悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

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「うぅむ。プーちゃんなんとかできぬのか?」

「ふははははっ。真っ暗なのだ。何も見えぬのだ。」

精霊王の声が聞こえてきた。その後すぐにプーちゃんの声が聞こえてくる。

精霊王の声は緊迫した声なのに対し、プーちゃんの声は全く緊迫した声をしていない。どこか能天気な声にも聞こえる。

「せっかくできた母親が邪竜のせいで消え去ってもいいのかえ?」

「むっ!それはならぬのだっ!」

精霊王のささやきににプーちゃんが反応する。

って、プーちゃん単純・・・。

「邪竜よ。この闇を払いたまえ。」

プーちゃんの声が闇の中に響き渡る。

ただの蛇の願いを邪竜が聞いてくれるはずもないだろうに、プーちゃんたら偉そうだ。

『ぐるぅぅぅあああああ!!!』

もちろん邪竜はプーちゃんの言うことなど聞いてはくれなかった。

闇は晴れない。

この背筋が凍るほどの寒さも。

ゴンっ!!

その瞬間何かがぶつかる音がした。

それと同時に精霊王の怒声が聞こえてくる。

「お主はアホじゃ!!邪竜がそれだけで収まるはずがないであろう!!もっとしっかりやるのじゃ!そうしないと母親が消え去るぞ!!」

「・・・痛いのだ。」

「思いっきり殴ったからの。ほら、さっさと邪竜を始末するのじゃ!!ええと、そこの人間!プーちゃんが邪竜を始末するまで妾は隠れておるからの。邪竜が消えたら呼ぶのじゃ。その際は甘味を用意しておくのじゃぞ!」

どうやらあの鈍い音はプーちゃんが精霊王に殴られた音のようだ。

プーちゃんってば精霊王にたっぷり叱られているし。

というか、この中で一番便りになるであろう精霊王がさっさと逃げてしまった。

全てをプーちゃんに託して。

「はぁ。気が重いのだ。」

そう言いながらプーちゃんが何かしたのか、辺りの闇がいきなり消え去った。

いきなり開けた視界の中で、巨大な黒い竜の姿が見えた。

あれが邪竜だろうか。

邪竜は、職員棟の屋根を破壊していた。

どうやらその大きさからか生まれた瞬間に屋根を突き破ったようである。

ただ、屋根の破片が辺りに散乱している様子は全くない。

よくよく屋根を見ると溶けたような跡がある。

もしかして、邪竜が溶かしたのだろうか。

いや、それしか考えられないだろう。

巨大な邪竜は100mはあると思われる巨体でとぐろを巻いて鎮座していた。

っていうか、プーちゃんをでっかくして色を真っ黒にしたら邪竜そのものに見える。

そこで思わずハッとした。

改めてプーちゃんを見る。

プーちゃんは蛇のように見えるが、蛇と違うのは前足と後ろ脚が申し訳ない程度についているところだ。

艶々に光る白っぽい鱗はとても頑丈そうだ。

「もしかして・・・プーちゃんって竜種なの?」

そんな結論に私は至った。

 

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