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本編
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しおりを挟む「まあ、しかし、精霊の卵の守り人でも精霊の卵が孵化してみないことにはどんな精霊が生まれてくるかはわからないのだとか。」
「そう。つまりは邪竜の卵を選別して横流しするのは難しいのよ。」
トリードット先生とジェリードット先生はそう教えてくれた。
「でも、精霊の卵の色はそれぞれ違います。邪竜の卵の色を守り人たちは理解していたのではないでしょうか。聖竜の卵が虹色だというように。」
そう、ある程度は卵の色でどんな精霊が生まれてくるのか判別できるのではないか。
ピンク色の卵が火の精霊であったり、水色の卵が水の精霊であったりするように。
「まあ、だいたいはわかるがの。ただ育てる者の気質が変わることもあるのじゃ。特に珍しい色の精霊の卵は育てる者の気質で悪にも聖にもなる。」
「ならっ!珍しい色の精霊の卵を悪意を持った人に渡せば邪竜が生まれる可能性が高くなるのではありませんか!」
「そうさの。可能性は高くなるであろう。ただし、絶対とは言えぬのじゃ。過去には変わった色の精霊の卵から普通の火の精霊が生まれたという話もあるでの。」
「そうなのよねぇ。ごくありふれた色の精霊の卵から精霊王が生まれたっていうこともあったし。あまり卵の色と産まれてくる精霊を結びつけることはできないのよ。」
「・・・そうなんですね。」
じゃあ、なぜ精霊の卵には色がついているのだろうか。
そんなことがなぜか気になった。
「なんにせよ。邪竜が生まれたかもしれんのぉ。まあ、アクア嬢の卵が聖竜の卵じゃない可能性もあるがの。」
「とりあえずアクアさんを起こしてみましょうか。このくらいのヒビなら精霊の卵がアクアさんが倒れるほど魔力を吸い取ることはないでしょう。」
「お願いします。」
アクアさんを目覚めさせても問題がなさそうなことがわかったので、ジェリードット先生はアクアさんに魔力を送り込み始めた。
どうやらアクアさんが意識を失っているのは怪我をしたからではなく、魔力が枯渇してしまい仮死状態になってしまっていたからだという。
ジェリードット先生がアクアさんに魔力を送り出してから少しして、アクアさんの目元がピクリッと動いた。
「アクアさんっ!!」
私は思わず寝ているアクアさんに飛びついてしまう。
「ほら、エメロードさん。落ち着きなさいって。」
そんな私をジェリードット先生は窘めた。
でも、アクアさんが目を覚ますのだから落ち着いてはいられない。
だって、アクアさんは私のたった一人の友達なのだから。
「ん・・・うぅ・・・。」
アクアさんの小さくぽてっとした赤い唇から声が漏れる。
「アクアさんっ。アクアさんっ。」
少しずつ開いていくアクアさんの目を見て思わず涙を流してしまった。
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