あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜

風見ゆうみ

文字の大きさ
47 / 51

46 状況を整理する午後①

しおりを挟む

 ティナ様と話をした、次の休みの午後、リュカが私の家にやって来た。
 仕事は山積みみたいだけれど、内容が内容だけに今回もリュカの仕事を国王陛下が代わりにしてくださることになったらしい。

 他の人に話を聞かれたくなかったので、私の部屋で、ソファに並んで座り、メイドがお茶を淹れて出ていってから、リュカが口を開く。

「兄さんが犯人かもしれない」

 その話をどうやって話そうかと思っていただけに、リュカの口からその言葉を聞いた時には驚いた気持ちもあったけれど、少しだけホッとした気持ちにもなった。

「どうしてそう思うの?」

 尋ねると、リュカは部下や諜報部隊を使って調べたことを私に教えてくれた。

 大人しい性格のリュディガー殿下は、とあるパーティーでティナ様を見て一目惚れをした。
 それからは、今まで好んで出なかった国の行事に、ティナ様が来るとわかれば出席していた。
 そして、それに気が付いたリュディガー殿下の母であるソフィー様がリュディガー殿下の恋を応援しようと考えた様だった。

 人を雇ってティナ様の好みや、よく行く店などを調べ上げ、その店にはティナ様から予約が入れば必ず連絡する様にと伝えていた。
 店側も隣国といえど相手が王族関係者や貴族だったため、特に疑わない店もあれば、プライバシーに関わるとして断った店もあった。
 でも、断った店には火をつける、殺すなどと脅し、連絡せざるを得ない状況にしていた。
 もし、このことをティナ様や関係者にバラしても、家族を殺すと脅されたらしい。

「その王族関係者と貴族というのは、誰だかわかったの?」
「王族関係者っていうのは兄さんの側近。それから、貴族っていうのは」
「トロット公爵の関係者ね」
「ああ。もしかすると、トロット公爵令嬢がティナ様の友人のふりでもして、店側に近付いた可能性もある」
「でも、どうしてトロット公爵家はリュディガー殿下の恋を応援しようとしているソフィー様に手を貸そうとされたのかしら」

 尋ねると、リュカは眉根を寄せて答える。

「その話なんだが、ここから物騒な話になるんだ。リリーはそういう話は大丈夫か? トラウマになってないといいんだが」
「トラウマに関しては大丈夫よ。それに物騒な話は好きとまではいかないけれど、怖くて聞けないとまではいかないと思うから話してちょうだい」

 私が頷いたのを確認してから、リュカは口を開く。

「実はトロット公爵家は他国ではあるが、アルカ公爵家に弱みを握られていたみたいだ」
「弱みを?」

 聞き返したあと、両手を口に当てて話す。

「だから、ノエル様と親しいテレサを味方にするためにタイディ家に近づいたのね」
「たぶんな。タイディ子爵はお金が好きなことで有名らしい。離婚の理由の一つでもある」
「ちょっと待って。でも、ノエル様を殺して何になるの? ノエル様に何かあったら、アルカ公爵家に恨まれることはあっても立場が逆転することはないでしょう」
 
 ルカが答えてくれる前に、頭の中で整理する。

 ティナ様を殺そうとしたのは、リュディガー殿下、もしくはソフィ様が雇った誰かの可能性が高い。
 そして、ノエル様を殺そうとしたのは、トロット公爵家の希望で動いたテレサだとする。
 時間が巻き戻る前はティナ様は殺されて、リュカが捕まった。
 そして、ノエル様は毒殺未遂に終わったけれど、冤罪で私は捕まった。
 テレサが手を貸した理由は、私を消すためで、アイザックはテレサと一緒になるためだった。
 
 あの時、ノエル様が毒殺未遂だったことに意味はあるのかしら。

「この世界では起きていないことだから、仮説にしかならないが、トロット公爵家はアルカ公爵令嬢にわざと致死量に至らない程度の毒を飲ませて、毒が何かわからず対処が出来ないアルカ公爵家に娘を助けたければ、自分たちの秘密を何があっても公にするなと言おうとしていたのだとしたら?」
「アルカ公爵は娘の命を優先するでしょうね」

 普通の人ならそうするわ。
 娘の命のほうが大事だもの。

「その時の弱みは物的証拠があるものだったとしたら、その物的証拠を要求しただろうな」
「じゃあ、時間を巻き戻したあとの、今に関しては、どういう感じになるのかしら」

 リュカが来なかったことにより、ティナ様の暗殺は阻止できた。
 そして、暗殺未遂によりティナ様の身辺警護は厳重になり、簡単には近付けない状態になった。
 だから、暗殺者が近付けない状況になっていると考えられる。

「時間が戻る前と後があるから、余計にややこしくなってきたな。紙とペンはあるか? 紙に書いて整理したい」
「もちろんよ」

 リュカの言葉に頷くと、すぐに立ち上がる。
 そして、書物机の引き出しから紙とペンと取ると、リュカに手渡した。

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。 しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。 自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。 夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか? 迷いながらもユートリーは動き出す。 サスペンス要素ありの作品です。 設定は緩いです。 6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。

【完結】マザコンな婚約者はいりません

たなまき
恋愛
伯爵令嬢シェリーは、婚約者である侯爵子息デューイと、その母親である侯爵夫人に長年虐げられてきた。 貴族学校に通うシェリーは、昼時の食堂でデューイに婚約破棄を告げられる。 その内容は、シェリーは自分の婚約者にふさわしくない、あらたな婚約者に子爵令嬢ヴィオラをむかえるというものだった。 デューイはヴィオラこそが次期侯爵夫人にふさわしいと言うが、その発言にシェリーは疑問を覚える。 デューイは侯爵家の跡継ぎではない。シェリーの家へ婿入りするための婚約だったはずだ。 だが、話を聞かないデューイにその発言の真意を確認することはできなかった。 婚約破棄によって、シェリーは人生に希望を抱きはじめる。 周囲の人々との関係にも変化があらわれる。 他サイトでも掲載しています。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる

迷い人
恋愛
 お爺様は何時も私に言っていた。 「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」  そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。  祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。  シラキス公爵家の三男カール。  外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。  シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。  そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。  でも、私に愛を語る彼は私を知らない。  でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。  だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。  なのに気が付けば、婚約を??  婚約者なのだからと屋敷に入り込み。  婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。  そして……私を脅した。  私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!

【完結】優雅に踊ってくださいまし

きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。 この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。 完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。 が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。 -ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。 #よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。 #鬱展開が無いため、過激さはありません。 #ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。

処理中です...