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番外編
2 困惑する佐々木
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「何を訳の分からない事を言っているんだ?」
今度は佐々木が困惑した顔をした。
「えっと……私もまだ良く分からないのですが、杏奈さんはいきなり訪ねて来た知らない女性に刺殺されたようです。あっ、そこに転がっているのが、凶器の包丁ですわ」
「凶器……では、君の体には刺し傷があるはずだが……」
「そう言えばそうですね。確認してみますね」
ローサフェミリアは服を捲ってお腹を出した。
「ちょっ、いきなり脱ぐんじゃない」
慌てた佐々木は後ろを向いた。
「あっ、ごめんなさい。痛くないから気になってしまい……つい……」
佐々木は顔を少し赤くして、ため息をついた。
「服には血が付いていますが、体は綺麗になっていますね。悪魔がやったのかしら?」
「悪魔?」
ローサフェミリアが服を戻すと、佐々木が振り返った。
「ええ。私を杏奈さんの体に入れたのが悪魔です。黄泉で会いましたの」
「黄泉……」
「ええ、そうです。黄泉です。あっ、はじめまして、ローサフェミリア・オルブライトと申します。死因は自殺ですわ」
「死因は自殺……ローサフェミリアさん? は、もう亡くなっているのか?」
佐々木は今だに困惑した顔をしている。
「ええ。そうです」
「こんな事を言うのは失礼かもしれないが、君は自殺をする程悩んでいるようには見えないのだが」
ローサフェミリアは首を傾げた。
「はい。そうですね……? えっと、なんで死んだのかしら? あっ、そうそう。フレデリク殿下に婚約破棄をされたのだったわ」
ローサフェミリアは、今夜の晩ごはんを思い出したかのようなノリの軽さで返事をした。
「婚約破棄……それはさぞかし辛かっただろう」
「はい。そうなんです。フレデリク殿下のせいでお父様の言いつけを守れなかったのですわ。なので私の人生お先真っ暗なんです」
「ん? 振られて傷ついているのではないのか?」
佐々木はさらに困惑した顔をした。
「なぜ私がフレデリク殿下に振られて傷つくのですか?」
俺に聞かれても困るのだが……と思った佐々木。
「一般的には婚約者に振られたら、落ち込んだり、悲しくなったり、それこそ自殺をする人がいても不思議ではないと思うのだが」
「ああ! 私とフレデリク殿下は政略結婚の予定でしたので、恋人同士のうんぬんかんぬんとやらはないのですわ」
「そうなのか……だか、君は自殺をする程に傷ついたのだろう?」
「ええ。そうなんです。お父様の言いつけを守れなかったんです。フレデリク殿下のせいで! お父様は私にフレデリク殿下と結婚をするように言いました。しかし、フレデリク殿下が婚約破棄をしたせいで、結婚が無くなってしまったんです」
「ローサフェミリアさんのお父さんは、そんな事で君を叱るのか? 君は被害者で悪いのはフレデリク殿下? えっ? 王子様? ではないのか?」
「はい。フレデリク殿下は第二王子です。悪いのはフレデリク殿下ですが、フレデリク殿下と結婚出来ないと、私はお父様の言いつけを守れなかった事になります。幼少の頃から私の家庭教師をしていたロザリンヌは、淑女とは家長の言う事をしっかりと聞き、お淑やかで気品がある女性ですと、申しておりました。ですから、今はお父様の言う事を、結婚してからは旦那様の言う事は絶対なのです」
「……なるほど。ローサフェミリアさんが居た国では女性に発言権がないのか?」
「ありま……あれ? とにかく、お父様の言う事は絶対なのです」
「ああ。それは分かった」
ローサフェミリアの父オスカーと母エリスは、まさかローサフェミリアが家庭教師が言った事を極端に解釈し、誤解をしている事に気づいていない。
ローサフェミリアがフレデリクとの婚約を嫌がり、フレデリクに伝えていれば、フレデリクとの婚約は解消されていたかもしれない。
よってローサフェミリアは、死神の介入があっても死ななかったかもしれないし、ローサフェミリアとして別の人間と結婚をしていた可能性もあったのだ。
ローサフェミリアがフレデリクの気持ちに気づいていないのは、ローサフェミリアの鈍感さもあるが、婚約者と言う事にあぐらをかいて、自分の気持ちを素直に伝えなかったフレデリクにも問題があったのであろう。
今度は佐々木が困惑した顔をした。
「えっと……私もまだ良く分からないのですが、杏奈さんはいきなり訪ねて来た知らない女性に刺殺されたようです。あっ、そこに転がっているのが、凶器の包丁ですわ」
「凶器……では、君の体には刺し傷があるはずだが……」
「そう言えばそうですね。確認してみますね」
ローサフェミリアは服を捲ってお腹を出した。
「ちょっ、いきなり脱ぐんじゃない」
慌てた佐々木は後ろを向いた。
「あっ、ごめんなさい。痛くないから気になってしまい……つい……」
佐々木は顔を少し赤くして、ため息をついた。
「服には血が付いていますが、体は綺麗になっていますね。悪魔がやったのかしら?」
「悪魔?」
ローサフェミリアが服を戻すと、佐々木が振り返った。
「ええ。私を杏奈さんの体に入れたのが悪魔です。黄泉で会いましたの」
「黄泉……」
「ええ、そうです。黄泉です。あっ、はじめまして、ローサフェミリア・オルブライトと申します。死因は自殺ですわ」
「死因は自殺……ローサフェミリアさん? は、もう亡くなっているのか?」
佐々木は今だに困惑した顔をしている。
「ええ。そうです」
「こんな事を言うのは失礼かもしれないが、君は自殺をする程悩んでいるようには見えないのだが」
ローサフェミリアは首を傾げた。
「はい。そうですね……? えっと、なんで死んだのかしら? あっ、そうそう。フレデリク殿下に婚約破棄をされたのだったわ」
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「婚約破棄……それはさぞかし辛かっただろう」
「はい。そうなんです。フレデリク殿下のせいでお父様の言いつけを守れなかったのですわ。なので私の人生お先真っ暗なんです」
「ん? 振られて傷ついているのではないのか?」
佐々木はさらに困惑した顔をした。
「なぜ私がフレデリク殿下に振られて傷つくのですか?」
俺に聞かれても困るのだが……と思った佐々木。
「一般的には婚約者に振られたら、落ち込んだり、悲しくなったり、それこそ自殺をする人がいても不思議ではないと思うのだが」
「ああ! 私とフレデリク殿下は政略結婚の予定でしたので、恋人同士のうんぬんかんぬんとやらはないのですわ」
「そうなのか……だか、君は自殺をする程に傷ついたのだろう?」
「ええ。そうなんです。お父様の言いつけを守れなかったんです。フレデリク殿下のせいで! お父様は私にフレデリク殿下と結婚をするように言いました。しかし、フレデリク殿下が婚約破棄をしたせいで、結婚が無くなってしまったんです」
「ローサフェミリアさんのお父さんは、そんな事で君を叱るのか? 君は被害者で悪いのはフレデリク殿下? えっ? 王子様? ではないのか?」
「はい。フレデリク殿下は第二王子です。悪いのはフレデリク殿下ですが、フレデリク殿下と結婚出来ないと、私はお父様の言いつけを守れなかった事になります。幼少の頃から私の家庭教師をしていたロザリンヌは、淑女とは家長の言う事をしっかりと聞き、お淑やかで気品がある女性ですと、申しておりました。ですから、今はお父様の言う事を、結婚してからは旦那様の言う事は絶対なのです」
「……なるほど。ローサフェミリアさんが居た国では女性に発言権がないのか?」
「ありま……あれ? とにかく、お父様の言う事は絶対なのです」
「ああ。それは分かった」
ローサフェミリアの父オスカーと母エリスは、まさかローサフェミリアが家庭教師が言った事を極端に解釈し、誤解をしている事に気づいていない。
ローサフェミリアがフレデリクとの婚約を嫌がり、フレデリクに伝えていれば、フレデリクとの婚約は解消されていたかもしれない。
よってローサフェミリアは、死神の介入があっても死ななかったかもしれないし、ローサフェミリアとして別の人間と結婚をしていた可能性もあったのだ。
ローサフェミリアがフレデリクの気持ちに気づいていないのは、ローサフェミリアの鈍感さもあるが、婚約者と言う事にあぐらをかいて、自分の気持ちを素直に伝えなかったフレデリクにも問題があったのであろう。
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