なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

ねむ太朗

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  私は、サラと護衛の方と一緒に町に来ていた。

  お忍び用の服は持っていないので、灰色と白の落ち着いた色のドレスを着ていく。

  馬車から降りると町の人達に、ちらちらと見られた。

  町でドレスを着ていたら、さすがにうくわよね。

  注目を浴びることに、慣れていない私は、うつむいてしまう。

「お嬢様。こちらのお店に入りましょう」

  サラに促され、町の服屋に入った。

「いらっしゃいませ」

  服屋の女性店員が声をかけてから近寄ってきた。

「どのような服をお求めですか」

  店員の言葉に私は、少し考えてから答えた。

「動き易くて、町に溶け込み易いものを探しています」

  店員は、いくつかおすすめを紹介してくれた。

「サラ。どれがいいかしら?」

  迷った私は、サラに訪ねた。

「そうですね。お嬢様……ピンク色のものとかどうでしょうか?」

「ピンク……ピンクは、エルーシアに取られないかしら?」

「取られたら、また買いに行きましょう。それに、取られないように帰ったらすぐにクローゼットに隠しましょう。」

  サラの言葉で私は選ぶ事が出来た。

「わかったわ。そちらにある、うすいピンク色のワンピースにするわ」

  店員に包んでもらった。
  それから、青色のワンピースと黄緑色のワンピースも一緒に買った。  私は目当ての平民が着ている服を買うことが出来て満足した。

  プラメル伯爵家に帰るとエルーシアは、出掛けているようで家にいなかった。

  サラは、急ぎでワンピースを洗うように指示を出し、メイドに渡していた。

  私は、刺繍をして過ごすことにする。白いハンカチにバラの刺繍をした。出来上がったものをサラに見せた。

「サラ、何に見える?」

「まあ、かわいいチューリップですね。お嬢様」

「サラ……これは、バラよ。バラ」

  私の言葉にサラは少し焦って答えた。

「も、もちろん、分かっておりますよ。今のは、冗談ですよ。とても、素晴らしいバラですね。」

「素晴らしい?  では、お兄様にも聞いてみるわね。」

  サラは、焦って言った。

「それは、やめておいた方がよろしいかと……」

「サラ、本当のことを言って。」

「チューリップに……いえ、茎の上に付いた赤いトゲトゲに見えました……」

  私は、サラの言葉にショックをうけた。

「トゲトゲって」

「お嬢様、刺繍の練習頑張りましょうか」

「ええ、そうするわ」

  この日から私は、刺繍の練習に励むことにした。


  家にいる日が続くと、会いたくない人達に会ってしまう……
  それは家庭教師を見送り、午後は散歩でもしようかな。と庭を歩いている時に起こった。

「ルシアン様ー。蜂がいるわ。私、こわーい」

  そう言って、ルシアン様の腕に抱きつくエルーシア。ついでに胸まで押し付けているように見えるが気のせいだろうか……

「エルーシア。もう蜂は、逃げて行ったよ。大丈夫」

「良かったわ。私、恐くて恐くて。ルシアン様がいなかったら、泣いていたかも」

  いやいやエルーシアは、蜂くらいでは泣かないだろう。私はあきれながら、遠くで聞いていた。

「僕のかわいいエルーシアが泣かなく良かったよ。いつでも、僕が守るからね」

「まあ!  ルシアン様素敵!」

  とんだ、茶番よね……

  私はさっと身を翻し、二人が居ない方向に向かおうとするが、エルーシアが声を掛けてきた。

「まあ!  お姉様。いらしたのね。声を掛けて下さればいいのに。ひどいわ」

  私は、ひどいのはどっちだ!  と言いたかったが、飲みこんで返事をする。

「お二人のお邪魔になると思ったのよ。ごめんなさいね」

「そんな気を使わないでお姉様。私、お姉様に避けられていると思って悲しいわ」

  これでは、私が悪いみたいではないか…

「そうね。次から声を掛けるようにするわ」

  これで話が終わったと思った私に、エルーシアが声を掛けてきた。

「ルシアン様、最近のお姉様って、私に意地悪をするのよ。お兄様と二人でこそこそ話していたり、お兄様だけ連れて公爵家に遊びに行くのよ。私のことは、誘ってくれないの。お姉様は、私のことが嫌いなんだわ」

  それを聞いたルシアン様が言った。

「リリアーナ!  ひどいじゃないか。エルーシアに謝れ!婚約解消になったのは、申し訳ないと思っているが、エルーシアに当たるのは、違うと思う。僕は君みたいに、実の妹に意地悪をする人と結婚しなくてすんで良かったよ」

「まあ、ルシアン様素敵だわ。私の為に言ってくれてありがとう。大好きよ」

  そう言って、ルシアン様に抱きつくエルーシア。

「当たり前じゃないか。僕は、エルーシアのナイトだろう」

  抱き合う二人。エルーシアは、ルシアン様に見えないように私を見て、勝ち誇ったように笑った。

  悔しい!  どうして、私がエルーシアに謝らなければいけないのよ。
  私が、エルーシアをいじめたですって!
  エルーシアが私から何もかも奪ったんじゃない!

  私は抱き合っている二人に、無表情で言った。

「エルーシア。お兄様と私は、こそこそ話をしていません。お兄様が私の部屋によく遊びに来るだけです。それから、公爵家に呼んでもらえないのは、エルーシアに原因があるのではないですか。よくお考え下さい。では、失礼します」

  そう言い、私はその場から去っていった。

  去って行く私に、ルシアン様が言った。

「ふん!  かわいげのない女だ。本当に結婚前に婚約が解消されて良かったよ」

  私もあなたみたいに、コロコロ心変わりする男はごめんです!

  私は、心の中で言い返したのであった。
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