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32 夫にさよならを ③
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トータムがいなくなってから、ウララ様はなんとか場の雰囲気を盛り上げようと試みたようだが、一人が帰るとまた一人と、次々と帰っていく結果になったそうだ。
そのせいでフララさんとウララ様には責められたが、デビュタントを台無しにしてしまったことについては申し訳ないと思ったので謝った。改めてパーティーをすれば良いと言うと満足したらしく、大人しく引き下がっていった。
トータムが出ていってしまったことはまったく気にしていないようなので、フララさんにとってのトータムはただの金蔓なのだとわかった。
日付が変わっても、トータムは帰って来なかった。この日に出ていく段取りはしていたので、今さら計画変更は難しい。
トータムには置手紙を残し、荷物を持って部屋を出る。
扉の前に立っていた兵士が驚いた顔をしたので「途中で気が変わるかもしれないけれど、トータムを探しに行こうかと思って」と言うと、何も言わずに見送ってくれた。
普通は探しに行くのに荷物なんて持っていかないけれど、彼らは私が荷物を持っているとは思わなかった。出ていくなんて思ってもみなかったと答えればいい。それでクビになったとしても、すぐには困らないお金も渡しておいたし、あとのことは自分で何とかしてもらいましょう。
彼らも私がジゼル公爵家の人たちと仲が良いと知るまでは、私に冷たい態度を取っていたんだから。
外に出て空を見上げる。月は雲に覆われて全く見えず、目が暗闇に慣れていない今は、庭にある外灯に照らされた場所以外は真っ暗だ。夜はやはり冷える。
そんなことを思いながら、ランタンの明かりを頼りに移動し、門兵にも先ほどと同じように理由を伝えようとすると、馬車が目の前に停まった。手配した馬車かと思って近づくと、中からトータムが降りてきた。
小箱が指に付いていないということは、無理に引きはがしたみたいね。その証拠に指に包帯を巻いているもの。
「こんな時間にどこへ行くんだよ?」
「手紙を置いてきたけれど、まあいいわ」
よく見ると、もう少し離れた場所に馬車が停まっていて、近くに停まっている馬車にビレディ侯爵家の家紋が入っているのが、御者が持っているランタンの明かりでわかった。
これで兵士たちの心配をしなくて済むわ。門兵にお金を渡す前で良かった。
家紋の入った馬車が門の向こうに消えていったことを確認してから口を開く。
「話し合おうと言ったのに出ていったのはあなたよ。いつまでもあなたの許可を待ってはいられない。あなたとは今日で離婚します!」
「だから離婚しないって言っているだろう!」
「トータム、あなたが私と離婚しないのは、フララさんがあなたの妹だからなんでしょう?」
「べ、別に理由はそれだけじゃ……」
「でも、一番の理由であることに変わりはない」
トータムは何も言わずに、視線を逸らして俯いた。
「良いことを教えてあげるわ。あなたのお父様とフララさんは養子縁組をしていないの。だから、あなたとフララさんは結婚できる」
「……え?」
顔を上げて呆けた顔になったトータムに微笑む。
「さようなら、ビレディ侯爵。今までありがとうございました。フララさんとお幸せに。あ、離婚の発表は大々的にお願いしますね」
一礼したあと、手配した馬車に向かって歩き出す。
「ま、待つんだ! ミアリナ! 君が一人で生きていけるわけがないだろう!? 絶対に後悔するぞ!」
「ご心配いただきありがとうございます。これから大変だとは思います。でも、今、行動を起こさないほうが後悔すると思いますので」
笑顔で手を振ると、外灯に照らされたトータムは、凍りついしまったかのように身動きしない。私はそんな彼に背を向けて、待たせていた馬車に乗り込んだ。
ウララ様たちは私が出ていったことを知ったら喜ぶでしょうね。でも、私が出て行ったからこそできることもある。
トータムも束の間の幸せを存分に味わえばいい。
「ミアリナ! 考え直してくれ!」
トータムの声が聞こえてきたような気がした。
うん。きっと気のせいね。
私は御者に馬車を走らせるように頼んだのだった。
そのせいでフララさんとウララ様には責められたが、デビュタントを台無しにしてしまったことについては申し訳ないと思ったので謝った。改めてパーティーをすれば良いと言うと満足したらしく、大人しく引き下がっていった。
トータムが出ていってしまったことはまったく気にしていないようなので、フララさんにとってのトータムはただの金蔓なのだとわかった。
日付が変わっても、トータムは帰って来なかった。この日に出ていく段取りはしていたので、今さら計画変更は難しい。
トータムには置手紙を残し、荷物を持って部屋を出る。
扉の前に立っていた兵士が驚いた顔をしたので「途中で気が変わるかもしれないけれど、トータムを探しに行こうかと思って」と言うと、何も言わずに見送ってくれた。
普通は探しに行くのに荷物なんて持っていかないけれど、彼らは私が荷物を持っているとは思わなかった。出ていくなんて思ってもみなかったと答えればいい。それでクビになったとしても、すぐには困らないお金も渡しておいたし、あとのことは自分で何とかしてもらいましょう。
彼らも私がジゼル公爵家の人たちと仲が良いと知るまでは、私に冷たい態度を取っていたんだから。
外に出て空を見上げる。月は雲に覆われて全く見えず、目が暗闇に慣れていない今は、庭にある外灯に照らされた場所以外は真っ暗だ。夜はやはり冷える。
そんなことを思いながら、ランタンの明かりを頼りに移動し、門兵にも先ほどと同じように理由を伝えようとすると、馬車が目の前に停まった。手配した馬車かと思って近づくと、中からトータムが降りてきた。
小箱が指に付いていないということは、無理に引きはがしたみたいね。その証拠に指に包帯を巻いているもの。
「こんな時間にどこへ行くんだよ?」
「手紙を置いてきたけれど、まあいいわ」
よく見ると、もう少し離れた場所に馬車が停まっていて、近くに停まっている馬車にビレディ侯爵家の家紋が入っているのが、御者が持っているランタンの明かりでわかった。
これで兵士たちの心配をしなくて済むわ。門兵にお金を渡す前で良かった。
家紋の入った馬車が門の向こうに消えていったことを確認してから口を開く。
「話し合おうと言ったのに出ていったのはあなたよ。いつまでもあなたの許可を待ってはいられない。あなたとは今日で離婚します!」
「だから離婚しないって言っているだろう!」
「トータム、あなたが私と離婚しないのは、フララさんがあなたの妹だからなんでしょう?」
「べ、別に理由はそれだけじゃ……」
「でも、一番の理由であることに変わりはない」
トータムは何も言わずに、視線を逸らして俯いた。
「良いことを教えてあげるわ。あなたのお父様とフララさんは養子縁組をしていないの。だから、あなたとフララさんは結婚できる」
「……え?」
顔を上げて呆けた顔になったトータムに微笑む。
「さようなら、ビレディ侯爵。今までありがとうございました。フララさんとお幸せに。あ、離婚の発表は大々的にお願いしますね」
一礼したあと、手配した馬車に向かって歩き出す。
「ま、待つんだ! ミアリナ! 君が一人で生きていけるわけがないだろう!? 絶対に後悔するぞ!」
「ご心配いただきありがとうございます。これから大変だとは思います。でも、今、行動を起こさないほうが後悔すると思いますので」
笑顔で手を振ると、外灯に照らされたトータムは、凍りついしまったかのように身動きしない。私はそんな彼に背を向けて、待たせていた馬車に乗り込んだ。
ウララ様たちは私が出ていったことを知ったら喜ぶでしょうね。でも、私が出て行ったからこそできることもある。
トータムも束の間の幸せを存分に味わえばいい。
「ミアリナ! 考え直してくれ!」
トータムの声が聞こえてきたような気がした。
うん。きっと気のせいね。
私は御者に馬車を走らせるように頼んだのだった。
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