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しおりを挟む「平和ですわね。」
「そうね。良いことだわ。」
アンナライラ嬢が保護猫施設に乗り込んできてから一週間。とても平和な日々が続いていた。
城の衛兵がきちんとアンナライラ嬢を牢に繋いでいてくれているからか、アンナライラ嬢に絡まれることがなくなった。正直ホッとしている。
シルキー様も元気に走り回っているし。
ブチ様は少し私に慣れてくれたようで、たまに本当にたまにだけど私の傍まで寄ってきてくれることがある。でも、触らせてくれないけど。
「そういえば、ナーガ様がマリアちゃんに用があるって言っていたわ。ナーガ様、今とても忙しいみたいだけれど今日か明日にはここに顔を出すって言ってらっしゃったわ。」
「ナーガさんが……?」
ユリアさんがナーガさんが私に話があると言う。
いったいなんだろう。全然、見当もつかない。
それにしても、ユリアさんとナーガさんの関係ってなんなんだろう。ユリアさんがナーガさんのことを様付けして呼んでいるのが気になる。
私もナーガ様と呼んだ方がいいのかしら。
「そう。ちょっとマリアちゃんに聞きたいことがあってね。」
「噂をすればいらっしゃいましたね。ナーガ様、あの件は片がついたのですか?」
「ナーガさん。お疲れ様です。」
ナーガさんの話をしているとちょうどナーガさんが保護猫施設にやってきたところだった。
ナーガさんって気配を消すのがとても上手だから、声をかけられるまで全然気がつかなかった。
「あの子は相変わらずよ。牢の中でも自分はヒロインだから……。シルキーはどこ。って毎日のように言っているわ。まるで精神が壊れてしまったんじゃないかと思われるくらいね。」
ナーガさんは疲れたように大きなため息をついた。
「ヒロイン」「シルキー」この二つから察するにナーガさんが言う「あの子」というのは、アンナライラ嬢のことだろう。
アンナライラ嬢はもう一週間も牢の中にいるのね。保護猫施設に押し入ってきただけなのに随分と刑が重いような気がする。でも、あの性格なら牢から出てきてもまた乗り込んできそうだし。
「あの……アンナライラ嬢はこれからどうなるんですか?」
私は恐る恐るナーガさんに確認する。
「聞きたい?そうね、マリアちゃんにも関係することだものね。」
「はい。教えてください。」
「いいわよ。」
ナーガさんはそう言って頷いた。
「あの子は少しおいたが過ぎたわ。ここに乗り込んできただけではなく、王族に喧嘩を売るような発言も目立ちます。とてもではないけれど、何の罰も与えないというわけにはいかないわ。下手をしたら処刑や国外追放になってしまうわね。あの子はそれだけのことをしたの。国を乗っ取ろうとしたのですもの。妥当な判断だとは思わない?」
ナーガさんの言葉に私はハッと息を飲む。
「処刑」「国外追放」どちらもとても重い刑だ。
「……そうですね。」
「反省しているようならまたちょっと違ったのだけれどもね。まったく反省していないみたいだし。……でも、少しおかしいのよね。あの子が全てを企んだにしてはいくつかおかしなところがあるのよ。」
「おかしなところ、ですか?」
「ええ。シルキー殿下が猫の姿でいるということはほとんどの人が知らないわ。噂くらいは流れていても誰も本当のことだとは思わないでしょう?」
「はい。私も噂だとしか思っていませんでした。」
「ええ。普通はそうよ。王子が猫になるだなんてそんな突拍子もない話を信じるような人はいないわ。」
「はい。にわかには信じられません。」
聞いたときはどこのおとぎ話だろうかと思ったほどだ。正直今も信じられない気持ちでいっぱいだ。
「それに、あの闇の魔法。どれだけあの子は憎しみを持っていたというの。あのくらいの年頃の少女が闇の魔力に飲み込まれるだなんて普通あり得ないわ。あの子の生活環境を調べてみたけれど、孤児院だってごくごく普通の孤児院だったし、男爵家でもいじめられていたという話はきかないわ。どちらかというと男爵が目に入れても痛くないほどに可愛がっていたとか。そんなあの子がどうして闇の魔力なんか……。」
ナーガさんはそう言って考え込んでしまった。
正直、闇の魔力のことはわからない。だけれども、アンナライラ嬢の精神状態は普通とは思えなかった。いくらわがままに育てられたからと言っても納得はできない。
「……やはり、裏で糸を引いていた人物がいるのでしょうか。」
「わからないわ。……少し揺さぶってみようかしら。」
ユリアさんの言葉にナーガさんは考え込む。
「あのっ!私、アンナライラ嬢に会ってみたいです。」
私はアンナライラ嬢が全ての諸悪の根源ではないような気がして、話を聞いてみたくなった。このまま重い罰をかせられるのも正直哀れだし。
「……でも、あの子の精神は壊れているわ。マリアちゃんが辛い思いをするだけかもしれないわよ。」
「それでも、構いません。なんだか、もう一度アンナライラ嬢と話をしなければいけないような気がするんです。」
何故だかわからないけれど。
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