目覚めたら、婚約破棄をされた公爵令嬢になっていた

ねむ太朗

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93 マドンナリリーと屋敷

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 時は遡る事数日前。
 ローサは公爵家の自室で自分の首を触り、ため息をついた。

「まだ、くっきりと残っておりますね」

 リタはローサの首を痛ましげに見た。

「ええ。青くなっているし、しばらく消えないかも。……明日も学院はお休みね」

 それにしても、あの短時間でこんなにくっきりと残るとは。
 しょんぼりするローサ。
 リタは落ち込んだローサを見て、明るくなる話題を考えた。

「……あっ! 先程フレデリク殿下から頂いたお花ですが、もっと目立つ所に飾りましょうか」

「ええ、ありがとう。そうだ。手紙も一緒に届いたのだったわ」

 ローサは机の上に置いてあった手紙を手に取った。
 手紙にはローサの体調を案ずる内容が書かれていて、最後にマドンナリリーのイヤリングを使うように書かれていた。

 この首のせいでしばらく外出が出来ないのにどう言う事かしら? とローサは首を傾げた。

「お嬢様、どうかされましたか?」

「うーん。フレデリク殿下がマドンナリリーのイヤリングを使うように言っているの」

 リタも首を傾げてから、宝石箱の中からイヤリングを持って来た。
 
「分かったわ! 家の中でファッションショーをして過ごしたらどうかと言う提案じゃないかしら? フレデリク殿下なりの心遣いね」

「なるほど! では、華やかなドレスをご用意しますね」

 リタは春色のドレスを用意し、ローサに着せた。そして、最後にイヤリングをつけた。

「うん。気分が上がったわ! フレデリク殿下ありがとうございます」

 ドレスを着たローサを見て、リタも達成感に満たされていた。
 一段落したので、フレデリクに返事を書こうとしたローサだったが、丁度ジョンウィルが部屋を訪ねて来た。

「姉さん何やってるの?」

「えっと、ファッションショー?」

「安静にしていた方がいいと思うけど……」

「だって、フレデリク殿下の心遣いよ。無下に出来ないじゃない」

 首を傾げたジョンウィルは、ローサに事の次第を聞いた。
 そして涙を流して笑いだした。

「ちょっと、何よ急に」

「あー、おっかしい。最近の姉さんって本当に変な事ばかりするよね」

「ちょっと失礼よ」

「そのイヤリングだけど、宝石ではなくて魔力石が付いているよね。貰った時に説明されなかった?」

「されたわよ。念じれば小さな傷口ならふさがるって。……もしかして!」

「そうだよ。フレデリク殿下はファッションショーをして気分を上げてなんて言っていないから」

 そう言うとジョンウィルは、今度は腹を抱えて笑い出した。
 ローサはムスッとしながらも魔力石に首にある跡が消えるように念じた。 

「お嬢様! 綺麗になりましたよ」

 嬉しそうな声を出すリタ。

「良かったわ。これで明日からは学院に行けるわね」

「それにしても……姉さん愛されてるね」

 ジョンウィルはようやく笑うのをやめた。

「ん? どうして?」

「治癒の魔力石は珍しいからかなり高価だよ」

「へぇー、そうなの」

「あまり分かっていないようだから補足するけど、そのイヤリング一つで王都の外れに屋敷一つ分買えるくらいの値段だよ」

「えっ! と言う事は……私の耳には屋敷が一つずつぶら下がっているって事?」

「言いたい事は分かるけど、姉さんの耳にぶら下がっているのは、屋敷じゃなくてイヤリングだね」

 ジョンウィルは呆れた顔をした。
 ローサは少し考えた。

 えっと……王都を東京二十三区に例えると……王都の外れだから、練馬区とか板橋区あたりかしら。それとも、江戸川区とか葛飾区あたり? いや、どっちでもかなりの値段じゃない。だって屋敷だもの。しかも、田舎のオルブライト領に建てるのとは違うのよ。数十万くらいのイヤリングだと思っていたのに……。

「……けれど、そのくらいの値段なのよね」

「まあ、そうなるね」

 ローサは手を震わせながら、イヤリングを宝石箱に戻した。

「姉さん。手が震えてる……本当面白い……ぷぷ」

「ちょっと! さっきから笑いすぎよ。アイリスちゃんと少しうまくいってるからって」

 ローサはムスッとして言った。

「なっ、なんで知ってるの?」

「ふふふ。アイリスちゃんとは茶飲み友達なのよ」

「僕にないしょで二人で会ってるの?」

 面白くなさそうな顔をしたジョンウィル。

「だって茶飲み友達だもの」

 勝ち誇った顔をしたローサだった。
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