王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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アルフレッド執務室軟禁事件

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この日、アルフレッドは朝からクラリスの執務室に軟禁されていた。

クラリスは淡々と説教を始める。

『アルフレッド様、よろしいでしょうか?令嬢たちには表の顔と裏の顔がありましてね…これを見極めるのが至難の業なのです』

アルフレッドは別に令嬢を見極める目が無いわけではない。端的に言えば、興味が無いだけである。

『誰でも一度や二度の失敗はございます』

『まず、貴族令嬢ではなく王女の場合ですが、これがまたなかなか厄介なのです。その国で絶対的権力のもと育てられていますからね…』

腕組みして考え込むクラリスを、アルフレッドは不思議そうに見つめる。
そこへテオドールが執務室に戻ってくる。

テオドールはアルフレッドに急いで礼を取るが、アルフレッドは表情ひとつ変えず顎を突き出し、テオドールをデスクに促す。

…執務にかかれ。

テオドールはアルフレッドの心の声を感じ取り、大人しく席につく。

『そうそう、良い例えがございます。殿下はご存知かどうかわかりませんが、パナン王国にエリザベスという王女がおりましてね?』

テオドールは思わず口に含んだお茶を吹き出しそうになるが、アルフレッドは顔色ひとつ変えず、クラリスの話に耳を傾ける。

『あの美貌とスタイルが放つオーラ。揃いすぎてますからね、彼女が口角を少し上げて微笑むだけで、見る者は思わず心が躍るわけです。はい、殿下は縁もゆかりも無い方ですからご安心を』

テオドールはアルフレッドの顔色をうかがう。

『寡黙…そう、この寡黙さがまた厄介なのです。王女のオーラを助長させ、無駄なことを話さないからこそ、少しでも口を開くと聞いた者は錯覚に陥るわけです。ですが、実際は頭がちょっと…いや、かなり弱いようでございますの』

テオドールの説明に、クラリスもアルフレッドも困惑。

『一方の私。一応リントン第1王女ではありますが、あの絶世の美女とは雲泥の差でございます』

『確かに…』

クラリスは少し顔をしかめ、テオドールに反論。

『王女の風格こそございませんが、しかし!私には心があります。民と共に生きる覚悟がありますの。それは見た目ではわかりませんでしょ?』

しかしテオドールは淡々と一言。

『無いな』

クラリスは悔しそうに咳払いする。

『煩い!…ゴホン。殿下、よろしいでしょうか。王女というのは、たいてい頭空っぽな世間知らずが多いものです。だから、パナン王国のエリザベス様も特別ではなく、どこの王女も大して変わりませんの。虫に刺されたと思って忘れることです』

ここまで黙って聞いていたアルフレッドが口を開く。

『それを言うなら、犬に噛まれたと思ってではないか?』

テオドールは肩を震わせ笑いを堪える。

『…そうとも言えますわね。とにかく!私が言いたいのは、失恋を癒すには次の恋ですわ、殿下』

アルフレッドは冷静に返す。

『別に私は失恋などしておらんぞ。エリザベスと話したこともほとんどないし』

クラリスは固まる。テオドールは笑いを必死に堪える。

アルフレッドはソファから立ち上がり、静かに告げる。

『クラリス、君の話は理解した。礼を言う』

にこりと手を挙げ、執務室を後にする。

クラリスは息を大きく吐き、ソファへ飛び込む。

『ひやぁ…緊張したわ~』

テオドールはため息をつき、頭を抱える。

…勘弁してくれよ。
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