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本編
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しおりを挟む「お母様。私です。エメロードですわ。お母様にお話があるのです。」
「あら可愛いエメロード。いらっしゃい。ちょっと待っててね。」
母は貴族だが、変わっていることに自ら使用人と一緒に厨房に立っていた。
なんでも家族が口にするものだから自分で作りたいということだ。
でも、不器用なので料理の大半を使用人が作っているが、家族のために何かをしたいというのは見習わなければいけないだろう。
それに母は領地の孤児たちのためにと孤児院にも定期的に出かけ孤児たちに裁縫や料理などを教えている。
手に職をつけることで、将来を自分達の手で切り開いていけるようにとのことだ。
ちなみに、我が伯爵家の領民の識字率は100%だ。
これも父と母の為した功績である。
識字率をあげることで領民たちの暮らしが良くなると判断してのことだったそうだ。
おかげで、誰も契約関係で騙されることがなくなったとか。
読み書きできることはとっても大事だよね。
母は、肉を捏ねていた手を洗うとすぐに、こちらにやってきた。
「待たせたわね。エメロード。あらたまってどうかしたのかしら?」
「お母様。私、高等魔術学院に入学したくありません。お父様を説得していただけませんか?」
「あら、まあ!」
私の発言をきいて、母は目を大きくみひらいた。
「エメロード。なにがあったの?なにか嫌なことでもあったの?」
それから心配そうに私の顔を覗きこんできた。
「私が卵を育てたら邪竜が孵化してしまうのです。それを避けたいのです。」
「まあ!邪竜ですって!すごいわねぇ。エメロード。流石はエメロードだわ。下級精霊ではなくて邪竜が産まれてくるなんて。すごいわねぇ。エメロード。」
母はそう言ってにっこりと嬉しそうに笑った。
って、ちょっと待って。どうして邪竜が産まれてきて喜ぶのだろうか。この人は。
「邪竜だよ。世界を破滅に導くよ。」
「そうねぇ。でも卵から産まれてくる精霊の気質は育てた者の気質を受け継ぐというわ。エメロードが育てるのよ。邪竜と言ってもきっと性格のいい邪竜に決まっているわ。安心なさいな。」
「え、あ、うん。」
そういうものなのだろうか。
「それに、エメロードが人としての道を踏み外そうとするのならば、私たちは止めてみせるわ。だから、エメロード。貴女はなにも心配しなくていいのよ。ただ貴女は貴女らしく生きていけばいいのよ。それだけのことよ。」
母も父と同じようなことを言う。
そうなのだろうか。
父と母のことを信じていいのだろうか。
でも、父の言葉にも母の言葉も論破出来ない私には高等魔術学院に入学するしか選択肢がなくなってしまったのである。
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