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28 夫の嫉妬 ②
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呆気にとられていた私たちだったが、我に返ったラフリード様が尋ねる。
「浮気とはどういうことだ?」
「先日からラフリード様は妻と仲が良いようですが、どのようなご関係なのでしょうか」
敵意のこもった眼差しに対し、ラフリード様は動揺した様子はないが、眉根を寄せて私を見つめた。
「俺とビレディ侯爵夫人の仲が良いように見えるらしいが、誤解されるような仲ではないよな」
「もちろんでございます。仲良くしていただいていると言いますか、諸事情で浮気夫のことで相談に乗ってもらっているという仲という関係性です」
ラフリード様は私の言葉に頷くと、トータムに尋ねる。
「ビレディ侯爵、あなたは次期公爵の俺が人の妻と浮気をするような人間だと言いたいのか?」
「そ……、そういう意味ではっ……!」
「なら、どういう意味だ?」
「その……、そうだ。ミアリナがあなたを誘惑しようとしているのではないかと思ったんです!」
トータムはそう叫ぶと、私の腕を掴む。
「男漁りをするのはやめるんだ! 君には俺がいるだろう! 恥ずかしい真似をするな!」
「ふざけないで。私がいつ男漁りをしたって言うのよ!」
「ラフリード様と話をしていたじゃないか!」
トータムが自信満々な口調で言うと、ラフリード様はため息を吐く。
「話しかけたのは俺だ。彼女からじゃない。あなたは自分の妻が他の男に話しかけられただけで自分の妻を男好きだと扱うのか?」
「そ、そういうわけでは……っ」
「大体、二人きりで話しているわけではありませんわ。私たちもいますわよ。あなたには私たちが見えないんですの?」
ラフリード様とファルナ様に責められたトータムは、ファルナ様の隣にいるアリム様に助けを求める。
「アリム、君は僕のことを信じてくれるだろう?」
「信じる? 何を?」
アリム様は可愛らしい顔を歪めて聞き返した。
「ミアリナは君の兄をたぶらかそうとしているんだ!」
「そうは思えないけど」
「何を言ってるんだよ! 僕たちは親友だろう? 僕が嘘をつく人間じゃないって証言してほしい」
「君は僕にも嘘をついただろ。そんなことを証言できるわけがない」
アリム様は声を低くして続ける。
「僕は君のことを友達だと思ってた。でも、君が僕に嘘をついて妹と浮気をした時点で、友達から友達だったに変わったんだよ」
「な、な、なんで……」
泣きそうな顔になったトータムの所へ、やって来た人物がいた。
「お兄様! なんのお話をしているの?」
胸元が開いたピンク色のドレスを着たフララさんは、この場にはふさわしくない満面の笑みを浮かべて、トータムの腕に自分の腕を絡めながら尋ねた。
飛んで火に入る夏の虫と言うのは、こういう場合を言うのかしらね。
「浮気とはどういうことだ?」
「先日からラフリード様は妻と仲が良いようですが、どのようなご関係なのでしょうか」
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「ふざけないで。私がいつ男漁りをしたって言うのよ!」
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「そ、そういうわけでは……っ」
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胸元が開いたピンク色のドレスを着たフララさんは、この場にはふさわしくない満面の笑みを浮かべて、トータムの腕に自分の腕を絡めながら尋ねた。
飛んで火に入る夏の虫と言うのは、こういう場合を言うのかしらね。
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