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34 頼りになる味方
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それから約1週間後、リュカが何を言おうとしていたのか、私は知ることになった。
「リリー、紹介するわ。私の兄の婚約者であり、今回、私の護衛に付いて下さるフセラブル辺境伯の令嬢のリアラ様よ」
「お初にお目にかかります。リリー様。リアラ・フセラブルと申します」
カーテシーをしてくれたリアラ様は、学園の制服を着ていても違和感がなく、彼女が護衛であるだなんて見た目だけでは全くわからなかった。
護衛というから、一見、気の強そうな方かと思ったけれど、そういう訳でもなさそう。
黒色の長い髪を1つにまとめてシニヨンにしているリアラ様は、目が大きくて笑顔の似合う、可愛らしい顔立ちの方だった。
スレンダーな体型で、私よりもかなり体の線が細い。
「リリー・ミアシスと申します。お会い出来て光栄です」
カーテシーをしてから挨拶をすると、ティナ様が笑顔で口を開く。
「リリー、リアラ様はもうすでに学園を卒業されておられるのだけど、私たちの護衛をするには、制服姿のほうが違和感がないからということで制服を着てくれているの。本当は年上なのよ?」
「えっ!? そんな風には見えません!」
驚いてリアラ様を見て言うと、リアラ様は苦笑する。
「違和感がないのであれば良かったです。卒業してから制服を着るなんてって思う人もいるでしょうし、せめて、違和感なく着れていたら良いかなと思っていましたので」
「あの、フセラブル辺境伯令嬢、私は伯爵令嬢ですので敬語を使っていただかなくても結構です」
「ですが、今回、リリー様の護衛も私の仕事になりますので」
「そ、そんな! 身分が高いだけでなく、年下の私には敬語なんていりません!」
「そう言われましても」
困った様子でリアラ様がティナ様を見ると、視線を受けたティナ様は苦笑して私に言う。
「あなたは将来、隣国とはいえ王妃になるのよ? リアラ様の婚約者である私の兄は王子だけれど、王様にはならないんだから、あなたのほうが立場は上よね? ……でも、そうなると、私もあなたに敬語を使わなくてはいけなくなるわね」
「それとこれとは別なのではないでしょうか 今の段階では、お二人の身分のほうが上です」
「わかったわ。あの、リアラ様。リリーには普通に話をしてあげて下さい」
「本当に良いんですか?」
リアラ様が尋ねてきたので、大きく首を縦に振ってから頭を下げる。
「もちろんです。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
リアラ様も頭を下げてきたので、何度かお互いにペコペコと頭を下げあったあと、顔を見合わせて笑う。
良い人そうで良かったわ。
いくらリュカの紹介であっても、気の合わない人物だっているだろうからと心配していたのよね。
リアラ様はティナ様の兄であり、自分の婚約者であるルーザーから、ティナ様と私の身辺警護を頼まれたとのことだった。
「くれぐれも無茶はしない様にと言われたけど、護衛なんだから、多少の無茶は必要よね」
好戦的な性格なのか、リアラ様が両拳を握りしめて、なぜか瞳をキラキラさせる。
私よりも年上みたいだけど、外見だけじゃなくて、中身も年上の様には見えないわね。
そう思いつつ、頼りになる味方ができて心強かった。
*****
その日の昼休み。
ティナ様の場合は食事は毒味役の女性に食べてもらったあと、少し時間を空けてからでないと食事をすることができない。
だから今は別のテーブルに座られていて、私とリアラ様で食事をしていた時だった。
向かいに座っている、リアラ様が尋ねてくる。
「詳しくは聞いていないんだけど、とある女性に接したくないのよね?」
「そうなんです。よくわからないんですけれど、とある女性が私に何かと接触しようとしてくるんです」
私から接触しようとするならまだしも、テレサのほうから接触しようとしてくるなんておかしい。
リュカも言っていたように時間が巻き戻る前も、わざとテレサは私と廊下でぶつかったのかもしれないわ。
私とテレサは別クラスだった。
廊下ですれ違う際にぶつかり、それを機にテレサから話しかけてくる様になって親しくなった。
私は何年も前から、彼女に目をつけられていたのかもしれない。
アイザックが目的で近づいてきているようではない。
彼女たちは何を考えてるの?
「リリー様、顔色が悪いけれど大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
本当は大丈夫じゃない。
だけど、しっかりしなくちゃ。
何のためにリュカがリアラ様を私の護衛につけてくれたのかわからなくなってしまう。
俯けていた顔を上げて、リアラ様に謝る。
「心配をおかけして申し訳ございません」
「気にしないで。それにしてもよっぽど嫌なのね」
心配そうな表情で私を見たリアラ様だったけれど、すぐにハッとした顔になって、後ろを振り返った。
「どうかしたんですか?」
「視線を感じたから、何かなと思ったんだけど、リリー様たちが警戒している意味がわかったわ」
「……どういうことです?」
「彼女、こちらに殺気を帯びた視線を送ってきていたから」
先程までリアラ様が見ていた方向を見ると、そこには複数の女子生徒と一緒にいるテレサの姿があった。
「リリー、紹介するわ。私の兄の婚約者であり、今回、私の護衛に付いて下さるフセラブル辺境伯の令嬢のリアラ様よ」
「お初にお目にかかります。リリー様。リアラ・フセラブルと申します」
カーテシーをしてくれたリアラ様は、学園の制服を着ていても違和感がなく、彼女が護衛であるだなんて見た目だけでは全くわからなかった。
護衛というから、一見、気の強そうな方かと思ったけれど、そういう訳でもなさそう。
黒色の長い髪を1つにまとめてシニヨンにしているリアラ様は、目が大きくて笑顔の似合う、可愛らしい顔立ちの方だった。
スレンダーな体型で、私よりもかなり体の線が細い。
「リリー・ミアシスと申します。お会い出来て光栄です」
カーテシーをしてから挨拶をすると、ティナ様が笑顔で口を開く。
「リリー、リアラ様はもうすでに学園を卒業されておられるのだけど、私たちの護衛をするには、制服姿のほうが違和感がないからということで制服を着てくれているの。本当は年上なのよ?」
「えっ!? そんな風には見えません!」
驚いてリアラ様を見て言うと、リアラ様は苦笑する。
「違和感がないのであれば良かったです。卒業してから制服を着るなんてって思う人もいるでしょうし、せめて、違和感なく着れていたら良いかなと思っていましたので」
「あの、フセラブル辺境伯令嬢、私は伯爵令嬢ですので敬語を使っていただかなくても結構です」
「ですが、今回、リリー様の護衛も私の仕事になりますので」
「そ、そんな! 身分が高いだけでなく、年下の私には敬語なんていりません!」
「そう言われましても」
困った様子でリアラ様がティナ様を見ると、視線を受けたティナ様は苦笑して私に言う。
「あなたは将来、隣国とはいえ王妃になるのよ? リアラ様の婚約者である私の兄は王子だけれど、王様にはならないんだから、あなたのほうが立場は上よね? ……でも、そうなると、私もあなたに敬語を使わなくてはいけなくなるわね」
「それとこれとは別なのではないでしょうか 今の段階では、お二人の身分のほうが上です」
「わかったわ。あの、リアラ様。リリーには普通に話をしてあげて下さい」
「本当に良いんですか?」
リアラ様が尋ねてきたので、大きく首を縦に振ってから頭を下げる。
「もちろんです。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
リアラ様も頭を下げてきたので、何度かお互いにペコペコと頭を下げあったあと、顔を見合わせて笑う。
良い人そうで良かったわ。
いくらリュカの紹介であっても、気の合わない人物だっているだろうからと心配していたのよね。
リアラ様はティナ様の兄であり、自分の婚約者であるルーザーから、ティナ様と私の身辺警護を頼まれたとのことだった。
「くれぐれも無茶はしない様にと言われたけど、護衛なんだから、多少の無茶は必要よね」
好戦的な性格なのか、リアラ様が両拳を握りしめて、なぜか瞳をキラキラさせる。
私よりも年上みたいだけど、外見だけじゃなくて、中身も年上の様には見えないわね。
そう思いつつ、頼りになる味方ができて心強かった。
*****
その日の昼休み。
ティナ様の場合は食事は毒味役の女性に食べてもらったあと、少し時間を空けてからでないと食事をすることができない。
だから今は別のテーブルに座られていて、私とリアラ様で食事をしていた時だった。
向かいに座っている、リアラ様が尋ねてくる。
「詳しくは聞いていないんだけど、とある女性に接したくないのよね?」
「そうなんです。よくわからないんですけれど、とある女性が私に何かと接触しようとしてくるんです」
私から接触しようとするならまだしも、テレサのほうから接触しようとしてくるなんておかしい。
リュカも言っていたように時間が巻き戻る前も、わざとテレサは私と廊下でぶつかったのかもしれないわ。
私とテレサは別クラスだった。
廊下ですれ違う際にぶつかり、それを機にテレサから話しかけてくる様になって親しくなった。
私は何年も前から、彼女に目をつけられていたのかもしれない。
アイザックが目的で近づいてきているようではない。
彼女たちは何を考えてるの?
「リリー様、顔色が悪いけれど大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
本当は大丈夫じゃない。
だけど、しっかりしなくちゃ。
何のためにリュカがリアラ様を私の護衛につけてくれたのかわからなくなってしまう。
俯けていた顔を上げて、リアラ様に謝る。
「心配をおかけして申し訳ございません」
「気にしないで。それにしてもよっぽど嫌なのね」
心配そうな表情で私を見たリアラ様だったけれど、すぐにハッとした顔になって、後ろを振り返った。
「どうかしたんですか?」
「視線を感じたから、何かなと思ったんだけど、リリー様たちが警戒している意味がわかったわ」
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