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  今日は、お兄様と公爵家に出かける日。

「お兄様!  準備はまだですか?」

  私はお兄様の支度したくが、自分より時間が掛かり朝からイライラ。

「そんなに急がなくても、クラウス様は逃げないよ」

  呑気なお兄様の声に私はむすっとした。

「べ、別に。クラウス様に会いたくて急いでいるのではありません。お兄様のお支度が遅いから、教えてさしあげているのよ」

「はいはい。今終わったよ」

  馬車の中でも、むすっとしていた私だか、公爵領に入る頃には機嫌が戻っていた。

  リーベル公爵家では、いつものようにクラウスが出迎えてくれた。今日は、隣にユリアス様もいる。

「ルイス・プラメルと申します。よろしくお願いいたします」

「ユリアス・リーベルと申します。よろしくお願いいたします」

  ユリアス様は、お兄様にはきちんと挨拶が出来るのね……

  ユリアス様は私の視線に気づいたようで、私を見てからスッと顔をそむけた。


「あのあと母上に怒られてね……。だいぶ、絞られたみたいだよ」

  クラウスは、私にだけ聞こえるようにこっそり教えてくれた。


  カキン!  カシャン!

  剣と剣がぶつかる音が聞こえる。
  剣先は潰してあるが、当たったら痛そうだ。

「サラー。暇ね」

「何を言っているのですかお嬢様。クラウス様を応援しては、いかがですか」

  サラの言葉にクラウスを応援する私を想像してみた。なんだか、ちょっと恥ずかしい。

「それは、やめとくわ」

  それにしてもクラウスは、運動を頑張っているわね。
  それに楽しそうだわ。

  剣の稽古の後は、噴水が正面に見えるテラスでみんなでお茶をした。

「ルイス様。また、剣で戦いたい!  また、来てくれる?」

  ユリアス様もお兄様に懐いたようだ。さすが私のお兄様ね。

「また、伺いますね。ユリアス様」

  お兄様の言葉に、ユリアス様は笑顔を見せた。

「ねえ。ルイス様は、どうしてそんなに強いの?」

「友人のジャックと幼少の頃から、剣を振っていたからですかね。ジャックは、騎士を目指していて練習に付き合わされているんですよ」

「騎士?  騎士を目指している友達がいるの?  僕も会いたいな。ねえ。兄さん、次はジャックも誘おうよ」

  クラウスは、少し考えてから言った。

「ジャック様は、ハーヴェス家の方で合っていますか」

「はい。ハーヴェス家の次男のジャック・ハーヴェスです」

  それを聞いてクラウスはニコリと笑って言った。

「ユリアス、ハーヴェス家の令息の方なら大丈夫。けれど、念のため父上に確認してからな」

  それを聞いて、嬉しそうにしていたユリアス様だった。

  夕方になりそろそろ帰る時間。馬車に乗る前にクラウスが私に言った。

「次に会う時は、平民が着ていそうな服を持ってきて欲しい。お忍びで町に行こう」

「はい!楽しみにしています」

  クラウスの誘いに私は、心踊らせた。

「では、クラウス様ユリアス様、ごきげんよう」

  挨拶をしてから馬車に乗り、私達を乗せた馬車は、伯爵領に向かって行った。

  伯爵家に無事到着し、部屋に戻ってすぐに私はサラに声を掛けた。

「サラ!明日は、平民が着ている服を町に買いに行こう」

「お嬢様、少し落ち着いて下さい。町に出る時は、護衛をする方が必要です。まずは、奥様に確認してからですよ。それに、急がなくとも次にクラウス様に会うのは、七日後でしたよね」

「うん。まずは、お母様に聞いてみるわ。ありがとうサラ」

  その日のうちに許可をもらい、私は明日を楽しみに眠りについた。
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