94 / 123
93 マドンナリリーと屋敷
しおりを挟む
時は遡る事数日前。
ローサは公爵家の自室で自分の首を触り、ため息をついた。
「まだ、くっきりと残っておりますね」
リタはローサの首を痛ましげに見た。
「ええ。青くなっているし、しばらく消えないかも。……明日も学院はお休みね」
それにしても、あの短時間でこんなにくっきりと残るとは。
しょんぼりするローサ。
リタは落ち込んだローサを見て、明るくなる話題を考えた。
「……あっ! 先程フレデリク殿下から頂いたお花ですが、もっと目立つ所に飾りましょうか」
「ええ、ありがとう。そうだ。手紙も一緒に届いたのだったわ」
ローサは机の上に置いてあった手紙を手に取った。
手紙にはローサの体調を案ずる内容が書かれていて、最後にマドンナリリーのイヤリングを使うように書かれていた。
この首のせいでしばらく外出が出来ないのにどう言う事かしら? とローサは首を傾げた。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「うーん。フレデリク殿下がマドンナリリーのイヤリングを使うように言っているの」
リタも首を傾げてから、宝石箱の中からイヤリングを持って来た。
「分かったわ! 家の中でファッションショーをして過ごしたらどうかと言う提案じゃないかしら? フレデリク殿下なりの心遣いね」
「なるほど! では、華やかなドレスをご用意しますね」
リタは春色のドレスを用意し、ローサに着せた。そして、最後にイヤリングをつけた。
「うん。気分が上がったわ! フレデリク殿下ありがとうございます」
ドレスを着たローサを見て、リタも達成感に満たされていた。
一段落したので、フレデリクに返事を書こうとしたローサだったが、丁度ジョンウィルが部屋を訪ねて来た。
「姉さん何やってるの?」
「えっと、ファッションショー?」
「安静にしていた方がいいと思うけど……」
「だって、フレデリク殿下の心遣いよ。無下に出来ないじゃない」
首を傾げたジョンウィルは、ローサに事の次第を聞いた。
そして涙を流して笑いだした。
「ちょっと、何よ急に」
「あー、おっかしい。最近の姉さんって本当に変な事ばかりするよね」
「ちょっと失礼よ」
「そのイヤリングだけど、宝石ではなくて魔力石が付いているよね。貰った時に説明されなかった?」
「されたわよ。念じれば小さな傷口ならふさがるって。……もしかして!」
「そうだよ。フレデリク殿下はファッションショーをして気分を上げてなんて言っていないから」
そう言うとジョンウィルは、今度は腹を抱えて笑い出した。
ローサはムスッとしながらも魔力石に首にある跡が消えるように念じた。
「お嬢様! 綺麗になりましたよ」
嬉しそうな声を出すリタ。
「良かったわ。これで明日からは学院に行けるわね」
「それにしても……姉さん愛されてるね」
ジョンウィルはようやく笑うのをやめた。
「ん? どうして?」
「治癒の魔力石は珍しいからかなり高価だよ」
「へぇー、そうなの」
「あまり分かっていないようだから補足するけど、そのイヤリング一つで王都の外れに屋敷一つ分買えるくらいの値段だよ」
「えっ! と言う事は……私の耳には屋敷が一つずつぶら下がっているって事?」
「言いたい事は分かるけど、姉さんの耳にぶら下がっているのは、屋敷じゃなくてイヤリングだね」
ジョンウィルは呆れた顔をした。
ローサは少し考えた。
えっと……王都を東京二十三区に例えると……王都の外れだから、練馬区とか板橋区あたりかしら。それとも、江戸川区とか葛飾区あたり? いや、どっちでもかなりの値段じゃない。だって屋敷だもの。しかも、田舎のオルブライト領に建てるのとは違うのよ。数十万くらいのイヤリングだと思っていたのに……。
「……けれど、そのくらいの値段なのよね」
「まあ、そうなるね」
ローサは手を震わせながら、イヤリングを宝石箱に戻した。
「姉さん。手が震えてる……本当面白い……ぷぷ」
「ちょっと! さっきから笑いすぎよ。アイリスちゃんと少しうまくいってるからって」
ローサはムスッとして言った。
「なっ、なんで知ってるの?」
「ふふふ。アイリスちゃんとは茶飲み友達なのよ」
「僕にないしょで二人で会ってるの?」
面白くなさそうな顔をしたジョンウィル。
「だって茶飲み友達だもの」
勝ち誇った顔をしたローサだった。
ローサは公爵家の自室で自分の首を触り、ため息をついた。
「まだ、くっきりと残っておりますね」
リタはローサの首を痛ましげに見た。
「ええ。青くなっているし、しばらく消えないかも。……明日も学院はお休みね」
それにしても、あの短時間でこんなにくっきりと残るとは。
しょんぼりするローサ。
リタは落ち込んだローサを見て、明るくなる話題を考えた。
「……あっ! 先程フレデリク殿下から頂いたお花ですが、もっと目立つ所に飾りましょうか」
「ええ、ありがとう。そうだ。手紙も一緒に届いたのだったわ」
ローサは机の上に置いてあった手紙を手に取った。
手紙にはローサの体調を案ずる内容が書かれていて、最後にマドンナリリーのイヤリングを使うように書かれていた。
この首のせいでしばらく外出が出来ないのにどう言う事かしら? とローサは首を傾げた。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「うーん。フレデリク殿下がマドンナリリーのイヤリングを使うように言っているの」
リタも首を傾げてから、宝石箱の中からイヤリングを持って来た。
「分かったわ! 家の中でファッションショーをして過ごしたらどうかと言う提案じゃないかしら? フレデリク殿下なりの心遣いね」
「なるほど! では、華やかなドレスをご用意しますね」
リタは春色のドレスを用意し、ローサに着せた。そして、最後にイヤリングをつけた。
「うん。気分が上がったわ! フレデリク殿下ありがとうございます」
ドレスを着たローサを見て、リタも達成感に満たされていた。
一段落したので、フレデリクに返事を書こうとしたローサだったが、丁度ジョンウィルが部屋を訪ねて来た。
「姉さん何やってるの?」
「えっと、ファッションショー?」
「安静にしていた方がいいと思うけど……」
「だって、フレデリク殿下の心遣いよ。無下に出来ないじゃない」
首を傾げたジョンウィルは、ローサに事の次第を聞いた。
そして涙を流して笑いだした。
「ちょっと、何よ急に」
「あー、おっかしい。最近の姉さんって本当に変な事ばかりするよね」
「ちょっと失礼よ」
「そのイヤリングだけど、宝石ではなくて魔力石が付いているよね。貰った時に説明されなかった?」
「されたわよ。念じれば小さな傷口ならふさがるって。……もしかして!」
「そうだよ。フレデリク殿下はファッションショーをして気分を上げてなんて言っていないから」
そう言うとジョンウィルは、今度は腹を抱えて笑い出した。
ローサはムスッとしながらも魔力石に首にある跡が消えるように念じた。
「お嬢様! 綺麗になりましたよ」
嬉しそうな声を出すリタ。
「良かったわ。これで明日からは学院に行けるわね」
「それにしても……姉さん愛されてるね」
ジョンウィルはようやく笑うのをやめた。
「ん? どうして?」
「治癒の魔力石は珍しいからかなり高価だよ」
「へぇー、そうなの」
「あまり分かっていないようだから補足するけど、そのイヤリング一つで王都の外れに屋敷一つ分買えるくらいの値段だよ」
「えっ! と言う事は……私の耳には屋敷が一つずつぶら下がっているって事?」
「言いたい事は分かるけど、姉さんの耳にぶら下がっているのは、屋敷じゃなくてイヤリングだね」
ジョンウィルは呆れた顔をした。
ローサは少し考えた。
えっと……王都を東京二十三区に例えると……王都の外れだから、練馬区とか板橋区あたりかしら。それとも、江戸川区とか葛飾区あたり? いや、どっちでもかなりの値段じゃない。だって屋敷だもの。しかも、田舎のオルブライト領に建てるのとは違うのよ。数十万くらいのイヤリングだと思っていたのに……。
「……けれど、そのくらいの値段なのよね」
「まあ、そうなるね」
ローサは手を震わせながら、イヤリングを宝石箱に戻した。
「姉さん。手が震えてる……本当面白い……ぷぷ」
「ちょっと! さっきから笑いすぎよ。アイリスちゃんと少しうまくいってるからって」
ローサはムスッとして言った。
「なっ、なんで知ってるの?」
「ふふふ。アイリスちゃんとは茶飲み友達なのよ」
「僕にないしょで二人で会ってるの?」
面白くなさそうな顔をしたジョンウィル。
「だって茶飲み友達だもの」
勝ち誇った顔をしたローサだった。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる