あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜

風見ゆうみ

文字の大きさ
36 / 51

35 落ち着かないランチタイム

しおりを挟む
「彼女に命を狙われているとかではないわよね?」
「と思うんですが、わからないんです」
「わからない、って、心当たりがあるの?」

 リアラ様に訝しげな表情で尋ねられて、言葉に詰まる。

 何て答えたらいいの?
 笑われるかもしれないけれど、夢で見たとでも言ってみる?
 でも、そんなことを言ったら、馬鹿にしていると思われるかもしれない。
 上手い言い訳が見つからないわ。

「リリー様、大丈夫ですか?」

 黙っている私を見て、リアラ様が心配そうな顔をして見つめてきた。

「大丈夫です。ご心配いただきありがとうございます。なんといいますか、彼女が私に近づいてこようとする理由がわからないんです。だから、何か目的があるとしか思えなくて」
「その目的が何だかわからないから怖いのね?」
「はい。あと、その、怖い夢を見たんです」
「夢?」
「はい。たかが、夢如きで怯えるなと思われるかもしれませんが」
「そんなことは思わないから、どんな夢を見たか教えてくれる?」

 リアラ様が大きく首を横に振って話を促してくれた。
 頭のおかしい女性だと、リアラ様に思われる覚悟を決めて口を開く。

「公爵令嬢をタイディ嬢が殺そうとする夢です。しかも、私に罪をなすりつけるんです」
「夢でも気分が悪いわね」

 リアラ様は苦虫を噛み潰したような顔になって言った。

「あの、リアラ様」
「どうしたの?」
「信じて下さるんですか?」
「え? そういう夢を見たんでしょ? 疑う必要あるの? それとも、今言ったことって嘘なの?」

 きょとんとした顔でリアラ様に聞き返され、私は少しだけ返答に困る。

 こんなに簡単に信用してもらえるなんて思ってもいなかったから驚きだわ。

「いえ、嘘ではありません。ただ、普通は信じられないかなと思っただけです」
「用心するに越したことはないでしょう。それに、そんな夢を見るなんて、もしかしたら本当にあり得る未来かもしれないじゃない」
「……ありがとうございます」
「礼を言われることじゃないわ。嫌な夢を見たら不安になる気持ちはわかるもの。だから気にしないで」

 リアラ様は笑顔で言ったあと、私を促す。

「とりあえず、私たちだけでも先に食べ終えてしまいましょう。そこから、改めてお話しない? もちろん、タイディ様の話ではなくて、お互いを知るための話をしましょう」
「ありがとうございます」

 リアラ様に微笑んでみせたけれど、すぐに驚きで目を見開いた。
 テレサがこちらに向かって歩いてくるのが見えたからだ。
 リアラ様は私の様子を見て訝しげな顔になったあと、後ろを振り返った。
 そして、状況を把握して優しく声を掛けてくれる。

「心配しなくて大丈夫だからね。そのために私がいるんだから」
「私も大丈夫です。負けたくないので頑張ります」

 そうよ。
 考えてみたら、テレサは私を罠にはめて家族を殺した悪い人よ。
 そんな人に負けたくなんかない!
 復讐するんだって決めたじゃないの!

 近付いてきたテレサは独房で最後に見た時よりも、若々しく可愛らしい顔立ちだ。
 でも、よく見ると、どこか目がギラついている様にも思えた。

「あの、お昼をご一緒したいのですが、よろしいでしょうか」
「申し訳ないのですが、あとから第一王女殿下がいらっしゃいます。そのため部外者の方と食事をご一緒することはできません」

 リアラ様は笑顔でテレサにきっぱりと答えた。
 すると、テレサは笑みを引きつらせる。

「そ、それはそうでしたか。あの、私はミアシス伯爵令嬢とお話がしたいだけなのですが、それでも駄目なのでしょうか」
「申し訳ございません。第一王女殿下をお待ちしておりますので、お話することはできません」

 今度は私が笑顔で答えると、テレサは苦虫を噛み潰したような顔になった。

「またの機会にお願い致します」

 頭を下げると、テレサはこれ以上食い下がっても意味がないと諦めたのか、大人しく引き下がっていった。
 テレサの背中を見つめながら、リアラ様が話しかけてくる。

「明らかに何かありそうだし私も調べてみるわ。わざわざ、話をしたこともない人間に、何の理由もなく声を掛けてくる訳がないもの」
「そうですね。まだ、リアラ様に興味を持ったならまだしも、私に声を掛けてくる理由がわかりません。リュカ殿下の婚約者だからという理由もありますが、そんな理由であれば、余計に仲良くなりたくありません」
「何にしても、リュカ殿下がリリー様を守ってほしいと思われる理由はわかったわ。あとは、彼女がリリー様と接触しようとする本当の理由を掴みたいわね」
「それがわかれば、私も気持ちが楽になります」

 リアラ様に頷いてから考える。

 アイザックと婚約しなければ、向こうから関わって来ようとしないと思っていたけれど、アイザックは諦めてない様だし、テレサもそうだわ。
 もしかして、これは私だけの問題じゃなくて、私の家のほうにも問題があったりするのかしら。
 心当たりがあるかどうか、お父様に話をしてみないと駄目ね。

 テレサのこともあり、この日の昼食は、ほとんど食事が喉を通らなかった。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。 しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。 自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。 夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか? 迷いながらもユートリーは動き出す。 サスペンス要素ありの作品です。 設定は緩いです。 6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。

【完結】マザコンな婚約者はいりません

たなまき
恋愛
伯爵令嬢シェリーは、婚約者である侯爵子息デューイと、その母親である侯爵夫人に長年虐げられてきた。 貴族学校に通うシェリーは、昼時の食堂でデューイに婚約破棄を告げられる。 その内容は、シェリーは自分の婚約者にふさわしくない、あらたな婚約者に子爵令嬢ヴィオラをむかえるというものだった。 デューイはヴィオラこそが次期侯爵夫人にふさわしいと言うが、その発言にシェリーは疑問を覚える。 デューイは侯爵家の跡継ぎではない。シェリーの家へ婿入りするための婚約だったはずだ。 だが、話を聞かないデューイにその発言の真意を確認することはできなかった。 婚約破棄によって、シェリーは人生に希望を抱きはじめる。 周囲の人々との関係にも変化があらわれる。 他サイトでも掲載しています。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる

迷い人
恋愛
 お爺様は何時も私に言っていた。 「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」  そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。  祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。  シラキス公爵家の三男カール。  外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。  シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。  そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。  でも、私に愛を語る彼は私を知らない。  でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。  だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。  なのに気が付けば、婚約を??  婚約者なのだからと屋敷に入り込み。  婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。  そして……私を脅した。  私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!

【完結】優雅に踊ってくださいまし

きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。 この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。 完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。 が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。 -ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。 #よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。 #鬱展開が無いため、過激さはありません。 #ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。

処理中です...