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35 新しい生活と夫の後悔 ③
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働き始めてすぐに長期休みを取るのはどうかと考えたけれど、話を聞いたディーラス公爵から孤児院に連絡があった。私が休みを取って困るようなら、臨時で公爵家のメイドを貸してくれるとのことだった。
行く行かないは自由だと言われている。でも、王妃陛下からの申し出だし、孤児院の人たちも休む理由を知らないのに、休みを取っても良いと言ってくれた。
どうして王妃陛下がトータムを呼びつけたのかがわからない。その理由を知りたいこともあって、私は話を聞きに行くことにした。
王城に足を踏み入れたことのない私は、当日、ラフリード様たちと一緒に王城に向かうことになった。王妃陛下がラフリード様も来るようにと命令されたそうだが、二人きりだとトータムに知られた時に、また面倒くさいことを言い出しそうだ。
そう考えたラフリード様がそのことを王妃陛下に伝えると、ファルナ様の同席も許された。
トータムと王妃陛下の話を私たちが聞く必要があるのか。それも謎だわ。その疑問を王妃陛下への返事に書くと、トータムと話をする当日、彼よりも前に謁見させてもらえることになった。
その際、ラフリード様も同席するようにとのことだった。ラフリード様も自分が呼ばれた理由がわからず困惑している様子だった。
当日、案内された応接室の豪奢な椅子に座っている王妃陛下を見た時、やはり、王族になる人はオーラが違うのだなと感じた。
結婚パレードの時、遠目に一度だけ見たことがある王妃陛下は、ストレートの黒髪を背中に流した、芯の強そうな美しい女性だ。
私とラフリード様が挨拶をすると、王妃陛下は口を開く。
「よく来てくれたな。そこの椅子にかけて楽にしてくれ」
私とラフリード様が近くのソファに腰を下ろすと、王妃陛下は微笑する。
「ラフリードはまだしも、ミアリナは驚いただろう?」
「王妃陛下にお会いできて光栄でございます」
素直に驚きました、と答えて良いのかわからず、当たり障りのない答えを返すと、王妃陛下は笑う。
「緊張しなくても良いと言っても無駄だよな。緊張で疲れてしまわないうちに私がトータムをなぜ呼びつけたのか理由を話そう」
王妃陛下は赤色の瞳を私に向けたあと、すぐにラフリード様に目を移す。
「ラフリード、お前は理由がわかっているのだろう?」
「……考えられるとしたら、先代のビレディ侯爵の再婚相手と娘の件……でしょうか」
ウララ様とフララさん?
どうして王妃陛下が、その二人のことでトータムを呼び出すの?
驚いてラフリード様を見ると、彼は苦笑する。
「あなたも娘の評判が良くないことは知っているんだろう?」
「……はい。お金が好きで、学生時代は貴族のご令息に声をかけていたという話は聞きました」
「母親もそうなんだ」
「そうだったんですね。薬を入手できたのも、その関係ということですか?」
私の問いかけに、ラフリード様は無言で頷く。
ウララ様の悪事についてはわかってきたけれど、どうして、その話にトータムが関係あるの?
少しだけ考えて気がついた。
トータムのお父様がウララ様に殺されたと仮定した場合、どうして、ウララ様がそんなことをしたかというと、お金のためだ。
「……まさか」
「気がついたか? 私はそれを阻止してやろうと思う。依怙贔屓だと言われるかもしれないが、私も人間だ。友人の息子の命は助けたい。だから、忠告してやろうと思う。そして、私はラフリードの母の友人でもある」
ジゼル公爵夫人の話がなぜここで出てきたのか。
私とラフリード様が顔を見合わせると、王妃陛下は言う。
「ジゼル公爵夫人はどうしてもラフリードを結婚させたいらしい。しかも、ラフリードに相手にされなくても傷つかない女性とだ」
「傷つけるようなことはしません」
ラフリード様が眉根を寄せて言うと、王妃陛下は首を横に振る。
「そうだな。お前のことを知っている人間はそう思うだろう。だが、それがわかる以前にお前は多くの女性から敬遠されて、相手にしてもらえないじゃないか。それとも、フララとかいう娘の婿になりたいか」
「いいえ」
「だろう?」
「どうして私なのでしょうか」
ジゼル公爵夫人も理由を書いてくれていたけれど、私である必要はないはずだ。
「先代のビレディ侯爵は性格の良い男だった。そんな彼が大事な妻の形見をミアリナに渡したんだ。ミアリナは心の優しい女性であるに違いない。だから、ミアリナが嫌じゃない限り、私もラフリードとミアリナの結婚を望む。それだけだ」
……ラフリード様の気持ちは関係無しなのね。
気の毒に思ってラフリード様を見ると、彼は「俺のせいですまない」と眉尻を下げた。
でも、ここまで私を評価してもらえるなんて、私が思っていた以上に先代のビレディ侯爵夫妻は人格者だったんだわ。
二人とも、とても優しかったことを覚えているけれど、きっと、それだけではなかったんでしょうね。
でもそれなら、どうしてウララ様の思惑に気づかなかったのかも気になるわ。
「ラフリード様は悪くありません。評価していただけることはありがたいですし」
辛いことがあっても、誰かに当たらないように思いやりの心を忘れないように生きてきた。
それが認められたと言うのなら、見ている人は見てくれているのだとわかって嬉しい。
正直な気持ちを伝えたあと、王妃陛下に尋ねる。
「王妃陛下が現ビレディ侯爵を呼んだ理由は二つということでしょうか」
「そうだ。このままだと殺される可能性があるということ。それから、いい加減に現実を見ろと伝えるためだ」
私が言っても響かなかった。でも、王妃陛下なら、どんな反応をするかしら。
そして、自分の命が狙われるかもしれないと知って、ウララ様たちのことをどう思うのかしら。
行く行かないは自由だと言われている。でも、王妃陛下からの申し出だし、孤児院の人たちも休む理由を知らないのに、休みを取っても良いと言ってくれた。
どうして王妃陛下がトータムを呼びつけたのかがわからない。その理由を知りたいこともあって、私は話を聞きに行くことにした。
王城に足を踏み入れたことのない私は、当日、ラフリード様たちと一緒に王城に向かうことになった。王妃陛下がラフリード様も来るようにと命令されたそうだが、二人きりだとトータムに知られた時に、また面倒くさいことを言い出しそうだ。
そう考えたラフリード様がそのことを王妃陛下に伝えると、ファルナ様の同席も許された。
トータムと王妃陛下の話を私たちが聞く必要があるのか。それも謎だわ。その疑問を王妃陛下への返事に書くと、トータムと話をする当日、彼よりも前に謁見させてもらえることになった。
その際、ラフリード様も同席するようにとのことだった。ラフリード様も自分が呼ばれた理由がわからず困惑している様子だった。
当日、案内された応接室の豪奢な椅子に座っている王妃陛下を見た時、やはり、王族になる人はオーラが違うのだなと感じた。
結婚パレードの時、遠目に一度だけ見たことがある王妃陛下は、ストレートの黒髪を背中に流した、芯の強そうな美しい女性だ。
私とラフリード様が挨拶をすると、王妃陛下は口を開く。
「よく来てくれたな。そこの椅子にかけて楽にしてくれ」
私とラフリード様が近くのソファに腰を下ろすと、王妃陛下は微笑する。
「ラフリードはまだしも、ミアリナは驚いただろう?」
「王妃陛下にお会いできて光栄でございます」
素直に驚きました、と答えて良いのかわからず、当たり障りのない答えを返すと、王妃陛下は笑う。
「緊張しなくても良いと言っても無駄だよな。緊張で疲れてしまわないうちに私がトータムをなぜ呼びつけたのか理由を話そう」
王妃陛下は赤色の瞳を私に向けたあと、すぐにラフリード様に目を移す。
「ラフリード、お前は理由がわかっているのだろう?」
「……考えられるとしたら、先代のビレディ侯爵の再婚相手と娘の件……でしょうか」
ウララ様とフララさん?
どうして王妃陛下が、その二人のことでトータムを呼び出すの?
驚いてラフリード様を見ると、彼は苦笑する。
「あなたも娘の評判が良くないことは知っているんだろう?」
「……はい。お金が好きで、学生時代は貴族のご令息に声をかけていたという話は聞きました」
「母親もそうなんだ」
「そうだったんですね。薬を入手できたのも、その関係ということですか?」
私の問いかけに、ラフリード様は無言で頷く。
ウララ様の悪事についてはわかってきたけれど、どうして、その話にトータムが関係あるの?
少しだけ考えて気がついた。
トータムのお父様がウララ様に殺されたと仮定した場合、どうして、ウララ様がそんなことをしたかというと、お金のためだ。
「……まさか」
「気がついたか? 私はそれを阻止してやろうと思う。依怙贔屓だと言われるかもしれないが、私も人間だ。友人の息子の命は助けたい。だから、忠告してやろうと思う。そして、私はラフリードの母の友人でもある」
ジゼル公爵夫人の話がなぜここで出てきたのか。
私とラフリード様が顔を見合わせると、王妃陛下は言う。
「ジゼル公爵夫人はどうしてもラフリードを結婚させたいらしい。しかも、ラフリードに相手にされなくても傷つかない女性とだ」
「傷つけるようなことはしません」
ラフリード様が眉根を寄せて言うと、王妃陛下は首を横に振る。
「そうだな。お前のことを知っている人間はそう思うだろう。だが、それがわかる以前にお前は多くの女性から敬遠されて、相手にしてもらえないじゃないか。それとも、フララとかいう娘の婿になりたいか」
「いいえ」
「だろう?」
「どうして私なのでしょうか」
ジゼル公爵夫人も理由を書いてくれていたけれど、私である必要はないはずだ。
「先代のビレディ侯爵は性格の良い男だった。そんな彼が大事な妻の形見をミアリナに渡したんだ。ミアリナは心の優しい女性であるに違いない。だから、ミアリナが嫌じゃない限り、私もラフリードとミアリナの結婚を望む。それだけだ」
……ラフリード様の気持ちは関係無しなのね。
気の毒に思ってラフリード様を見ると、彼は「俺のせいですまない」と眉尻を下げた。
でも、ここまで私を評価してもらえるなんて、私が思っていた以上に先代のビレディ侯爵夫妻は人格者だったんだわ。
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でもそれなら、どうしてウララ様の思惑に気づかなかったのかも気になるわ。
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辛いことがあっても、誰かに当たらないように思いやりの心を忘れないように生きてきた。
それが認められたと言うのなら、見ている人は見てくれているのだとわかって嬉しい。
正直な気持ちを伝えたあと、王妃陛下に尋ねる。
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「そうだ。このままだと殺される可能性があるということ。それから、いい加減に現実を見ろと伝えるためだ」
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