【完結】どうぞ他をあたってください

風見ゆうみ

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27  夫の嫉妬 ①

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 ノックをする手を止めて、扉の前に立っている兵士に小声で尋ねる。

「喧嘩をしているのかしら」
「そうみたいです。ミアリナ様がいらっしゃる少し前から、言い争う声が聞こえてきています。声をおかけしたら、何でもないから静かにしていろと言われました」
「静かに……ね」

 私は頷き、聞こえてくる声に集中する。

「お兄様は本当に私のことが好きなの!?」
「好きだよ! だから、今日のパーティーだって盛大にしたんだ!」
「じゃあ、ミアリナ様からブローチをもらってきてよ! 私はあのブローチを付けてみんなの前に出たいの!」
「落ち着きなさい、フララ。あのブローチは実際はあなたのものなのに、ミアリナさんに奪われたことにすれば良いのよ」

 ウララ様の声も聞こえてきたので、控え室には三人揃っているらしい。

 それにしても最低な考えがさらりと思いつくものね。

「お義母さん、それは無理です。ミアリナが
持っているのをディーラス公爵令嬢や、ジゼル公爵令息たちに見られているんです」
「どうしてそんなことになるの!」

 ウララ様は叫んだあと、大きなため息を吐いた。

「お兄様、なんとかしてよ。あのブローチがどうしてもほしいの。私にくれるなら、お兄様にこれからの人生を捧げてもいいわ」

 ……フララさんはどうしてそこまでブローチにこだわるの? 価値を知っているとは思えないし、私に嫌がらせしたいだけ?

「……わかったよ。だけど、今日は無理だ。ミアリナがあのブローチを付けていなかったら、ジゼル公爵令息たちが不信に思うだろう」
「仕方がないわね。だけど、ラフリード様のことなら、私に任せて。絶対に彼を虜にさせてみせるから」
「僕に人生を捧げるんじゃないのか?」
「ブローチを持ってきてくれてから考えるわ」

 パーティーの段取りを改めて伝えておこうと思ったから来たけれど、こんなことを考えている人たちのために頑張るのはやめよう。もう少し待ってから、時間だと言って彼らを呼ぶことにした。
 兵士には私が話を聞いていたことを言わないように約束させ、控え室の近くにあるメイク室の中に入った。

 パーティーが終わってからすぐは、一人でいないほうが良さそうね。

 これからのことを考えていると、開始時間の数分前になった。私は何事もなかったような顔をして、彼らを迎えに行った。

 箱が手から離れないと、トータムが文句を言ってきたが、天罰なのだろうと答えて無視した。

 結局、トータムは箱を持つようにしながら、パーティーに参加していて滑稽だ。

 パーティーが始まってからは、フララさんは多くの貴族に愛想を振りまいていた。中にはトータムのように彼女に一目惚れをする人もいて、それがわかるたびに、フララさんは満面の笑みを浮かべ、トータムは苦虫を噛み潰したような顔をしているからわかりやすい。

「節操がないというのは彼女のような人のことを言うのでしょうね」

 呆れた顔のファルナ様に苦笑する。

「男性に対する態度には一貫性はありますけど」
「まあ、ここにいる男性のほとんどに婚約者がいませんし、婿探しをするのは悪いことではありませんけどね」

 トータムは既婚者、アリム様はファルナ様の婚約者だが、他の招待客は婚約者がいない。もしくは妻に先立たれた人だけだ。

「あなたは本当にいいのか?」

 ラフリード様に尋ねられたが、何のことかわからないので聞き返す。

「どういう意味でしょうか」
「夫のことだ」
「……ええ。こんなことを言ってはなんなのですが、彼が私ではなく、フララさんの味方をした時に、心は急に冷めてしまったんです」

 ショックが大きすぎて、自分の心を守るために冷めるという結果になったのかもしれない。そうでなければ、私は悲しみに暮れてどうなっていたかわからない。

 自分ばかりを責めなくて良かった。

 胸の前で手を握りしめて、大きく息を吐いた。

「そうか。嫌なことを聞いて悪かった」

 ラフリード様が眉尻を下げて謝ってきた。

「気になさらないでください」

 微笑んだ時、怒りの形相でトータムが近寄ってきた。

「ミアリナ! フララのパーティーで堂々と浮気か?」

 ……何を言ってるのよ、この人は。

 睨みつけてきたトータムに呆れるしかなかった。


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