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45 ティナとリュディガー③
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「思い出したくないお話をさせてしまって申し訳ございませんでした」
「気にしないで。だけど、どうしてそんな話を聞いてきたの?」
「少し気になることがありまして」
「気になること?」
ティナ様は明らかに理由を知りたがっていると感じた。
でも、それを伝えようとすると、ティナ様にとって、先程よりも思い出したくない話に触れなければならない。
そのことを思うと、私は話すことを躊躇してしまう。
「リリー、ちゃんと話をしてちょうだい。私に言えないことじゃなくて言いづらいことなのかしら」
「……はい。ティナ様が思い出したくない話をしないといけないと思うと」
「それってもしかして、私が暗殺されかかった時の話かしら」
ティナ様にはっきりと口に出され、私は小さく頷く。
「話をしてもよろしいのですか」
「……思い出すと怖いのは確かだけれど大丈夫よ。いつまでも怯えていられないわ」
ティナ様の言葉を聞いた私は、意を決して口を開く。
「すでに警察の方にも、お話をされていることだと思うのですが、改めて私にその時の話をしてもらうことは可能でしょうか」
「かまわないわ。その時のことはショックであまり覚えていないんだけど、それでも良いかしら?」
「もちろんです! あと、話すことによって、気分が悪くなったりするかもしれませんので、その時には無理をして話すのだけはやめていただきたいです」
「ありがとう。その時はお言葉に甘えさせてもらうわ」
頷いてから、ティナ様は彼女が襲われた日の時のことを教えてくれた。
その日は元々、リュカと会う予定だったらしい。
これについては、私もリュカから聞いているので知っている。
けれど、どういう理由でリュカと会うのか、用件はティナ様も知らなかった。
「知らない間に予定を入れられていたのよ」
「何者かに勝手に約束を取り付けられていたということですか?」
「ええ」
「では、お互いに約束を取り付けた覚えがないのに、約束してしまったことになっていたんですね」
「リュカ殿下も同じなら、そうみたいね。しかも、リュカ殿下が約束をキャンセルしたことを知らせてもらえなかったのよ。お父様は側近に知らせて、側近は私の侍女に知らせたと言うんだけど……」
ティナ様は右手を頬に当てて小首を傾げた。
ティナ様がしばらく部屋に引きこもっていたのは、侍女に裏切られた可能性があるからかもしれない。
近くにいた人が裏切っていたと知ったら余計にショックよね。
出てこれるようになったのは、裏切り者が誰だかわかって処分したからなんでしょう。
そういえば、リュカの場合はレイクウッドが黒幕と通じていたから、すんなりとスケジュールが決まったのでしょうけれど、ティナ様の場合は不審に思わなかったのかしら?
私が考えていると、ティナ様が口を開く。
「予定のことなんだけど、不審に思わなかったのは、元々は手紙が届いていたからなの」
手紙には相談したいことがあるから、近い内に会ってほしいと書かれていたんだそう。
だから、そのうち、正式に連絡があると思っていた時期に予定を入れられていたみたいだった。
「差出人はリュカ殿下の名前で王家の印も押してあったから、私も疑わなかったの。だけど、リリーに聞かれて思ったのだけど、リュディガー殿下がリュカ殿下の名前を使って手紙を書いてきた可能性もあるわよね。だって、私たちはリュカ殿下の筆跡を知っているわけではないし、例え、リュカ殿下の筆跡がわかったとしても、誰か代わりの人に書いてもらっていてもおかしくないはずだから、その人が書いたのかもしれないと思ってしまうかもしれないわ」
「……そうかもしれませんね」
重い表情で頷くと、ティナ様が震える声で私に尋ねてくる
「ねぇ、リリー。もしかして私を殺そうとしたのは、リュディガー殿下なの?」
「わかりません。失恋しただけで人を殺そうだなんて、普通は思うことではありませんから」
「そう、そうよね。ごめんなさい。あなたの婚約者のお兄様を悪く言う様な発言をしてしまって」
「気になさらないで下さい。実は私はまだ、リュディガー殿下にお会いしたことがないんです。だから、あまりピンときていなくて」
「え? そうなの?」
「はい。リュディガー殿下のお母様が私に会いたくなかったみたいで、リュディガー殿下にも会わせていただけませんでした」
「そうなのね」
ティナ様が少し心配げな表情で、私を見つめる。
「人には大人の世界があるのでしょうね。いつしか私たちも知らないといけないんでしょうけれど知りたくないわ」
「そうですね」
かといって、失恋したからといって誰かを殺そうとするのは間違ってるわ。
……って、まだ、リュディガー殿下のせいとは決まったわけじゃないのよね。
ソフィー様の可能性もある。
それから、ティナ様と話を続けたけれど、目新しい情報は出てこず、数時間後、私は城をあとにした。
「気にしないで。だけど、どうしてそんな話を聞いてきたの?」
「少し気になることがありまして」
「気になること?」
ティナ様は明らかに理由を知りたがっていると感じた。
でも、それを伝えようとすると、ティナ様にとって、先程よりも思い出したくない話に触れなければならない。
そのことを思うと、私は話すことを躊躇してしまう。
「リリー、ちゃんと話をしてちょうだい。私に言えないことじゃなくて言いづらいことなのかしら」
「……はい。ティナ様が思い出したくない話をしないといけないと思うと」
「それってもしかして、私が暗殺されかかった時の話かしら」
ティナ様にはっきりと口に出され、私は小さく頷く。
「話をしてもよろしいのですか」
「……思い出すと怖いのは確かだけれど大丈夫よ。いつまでも怯えていられないわ」
ティナ様の言葉を聞いた私は、意を決して口を開く。
「すでに警察の方にも、お話をされていることだと思うのですが、改めて私にその時の話をしてもらうことは可能でしょうか」
「かまわないわ。その時のことはショックであまり覚えていないんだけど、それでも良いかしら?」
「もちろんです! あと、話すことによって、気分が悪くなったりするかもしれませんので、その時には無理をして話すのだけはやめていただきたいです」
「ありがとう。その時はお言葉に甘えさせてもらうわ」
頷いてから、ティナ様は彼女が襲われた日の時のことを教えてくれた。
その日は元々、リュカと会う予定だったらしい。
これについては、私もリュカから聞いているので知っている。
けれど、どういう理由でリュカと会うのか、用件はティナ様も知らなかった。
「知らない間に予定を入れられていたのよ」
「何者かに勝手に約束を取り付けられていたということですか?」
「ええ」
「では、お互いに約束を取り付けた覚えがないのに、約束してしまったことになっていたんですね」
「リュカ殿下も同じなら、そうみたいね。しかも、リュカ殿下が約束をキャンセルしたことを知らせてもらえなかったのよ。お父様は側近に知らせて、側近は私の侍女に知らせたと言うんだけど……」
ティナ様は右手を頬に当てて小首を傾げた。
ティナ様がしばらく部屋に引きこもっていたのは、侍女に裏切られた可能性があるからかもしれない。
近くにいた人が裏切っていたと知ったら余計にショックよね。
出てこれるようになったのは、裏切り者が誰だかわかって処分したからなんでしょう。
そういえば、リュカの場合はレイクウッドが黒幕と通じていたから、すんなりとスケジュールが決まったのでしょうけれど、ティナ様の場合は不審に思わなかったのかしら?
私が考えていると、ティナ様が口を開く。
「予定のことなんだけど、不審に思わなかったのは、元々は手紙が届いていたからなの」
手紙には相談したいことがあるから、近い内に会ってほしいと書かれていたんだそう。
だから、そのうち、正式に連絡があると思っていた時期に予定を入れられていたみたいだった。
「差出人はリュカ殿下の名前で王家の印も押してあったから、私も疑わなかったの。だけど、リリーに聞かれて思ったのだけど、リュディガー殿下がリュカ殿下の名前を使って手紙を書いてきた可能性もあるわよね。だって、私たちはリュカ殿下の筆跡を知っているわけではないし、例え、リュカ殿下の筆跡がわかったとしても、誰か代わりの人に書いてもらっていてもおかしくないはずだから、その人が書いたのかもしれないと思ってしまうかもしれないわ」
「……そうかもしれませんね」
重い表情で頷くと、ティナ様が震える声で私に尋ねてくる
「ねぇ、リリー。もしかして私を殺そうとしたのは、リュディガー殿下なの?」
「わかりません。失恋しただけで人を殺そうだなんて、普通は思うことではありませんから」
「そう、そうよね。ごめんなさい。あなたの婚約者のお兄様を悪く言う様な発言をしてしまって」
「気になさらないで下さい。実は私はまだ、リュディガー殿下にお会いしたことがないんです。だから、あまりピンときていなくて」
「え? そうなの?」
「はい。リュディガー殿下のお母様が私に会いたくなかったみたいで、リュディガー殿下にも会わせていただけませんでした」
「そうなのね」
ティナ様が少し心配げな表情で、私を見つめる。
「人には大人の世界があるのでしょうね。いつしか私たちも知らないといけないんでしょうけれど知りたくないわ」
「そうですね」
かといって、失恋したからといって誰かを殺そうとするのは間違ってるわ。
……って、まだ、リュディガー殿下のせいとは決まったわけじゃないのよね。
ソフィー様の可能性もある。
それから、ティナ様と話を続けたけれど、目新しい情報は出てこず、数時間後、私は城をあとにした。
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