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29 夫の嫉妬 ③
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「フララ、君は向こうに行っていろ!」
「嫌よ。招待客にご挨拶しなくっちゃ」
焦るトータムにそう言うと、フララさんはカーテシーをする。
「本日は私のために足を運んでいただきありがとうございます」
「この度は社交界デビュー、おめでとうございます」
ファルナ様は微笑むと、持っていた扇で口元を隠して続ける。
「良い婿探しの場になりそうですわね」
「ありがとうございます! 私ったら、驚くくらいにモテてしまって……」
ファルナ様の嫌味には気がつくことなく、フララさんはくすりと笑って私に目を向ける。
「ミアリナ様のデビュタントはどうだったのかしら」
「人のデビュタントなんて関係ないだろう」
ラフリード様が割って入ると、上目遣いで彼を見つめる。
「こんなに素敵なラフリード様に婚約者がいないなんて驚きですわ。きっと、何か理由があるのでしょう? もしかして、私のような女性が現れるのを待っていたから……とか?」
「それはない」
きっぱりと否定されたフララさんは一瞬、眉間にシワを寄せたが、すぐに笑顔を作る。
「ラフリード様ったら、恥ずかしがっておられるのですね」
「そんなわけがあるか」
ラフリード様は嫌そうな顔になって言った。私はこめかみを押さえて、フララさんに話しかける。
「フララさん、恥をかきたくないなら、そのくらいでやめておいたほうが良いわよ」
「どうして私が恥をかくんです?」
不思議そうにしているフララさんに答える前に、ラフリード様に一応確認しておく。
「ラフリード様はフララさんに興味はありますか?」
「ない。持てと言われてもお断りする」
苦虫を噛み潰したような顔をするので笑いそうになったが、なんとか堪える。そして、フララさんに顔を向けると、彼女は馬鹿にされたと感じたのか顔を真っ赤にしていた。
「ラフリード様! その発言はレディに失礼ではないですか!?」
「先に失礼な発言をしてきたから、素直に答えただけだ」
「フララさん、ラフリード様は私の質問に答えただけであって、あなたに直接伝えたわけじゃないわ。聞こえてしまうくらいの距離で聞いてしまってごめんなさいね」
「何よ、それ! わざとでしょう!?」
自分でも性格が悪いなと思う。でも、彼女に好かれたいと思わないし、自分を嫌っている相手なんだから、これくらい言ってもいいでしょう。
大体、彼女は私の夫を奪ったんだから!
もちろん、悪いのは彼女だけじゃない。トータムのことも許すつもりはない。
私に落ち度があったならまだしも、きっかけはただの一目惚れ。しかも、彼女との仲をカムフラージュするために私を妻として縛り付けておこうなんて許せない。
「配慮は足りなかったと思うわ。だけど、あなたには他にたくさんの婿候補がいるでしょう? ラフリード様のことは気にしなくても良いじゃないの」
「それとこれとは関係ありません!」
フララさんは私とラフリード様を指差して叫ぶ。
「わかったわ! ミアリナさんはラフリード様と陰で付き合っているのね! だから私に奪われないように必死なんだわ!」
なんと言えばいいのか。
偏見かもしれないけど、フララさんって頭痛が痛いとか言うタイプかしら。咄嗟に口から出たならまだしも、彼女の場合は本気で言ってもおかしくないくらいのレベルね。
「……本当にこりないな」
ラフリード様が大きなため息を吐いた時、黙っていたトータムが私の腕を掴んだ。
「やっぱり浮気していたんだな!」
「あなた、本当にいい加減にしてくれない!?」
手を振り払おうとしたけれど、力では勝てない。それでも、抵抗しようとした時、ラフリード様が私の腕を掴んでいるトータムの手首を掴んだ。
「格闘する場じゃないんだぞ。乱暴な真似はやめろ」
「放っておいてください! これは私たちの問題です!」
「放して! 私は浮気なんてしてない! 何度言ったらわかるのよ!」
ラフリード様のおかげでトータムの手の力が弱まったので、振り払って叫ぶと、トータムは泣きそうな顔になった。
「信用できない! 僕をだましているんだろう!?」
「ふざけたことを言わないで!」
「ビレディ侯爵、さっき、あなたは自分たちの問題だと言ったが、俺のことを夫人の浮気相手だと思っているんだろう? なら、俺も関係なくはない。大体、俺は浮気相手ではないと説明して納得したんじゃなかったのか? まだ喧嘩をしたいと言うのなら、俺が買うぞ」
ラフリード様はスイッチを入れるためなのか、眼鏡をかけて笑顔で言った。
「嫌よ。招待客にご挨拶しなくっちゃ」
焦るトータムにそう言うと、フララさんはカーテシーをする。
「本日は私のために足を運んでいただきありがとうございます」
「この度は社交界デビュー、おめでとうございます」
ファルナ様は微笑むと、持っていた扇で口元を隠して続ける。
「良い婿探しの場になりそうですわね」
「ありがとうございます! 私ったら、驚くくらいにモテてしまって……」
ファルナ様の嫌味には気がつくことなく、フララさんはくすりと笑って私に目を向ける。
「ミアリナ様のデビュタントはどうだったのかしら」
「人のデビュタントなんて関係ないだろう」
ラフリード様が割って入ると、上目遣いで彼を見つめる。
「こんなに素敵なラフリード様に婚約者がいないなんて驚きですわ。きっと、何か理由があるのでしょう? もしかして、私のような女性が現れるのを待っていたから……とか?」
「それはない」
きっぱりと否定されたフララさんは一瞬、眉間にシワを寄せたが、すぐに笑顔を作る。
「ラフリード様ったら、恥ずかしがっておられるのですね」
「そんなわけがあるか」
ラフリード様は嫌そうな顔になって言った。私はこめかみを押さえて、フララさんに話しかける。
「フララさん、恥をかきたくないなら、そのくらいでやめておいたほうが良いわよ」
「どうして私が恥をかくんです?」
不思議そうにしているフララさんに答える前に、ラフリード様に一応確認しておく。
「ラフリード様はフララさんに興味はありますか?」
「ない。持てと言われてもお断りする」
苦虫を噛み潰したような顔をするので笑いそうになったが、なんとか堪える。そして、フララさんに顔を向けると、彼女は馬鹿にされたと感じたのか顔を真っ赤にしていた。
「ラフリード様! その発言はレディに失礼ではないですか!?」
「先に失礼な発言をしてきたから、素直に答えただけだ」
「フララさん、ラフリード様は私の質問に答えただけであって、あなたに直接伝えたわけじゃないわ。聞こえてしまうくらいの距離で聞いてしまってごめんなさいね」
「何よ、それ! わざとでしょう!?」
自分でも性格が悪いなと思う。でも、彼女に好かれたいと思わないし、自分を嫌っている相手なんだから、これくらい言ってもいいでしょう。
大体、彼女は私の夫を奪ったんだから!
もちろん、悪いのは彼女だけじゃない。トータムのことも許すつもりはない。
私に落ち度があったならまだしも、きっかけはただの一目惚れ。しかも、彼女との仲をカムフラージュするために私を妻として縛り付けておこうなんて許せない。
「配慮は足りなかったと思うわ。だけど、あなたには他にたくさんの婿候補がいるでしょう? ラフリード様のことは気にしなくても良いじゃないの」
「それとこれとは関係ありません!」
フララさんは私とラフリード様を指差して叫ぶ。
「わかったわ! ミアリナさんはラフリード様と陰で付き合っているのね! だから私に奪われないように必死なんだわ!」
なんと言えばいいのか。
偏見かもしれないけど、フララさんって頭痛が痛いとか言うタイプかしら。咄嗟に口から出たならまだしも、彼女の場合は本気で言ってもおかしくないくらいのレベルね。
「……本当にこりないな」
ラフリード様が大きなため息を吐いた時、黙っていたトータムが私の腕を掴んだ。
「やっぱり浮気していたんだな!」
「あなた、本当にいい加減にしてくれない!?」
手を振り払おうとしたけれど、力では勝てない。それでも、抵抗しようとした時、ラフリード様が私の腕を掴んでいるトータムの手首を掴んだ。
「格闘する場じゃないんだぞ。乱暴な真似はやめろ」
「放っておいてください! これは私たちの問題です!」
「放して! 私は浮気なんてしてない! 何度言ったらわかるのよ!」
ラフリード様のおかげでトータムの手の力が弱まったので、振り払って叫ぶと、トータムは泣きそうな顔になった。
「信用できない! 僕をだましているんだろう!?」
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ラフリード様はスイッチを入れるためなのか、眼鏡をかけて笑顔で言った。
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