していたのよね。
リアラ様はティナ様の兄であり、自分の婚約者であるルーザーから、ティナ様と私の身辺警護を頼まれたとのことだった。
「くれぐれも無茶はしない様にと言われたけど、護衛なんだから、多少の無茶は必要よね」
好戦的な性格なのか、リアラ様が両拳を握りしめて、なぜか瞳をキラキラさせる。
私よりも年上みたいだけど、外見だけじゃなくて、中身も年上の様には見えないわね。
そう思いつつ、頼りになる味方ができて心強かった。
*****
その日の昼休み。
ティナ様の場合は食事は毒味役の女性に食べてもらったあと、少し時間を空けてからでないと食事をすることができない。
だから今は別のテーブルに座られていて、私とリアラ様で食事をしていた時だった。
向かいに座っている、リアラ様が尋ねてくる。
「詳しくは聞いていないんだけど、とある女性に接したくないのよね?」
「そうなんです。よくわからないんですけれど、とある女性が私に何かと接触しようとしてくるんです」
私から接触しようとするならまだしも、テレサのほうから接触しようとしてくるなんておかしい。
リュカも言っていたように時間が巻き戻る前も、わざとテレサは私と廊下でぶつかったのかもしれないわ。
私とテレサは別クラスだった。
廊下ですれ違う際にぶつかり、それを機にテレサから話しかけてくる様になって親しくなった。
私は何年も前から、彼女に目をつけられていたのかもしれない。
アイザックが目的で近づいてきているようではない。
彼女たちは何を考えてるの?
「リリー様、顔色が悪いけれど大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
本当は大丈夫じゃない。
だけど、しっかりしなくちゃ。
何のためにリュカがリアラ様を私の護衛につけてくれたのかわからなくなってしまう。
俯けていた顔を上げて、リアラ様に謝る。
「心配をおかけして申し訳ございません」
「気にしないで。それにしてもよっぽど嫌なのね」
心配そうな表情で私を見たリアラ様だったけれど、すぐにハッとした顔になって、後ろを振り返った。
「どうかしたんですか?」
「視線を感じたから、何かなと思ったんだけど、リリー様たちが警戒している意味がわかったわ」
「……どういうことです?」
「彼女、こちらに殺気を帯びた視線を送ってきていたから」
先程までリアラ様が見ていた方向を見ると、そこには複数の女子生徒と一緒にいるテレサの姿があった。
28
あなたにおすすめの小説
異母妹にすべてを奪われ追い出されるように嫁いだ相手は変人の王太子殿下でした。
あとさん♪
恋愛
リラジェンマは第一王女。王位継承権一位の王太女であったが、停戦の証として隣国へ連行された。名目は『花嫁として』。
だが実際は、実父に疎まれたうえに異母妹がリラジェンマの許婚(いいなずけ)と恋仲になったからだ。
要するに、リラジェンマは厄介払いに隣国へ行くはめになったのだ。
ところで隣国の王太子って、何者だろう? 初対面のはずなのに『良かった。間に合ったね』とは? 彼は母国の事情を、承知していたのだろうか。明るい笑顔に惹かれ始めるリラジェンマであったが、彼はなにか裏がありそうで信じきれない。
しかも『弟みたいな女の子を生んで欲しい』とはどういうこと⁈¿?
言葉の違い、習慣の違いに戸惑いつつも距離を縮めていくふたり。
一方、王太女を失った母国ではじわじわと異変が起こり始め、ついに異母妹がリラジェンマと立場を交換してくれと押しかける。
※設定はゆるんゆるん
※R15は保険
※現実世界に似たような状況がありますが、拙作の中では忠実な再現はしていません。なんちゃって異世界だとご了承ください。
※拙作『王子殿下がその婚約破棄を裁定しますが、ご自分の恋模様には四苦八苦しているようです』と同じ世界観です。
※このお話は小説家になろうにも投稿してます。
※このお話のスピンオフ『結婚さえすれば問題解決!…って思った過去がわたしにもあって』もよろしくお願いします。
ベリンダ王女がグランデヌエベ滞在中にしでかしたアレコレに振り回された侍女(ルチア)のお話です。
<(_ _)>
【完結】時戻り令嬢は復讐する
やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。
しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。
自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。
夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか?
迷いながらもユートリーは動き出す。
サスペンス要素ありの作品です。
設定は緩いです。
6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした
Karamimi
恋愛
15歳のフローラは、ドミスティナ王国で平和に暮らしていた。そんなフローラは元公爵令嬢。
約9年半前、フェザー公爵に嵌められ国家反逆罪で家族ともども捕まったフローラ。
必死に無実を訴えるフローラの父親だったが、国王はフローラの父親の言葉を一切聞き入れず、両親と兄を処刑。フローラと2歳年上の姉は、国外追放になった。身一つで放り出された幼い姉妹。特に体の弱かった姉は、寒さと飢えに耐えられず命を落とす。
そんな中1人生き残ったフローラは、運よく近くに住む女性の助けを受け、何とか平民として生活していた。
そんなある日、大けがを負った青年を森の中で見つけたフローラ。家に連れて帰りすぐに医者に診せたおかげで、青年は一命を取り留めたのだが…
「どうして俺を助けた!俺はあの場で死にたかったのに!」
そうフローラを怒鳴りつける青年。そんな青年にフローラは
「あなた様がどんな辛い目に合ったのかは分かりません。でも、せっかく助かったこの命、無駄にしてはいけません!」
そう伝え、大けがをしている青年を献身的に看護するのだった。一緒に生活する中で、いつしか2人の間に、恋心が芽生え始めるのだが…
甘く切ない異世界ラブストーリーです。
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる
迷い人
恋愛
お爺様は何時も私に言っていた。
「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」
そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。
祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。
シラキス公爵家の三男カール。
外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。
シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。
そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。
でも、私に愛を語る彼は私を知らない。
でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。
だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。
なのに気が付けば、婚約を??
婚約者なのだからと屋敷に入り込み。
婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。
そして……私を脅した。
私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!
【完結】マザコンな婚約者はいりません
たなまき
恋愛
伯爵令嬢シェリーは、婚約者である侯爵子息デューイと、その母親である侯爵夫人に長年虐げられてきた。
貴族学校に通うシェリーは、昼時の食堂でデューイに婚約破棄を告げられる。
その内容は、シェリーは自分の婚約者にふさわしくない、あらたな婚約者に子爵令嬢ヴィオラをむかえるというものだった。
デューイはヴィオラこそが次期侯爵夫人にふさわしいと言うが、その発言にシェリーは疑問を覚える。
デューイは侯爵家の跡継ぎではない。シェリーの家へ婿入りするための婚約だったはずだ。
だが、話を聞かないデューイにその発言の真意を確認することはできなかった。
婚約破棄によって、シェリーは人生に希望を抱きはじめる。
周囲の人々との関係にも変化があらわれる。
他サイトでも掲載しています。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる