両親に溺愛されて育った妹の顛末

葉柚

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Side:オフィーリア


 エレノアお姉さまとの出会いの記憶を私は今も鮮明に思い出すことができる。
 産まれたばかりの赤ちゃんの頃の記憶があるというと驚く人も多いと思うが、私にはエレノアお姉さまに初めて会ったときのエレノアお姉さまの笑顔を今でも鮮明に覚えている。
 エレノアお姉さまの慈愛に満ちた心の底からの笑顔は今も忘れることができない。
 私の誕生を心から喜んでいると感じ取れたから。
 
「エレノアお姉さまと遊びたいわ。」

 小さな頃の私はエレノアお姉さまの笑顔が見たくて必死だった。
 教育係を振り切ってエレノアお姉さまの部屋に飛び込んで行くのも日常茶飯事だった。
 だって、お父さまの笑顔もお母さまの笑顔もどこか胡散臭くて苦手だったから。唯一エレノアお姉さまの笑顔だけが私を安心させたのだ。

「エレノアお姉さまっ!それ、とっても可愛いですわね。」

 エレノアお姉さまに構って欲しくて、エレノアお姉さまが大事にしているイヤリングを見つめる。
 猫がモチーフとなっているイヤリングだ。
 目のつく場所に飾ってあるそのイヤリングはきっとエレノアお姉さまのお気に入りなのだと思う。
 私はその可愛いイヤリングをつけたエレノアお姉さまの姿を見たかったのだ。
 
「オフィーリアの方が似合いそうね。」

 でも、エレノアお姉さまはイヤリングを私に差し出してきた。
 どうして?
 私は、そのイヤリングをつけたエレノアお姉さまがみたいだけなのに。
 
「ありがとう……ございます。」

 エレノアお姉さまは私にイヤリングをくれた。
 とても可愛らしいイヤリング。
 エレノアお姉さまが大事にしていて、時折眺めていたそのイヤリングを私がつけたら、エレノアお姉さまは私にまた笑顔を見せてくれるかもしれない。
 そう思って差し出されたイヤリングを受け取って自分の耳たぶにつけてみた。
 
「エレノアお姉さま、どうかしら?似合いますか?」

 希望を込めた目でエレノアお姉さまを見つめながら笑う。
 
「ええ。オフィーリアにとっても似合っているわ。」

 でも、エレノアお姉さまはどこか寂し気な笑みを見せただけだった。
 今更イヤリングをお返ししますと言っても逆にエレノアお姉さまを悲しませるだけかもしれない。
 じゃあ、どうしたらエレノアお姉さまは笑ってくださるのだろうと必死に考える。
 
「お母さまとお出かけをするの。その時にエレノアお姉さまにお土産を買ってきますわ。」

 エレノアお姉さまはお父さまとお母さまから外出しないようにと言われている。
 だから、私が外出した時にエレノアお姉さまの好きそうなものをエレノアお姉さまにお土産を買おう。エレノアお姉さまのお気に入りのこのイヤリングに似ているものがいいかもしれない。
 私の提案にエレノアお姉さまは笑顔で頷いてくれると思っていたのに、エレノアお姉さまの表情は寂し気に揺れていた。
 どうしたら私はエレノアお姉さまのことをあの日みたいに笑顔にすることができるのだろうか。
 お父さまとお母さまに期待されすぎて押し潰れてしまいそうなエレノアお姉さまのために私は何ができるのだろうか。
 


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