三ヶ月だけの恋人

perari

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松田が戻ってきた時には、北川はすでに隣のテーブルへ移動していた。
彼は何も言わず、そのまま仁野の向かいに腰を下ろす。
松田は北川を知っていた。
仁野の親友で、高校時代からずっと一緒にいる仲。
二人とも水泳部で、女の子の出入りも激しい。まるで服を着替えるように彼女を取り替えてきた。
仁野は人当たりがよく、友人も多い。高校から今まで彼女の数も二十人は下らない。
だからこそ、松田に対して負い目がある。
まるで強引に迫られているように見せたくなくて、仁野は自ら口を開いた。
「ボランティアに行ってたのか?」
「うん。」
松田は短く答える。
本当は学生代表としてスピーチしてきたのだが、特に説明するつもりもなかった。
彼はちらりと仁野を見る。
豪快な食べ方。運動部らしい大きな食欲。
ご飯をまるで水のように流し込むその姿すら、不思議と見惚れてしまう。
動くたびに露わになる上腕の筋肉――無駄のない線と力強さ。
(……その力で、俺の頭に六針も縫わせたんだよな。)
松田は緊張していて、食欲がほとんどなかった。
皿の上のスペアリブをそっと仁野の皿に移し、声を落とす。
「……食べて。僕、もう入らないから。」
仁野は受け取ったが、箸を伸ばすことはなかった。
食事が終わり、片付けの時になってもスペアリブはそのまま残っていた。
松田は顔を背け、唇を噛んだ。
北川はどこかに消えていた。仁野は気にも留めず、松田に尋ねた。
「寮に戻るか?」
松田は首を振った。
「図書館へ行く。……仁野は?」
「体育館。夜の練習がある。」
スマホで時間を確認した仁野は、手で松田の背中を軽く押した。
「送ってやるよ、先輩。」
「ありがとう。」
松田は慌ててマスクを付け直した。
――顔の赤みを見られたくなかった。
二人とも学内では知られた存在だ。
けれど松田は顔を隠しているせいで、注目を浴びるのは仁野ばかりだった。
すれ違う女子学生がひそひそと彼に視線を送り、勇気のある子は「仁野くん!」と声をかけた。
可愛らしい子も多い。
短いスカートに、腰まであるゆるい巻き髪。笑顔を向けられても、仁野はただ軽く会釈するだけだった。
その塩対応すら絵になっていて、松田は胸の鼓動を抑えられなかった。
(まさか、こんなふうに並んで歩ける日が来るなんて……。)
彼はそっと仁野の横顔を盗み見て、吐息を漏らした。
(恋人、なんて……本当に、俺が?)
図書館の入口には、カップルが何組もいた。
男が女を抱きしめ、別れを惜しむ姿。
松田は反射的に視線を逸らす。
「行けよ。」
仁野が短く言う。
「……うん。」
松田は顔を上げられず、早足で階段を上がった。
まるで逃げるように数歩進んでから振り返り、声をかける。
「仁野。」
呼ばれて振り向くと、松田は階段を飛び降り、駆け寄ってきた。
そして――そっと彼の手を握った。
「……抱きしめて、くれない?」
小さな声で懇願する。
ひんやりとした掌。仁野の手よりも一回り小さな指。
仁野は無表情のまま、自分たちの手を見下ろした。
その沈黙で、松田は悟る。
まるで電流が走ったように手を離し、慌てて背中に隠す。
「ご、ごめん。勝手に触って……。」
耳まで真っ赤にして背を向け、歩き出そうとする。
だが次の瞬間――腕を掴まれ、強く引き寄せられた。
短い、けれど確かな抱擁。
二、三秒の温もりのあと、仁野は彼を放し、ポケットに手を突っ込んだまま言う。
「……行けよ、先輩。」
「……うん。」
松田は胸を押さえ、早鐘のような心臓の鼓動を聞きながら、小さく答えた。
「ありがとう。」
仁野は体育館へ向かいながら、過去のことをふと思い返していた。

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