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35 落ち着かないランチタイム
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「彼女に命を狙われているとかではないわよね?」
「と思うんですが、わからないんです」
「わからない、って、心当たりがあるの?」
リアラ様に訝しげな表情で尋ねられて、言葉に詰まる。
何て答えたらいいの?
笑われるかもしれないけれど、夢で見たとでも言ってみる?
でも、そんなことを言ったら、馬鹿にしていると思われるかもしれない。
上手い言い訳が見つからないわ。
「リリー様、大丈夫ですか?」
黙っている私を見て、リアラ様が心配そうな顔をして見つめてきた。
「大丈夫です。ご心配いただきありがとうございます。なんといいますか、彼女が私に近づいてこようとする理由がわからないんです。だから、何か目的があるとしか思えなくて」
「その目的が何だかわからないから怖いのね?」
「はい。あと、その、怖い夢を見たんです」
「夢?」
「はい。たかが、夢如きで怯えるなと思われるかもしれませんが」
「そんなことは思わないから、どんな夢を見たか教えてくれる?」
リアラ様が大きく首を横に振って話を促してくれた。
頭のおかしい女性だと、リアラ様に思われる覚悟を決めて口を開く。
「公爵令嬢をタイディ嬢が殺そうとする夢です。しかも、私に罪をなすりつけるんです」
「夢でも気分が悪いわね」
リアラ様は苦虫を噛み潰したような顔になって言った。
「あの、リアラ様」
「どうしたの?」
「信じて下さるんですか?」
「え? そういう夢を見たんでしょ? 疑う必要あるの? それとも、今言ったことって嘘なの?」
きょとんとした顔でリアラ様に聞き返され、私は少しだけ返答に困る。
こんなに簡単に信用してもらえるなんて思ってもいなかったから驚きだわ。
「いえ、嘘ではありません。ただ、普通は信じられないかなと思っただけです」
「用心するに越したことはないでしょう。それに、そんな夢を見るなんて、もしかしたら本当にあり得る未来かもしれないじゃない」
「……ありがとうございます」
「礼を言われることじゃないわ。嫌な夢を見たら不安になる気持ちはわかるもの。だから気にしないで」
リアラ様は笑顔で言ったあと、私を促す。
「とりあえず、私たちだけでも先に食べ終えてしまいましょう。そこから、改めてお話しない? もちろん、タイディ様の話ではなくて、お互いを知るための話をしましょう」
「ありがとうございます」
リアラ様に微笑んでみせたけれど、すぐに驚きで目を見開いた。
テレサがこちらに向かって歩いてくるのが見えたからだ。
リアラ様は私の様子を見て訝しげな顔になったあと、後ろを振り返った。
そして、状況を把握して優しく声を掛けてくれる。
「心配しなくて大丈夫だからね。そのために私がいるんだから」
「私も大丈夫です。負けたくないので頑張ります」
そうよ。
考えてみたら、テレサは私を罠にはめて家族を殺した悪い人よ。
そんな人に負けたくなんかない!
復讐するんだって決めたじゃないの!
近付いてきたテレサは独房で最後に見た時よりも、若々しく可愛らしい顔立ちだ。
でも、よく見ると、どこか目がギラついている様にも思えた。
「あの、お昼をご一緒したいのですが、よろしいでしょうか」
「申し訳ないのですが、あとから第一王女殿下がいらっしゃいます。そのため部外者の方と食事をご一緒することはできません」
リアラ様は笑顔でテレサにきっぱりと答えた。
すると、テレサは笑みを引きつらせる。
「そ、それはそうでしたか。あの、私はミアシス伯爵令嬢とお話がしたいだけなのですが、それでも駄目なのでしょうか」
「申し訳ございません。第一王女殿下をお待ちしておりますので、お話することはできません」
今度は私が笑顔で答えると、テレサは苦虫を噛み潰したような顔になった。
「またの機会にお願い致します」
頭を下げると、テレサはこれ以上食い下がっても意味がないと諦めたのか、大人しく引き下がっていった。
テレサの背中を見つめながら、リアラ様が話しかけてくる。
「明らかに何かありそうだし私も調べてみるわ。わざわざ、話をしたこともない人間に、何の理由もなく声を掛けてくる訳がないもの」
「そうですね。まだ、リアラ様に興味を持ったならまだしも、私に声を掛けてくる理由がわかりません。リュカ殿下の婚約者だからという理由もありますが、そんな理由であれば、余計に仲良くなりたくありません」
「何にしても、リュカ殿下がリリー様を守ってほしいと思われる理由はわかったわ。あとは、彼女がリリー様と接触しようとする本当の理由を掴みたいわね」
「それがわかれば、私も気持ちが楽になります」
リアラ様に頷いてから考える。
アイザックと婚約しなければ、向こうから関わって来ようとしないと思っていたけれど、アイザックは諦めてない様だし、テレサもそうだわ。
もしかして、これは私だけの問題じゃなくて、私の家のほうにも問題があったりするのかしら。
心当たりがあるかどうか、お父様に話をしてみないと駄目ね。
テレサのこともあり、この日の昼食は、ほとんど食事が喉を通らなかった。
「と思うんですが、わからないんです」
「わからない、って、心当たりがあるの?」
リアラ様に訝しげな表情で尋ねられて、言葉に詰まる。
何て答えたらいいの?
笑われるかもしれないけれど、夢で見たとでも言ってみる?
でも、そんなことを言ったら、馬鹿にしていると思われるかもしれない。
上手い言い訳が見つからないわ。
「リリー様、大丈夫ですか?」
黙っている私を見て、リアラ様が心配そうな顔をして見つめてきた。
「大丈夫です。ご心配いただきありがとうございます。なんといいますか、彼女が私に近づいてこようとする理由がわからないんです。だから、何か目的があるとしか思えなくて」
「その目的が何だかわからないから怖いのね?」
「はい。あと、その、怖い夢を見たんです」
「夢?」
「はい。たかが、夢如きで怯えるなと思われるかもしれませんが」
「そんなことは思わないから、どんな夢を見たか教えてくれる?」
リアラ様が大きく首を横に振って話を促してくれた。
頭のおかしい女性だと、リアラ様に思われる覚悟を決めて口を開く。
「公爵令嬢をタイディ嬢が殺そうとする夢です。しかも、私に罪をなすりつけるんです」
「夢でも気分が悪いわね」
リアラ様は苦虫を噛み潰したような顔になって言った。
「あの、リアラ様」
「どうしたの?」
「信じて下さるんですか?」
「え? そういう夢を見たんでしょ? 疑う必要あるの? それとも、今言ったことって嘘なの?」
きょとんとした顔でリアラ様に聞き返され、私は少しだけ返答に困る。
こんなに簡単に信用してもらえるなんて思ってもいなかったから驚きだわ。
「いえ、嘘ではありません。ただ、普通は信じられないかなと思っただけです」
「用心するに越したことはないでしょう。それに、そんな夢を見るなんて、もしかしたら本当にあり得る未来かもしれないじゃない」
「……ありがとうございます」
「礼を言われることじゃないわ。嫌な夢を見たら不安になる気持ちはわかるもの。だから気にしないで」
リアラ様は笑顔で言ったあと、私を促す。
「とりあえず、私たちだけでも先に食べ終えてしまいましょう。そこから、改めてお話しない? もちろん、タイディ様の話ではなくて、お互いを知るための話をしましょう」
「ありがとうございます」
リアラ様に微笑んでみせたけれど、すぐに驚きで目を見開いた。
テレサがこちらに向かって歩いてくるのが見えたからだ。
リアラ様は私の様子を見て訝しげな顔になったあと、後ろを振り返った。
そして、状況を把握して優しく声を掛けてくれる。
「心配しなくて大丈夫だからね。そのために私がいるんだから」
「私も大丈夫です。負けたくないので頑張ります」
そうよ。
考えてみたら、テレサは私を罠にはめて家族を殺した悪い人よ。
そんな人に負けたくなんかない!
復讐するんだって決めたじゃないの!
近付いてきたテレサは独房で最後に見た時よりも、若々しく可愛らしい顔立ちだ。
でも、よく見ると、どこか目がギラついている様にも思えた。
「あの、お昼をご一緒したいのですが、よろしいでしょうか」
「申し訳ないのですが、あとから第一王女殿下がいらっしゃいます。そのため部外者の方と食事をご一緒することはできません」
リアラ様は笑顔でテレサにきっぱりと答えた。
すると、テレサは笑みを引きつらせる。
「そ、それはそうでしたか。あの、私はミアシス伯爵令嬢とお話がしたいだけなのですが、それでも駄目なのでしょうか」
「申し訳ございません。第一王女殿下をお待ちしておりますので、お話することはできません」
今度は私が笑顔で答えると、テレサは苦虫を噛み潰したような顔になった。
「またの機会にお願い致します」
頭を下げると、テレサはこれ以上食い下がっても意味がないと諦めたのか、大人しく引き下がっていった。
テレサの背中を見つめながら、リアラ様が話しかけてくる。
「明らかに何かありそうだし私も調べてみるわ。わざわざ、話をしたこともない人間に、何の理由もなく声を掛けてくる訳がないもの」
「そうですね。まだ、リアラ様に興味を持ったならまだしも、私に声を掛けてくる理由がわかりません。リュカ殿下の婚約者だからという理由もありますが、そんな理由であれば、余計に仲良くなりたくありません」
「何にしても、リュカ殿下がリリー様を守ってほしいと思われる理由はわかったわ。あとは、彼女がリリー様と接触しようとする本当の理由を掴みたいわね」
「それがわかれば、私も気持ちが楽になります」
リアラ様に頷いてから考える。
アイザックと婚約しなければ、向こうから関わって来ようとしないと思っていたけれど、アイザックは諦めてない様だし、テレサもそうだわ。
もしかして、これは私だけの問題じゃなくて、私の家のほうにも問題があったりするのかしら。
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テレサのこともあり、この日の昼食は、ほとんど食事が喉を通らなかった。
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