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*アンナライラが死に至るグロい描写があります。苦手な方は次の話まで飛ばしてください。*
「ああ、そうだわ。アンナライラに会いたいなら早く会いに言った方がいいわよ。ふふっ。」
ユフェライラ様はそう言って、戸惑うユースフェルト殿下を置いて牢からでていってしまった。
「……ユースフェルト殿下。」
「あ、ああ。……すまない。」
冷や汗をかいているユースフェルト殿下の身体をささえる。ユースフェルト殿下は一人で立っていられないくらいに精神的に参っているようだった。
それもそのはずだろう。
ユースフェルト殿下が盲目的に慕っていたアンナライラ嬢はユースフェルト殿下のお母上であらせられるユフェライラ様の手によって用意された存在だというのだから。
でも、ユフェライラ様がアンナライラ嬢を作ったというのはどういうことなのだろうか。もしかしてユフェライラ様がアンナライラ嬢を産んだということ……?もし、そうだとするならば、ユースフェルト殿下は実の妹を恋したっていたということになる。
なんて……なんて、残酷なことなのだろうか。
でも、納得はできてしまう。
アンナライラ嬢がこの国を自分のものにしたいと思ったのが、自分はユフェライラ様の娘だと知っていたのだとしたら、孤児院上がりの男爵令嬢でも夢をみてしまうのかもしれない。自分も王族になれる、と。
「いやぁ……ぁああっ……。」
ユフェライラ様が去ってからさほど時間は経っていないが、アンナライラ嬢が捕らわれている牢の方から女性の声が聞こえてきた。その声はどこか苦しそうに聞こえる。
「……ユースフェルト殿下。牢の方から声が……。」
「あ、ああ……。」
アンナライラ嬢の声かもしれない。私はそう思ってユースフェルト殿下に声をかけるが、ユースフェルト殿下は頷くだけで動こうとはしなかった。
いや、精神的なショックで動けないのかもしれない。
「アンナライラ嬢の可能性もあります。私、行って参りますのでユースフェルト殿下はこちらでお待ちください。」
「……い、いや。私も一緒に……。」
「ぁああああああっ!いやぁああああっ……ああ……。」
ユースフェルト殿下の声を遮るように苦しむ女性の声が大きくなっていく。
一緒に行くというユースフェルト殿下を支えながら石造りの階段を降りていく。はやる気持ちを押さえながら、転ばないように一段一段降りる。
「ぃやぁああああっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ……。」
甲高い叫び声は徐々にくぐもった低い声に変わっていく。
私たちは声の元へと急いだ。
「な゛っ!」
「きゃあっ!」
地下牢にはいくつか部屋があったが、人が入っていたのは手前の一室だけだった。
その部屋を格子越しに除くと、女性が一人蹲っていた。きっとアンナライラ嬢だろう。
可愛かった面影は残っていない。艶々と光り輝いていた髪は汚れと汗でくすんでいるようだ。
肌も傷一つなくなめらかであったのに、随分とかすり傷が多いように見受けられる。
だが、一番変わったのは顔だ。
誰だかわからないほどに顔が、皮膚が溶けただれて骨が見え隠れしている。
「う゛う゛う゛っ……。」
痛いのか、苦しいのか、アンナライラ嬢は顔を両手でかきむしろうとしている。
「……な、なんて酷い。」
「そ、そんなっ……ま、まさか母上が……?」
「早く牢を開けてお医者様にっ!!ああっ。アンナライラ嬢を連れて行くよりお医者様を連れてきた方が早いわね。ユースフェルト殿下。お医者様を呼びに行ってくださいっ!私よりユースフェルト殿下の方が足は速いはずですわっ!」
このままではアンナライラ嬢が死んでしまう。そう思った私は一刻も早く医者に見せようとした。
「……私は、ダメだ。足が……足が……。」
ユースフェルト殿下の足はガクガクと震えていた。
これでは走ることはおろかまともに歩くこともままならないだろう。
私が行くしかない。
「ユースフェルト殿下っ。ここで待っていてください。私が、お医者様を……。」
ユースフェルト殿下をこの場に残し、お医者様を呼ぶために先ほど降りてきた階段を駆け上がろうとスカートの裾を捲し上げる。
「……っあああああああああああああああああ!!」
その時、ひときわ甲高い悲鳴が上がった。
ユースフェルト殿下と私はアンナライラ嬢の方を振り返る。
そこには顔だけではなく全身が溶け出し、骨が浮かび上がるアンナライラ嬢がいた。
「……もう……ダメだ。」
「アンナライラ嬢っ!!」
ユースフェルト殿下はその場に崩れ落ちた。
私はアンナライラ嬢の元に駆け寄ろうとするが、牢屋の格子が邪魔をして部屋の中に入ることができない。 そうしている間にも見る見るとアンナライラ嬢の姿が変わっていき、3分も経たないうちに骨だけの姿になってしまった。
「……なんでっ……。なにがっ……。」
「ああああああああ。」
ユースフェルト殿下は狂ったように声を上げ、私は目の前で起きたことを頭で処理することができなかった。人間が溶けるだなんて普通ではない。しかも、衣服は傷一つない状態なのだ。
「悲鳴が聞こえたが、なにがあった!」
そこに牢の入り口を守っていた衛兵がやってきた。
「なっ……こ、これはっ……。」
衛兵は牢の中の惨状を見て言葉を失った。
「ああ、そうだわ。アンナライラに会いたいなら早く会いに言った方がいいわよ。ふふっ。」
ユフェライラ様はそう言って、戸惑うユースフェルト殿下を置いて牢からでていってしまった。
「……ユースフェルト殿下。」
「あ、ああ。……すまない。」
冷や汗をかいているユースフェルト殿下の身体をささえる。ユースフェルト殿下は一人で立っていられないくらいに精神的に参っているようだった。
それもそのはずだろう。
ユースフェルト殿下が盲目的に慕っていたアンナライラ嬢はユースフェルト殿下のお母上であらせられるユフェライラ様の手によって用意された存在だというのだから。
でも、ユフェライラ様がアンナライラ嬢を作ったというのはどういうことなのだろうか。もしかしてユフェライラ様がアンナライラ嬢を産んだということ……?もし、そうだとするならば、ユースフェルト殿下は実の妹を恋したっていたということになる。
なんて……なんて、残酷なことなのだろうか。
でも、納得はできてしまう。
アンナライラ嬢がこの国を自分のものにしたいと思ったのが、自分はユフェライラ様の娘だと知っていたのだとしたら、孤児院上がりの男爵令嬢でも夢をみてしまうのかもしれない。自分も王族になれる、と。
「いやぁ……ぁああっ……。」
ユフェライラ様が去ってからさほど時間は経っていないが、アンナライラ嬢が捕らわれている牢の方から女性の声が聞こえてきた。その声はどこか苦しそうに聞こえる。
「……ユースフェルト殿下。牢の方から声が……。」
「あ、ああ……。」
アンナライラ嬢の声かもしれない。私はそう思ってユースフェルト殿下に声をかけるが、ユースフェルト殿下は頷くだけで動こうとはしなかった。
いや、精神的なショックで動けないのかもしれない。
「アンナライラ嬢の可能性もあります。私、行って参りますのでユースフェルト殿下はこちらでお待ちください。」
「……い、いや。私も一緒に……。」
「ぁああああああっ!いやぁああああっ……ああ……。」
ユースフェルト殿下の声を遮るように苦しむ女性の声が大きくなっていく。
一緒に行くというユースフェルト殿下を支えながら石造りの階段を降りていく。はやる気持ちを押さえながら、転ばないように一段一段降りる。
「ぃやぁああああっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ……。」
甲高い叫び声は徐々にくぐもった低い声に変わっていく。
私たちは声の元へと急いだ。
「な゛っ!」
「きゃあっ!」
地下牢にはいくつか部屋があったが、人が入っていたのは手前の一室だけだった。
その部屋を格子越しに除くと、女性が一人蹲っていた。きっとアンナライラ嬢だろう。
可愛かった面影は残っていない。艶々と光り輝いていた髪は汚れと汗でくすんでいるようだ。
肌も傷一つなくなめらかであったのに、随分とかすり傷が多いように見受けられる。
だが、一番変わったのは顔だ。
誰だかわからないほどに顔が、皮膚が溶けただれて骨が見え隠れしている。
「う゛う゛う゛っ……。」
痛いのか、苦しいのか、アンナライラ嬢は顔を両手でかきむしろうとしている。
「……な、なんて酷い。」
「そ、そんなっ……ま、まさか母上が……?」
「早く牢を開けてお医者様にっ!!ああっ。アンナライラ嬢を連れて行くよりお医者様を連れてきた方が早いわね。ユースフェルト殿下。お医者様を呼びに行ってくださいっ!私よりユースフェルト殿下の方が足は速いはずですわっ!」
このままではアンナライラ嬢が死んでしまう。そう思った私は一刻も早く医者に見せようとした。
「……私は、ダメだ。足が……足が……。」
ユースフェルト殿下の足はガクガクと震えていた。
これでは走ることはおろかまともに歩くこともままならないだろう。
私が行くしかない。
「ユースフェルト殿下っ。ここで待っていてください。私が、お医者様を……。」
ユースフェルト殿下をこの場に残し、お医者様を呼ぶために先ほど降りてきた階段を駆け上がろうとスカートの裾を捲し上げる。
「……っあああああああああああああああああ!!」
その時、ひときわ甲高い悲鳴が上がった。
ユースフェルト殿下と私はアンナライラ嬢の方を振り返る。
そこには顔だけではなく全身が溶け出し、骨が浮かび上がるアンナライラ嬢がいた。
「……もう……ダメだ。」
「アンナライラ嬢っ!!」
ユースフェルト殿下はその場に崩れ落ちた。
私はアンナライラ嬢の元に駆け寄ろうとするが、牢屋の格子が邪魔をして部屋の中に入ることができない。 そうしている間にも見る見るとアンナライラ嬢の姿が変わっていき、3分も経たないうちに骨だけの姿になってしまった。
「……なんでっ……。なにがっ……。」
「ああああああああ。」
ユースフェルト殿下は狂ったように声を上げ、私は目の前で起きたことを頭で処理することができなかった。人間が溶けるだなんて普通ではない。しかも、衣服は傷一つない状態なのだ。
「悲鳴が聞こえたが、なにがあった!」
そこに牢の入り口を守っていた衛兵がやってきた。
「なっ……こ、これはっ……。」
衛兵は牢の中の惨状を見て言葉を失った。
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