断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚

文字の大きさ
51 / 76

51

 アンナライラ嬢とそのお母様と思わしき人が会話をしているようだ。
 このまま、降りていってら二人の邪魔をしそうだ。でも話の内容からするにあまり良い状況ではないような気もする。私は隣にいるユースフェルト殿下に少しこの場で様子を見ようと提案しようとしてユースフェルト殿下を見た。

「……ユースフェルト殿下?」

 ユースフェルト殿下の顔色はなぜか真っ青だった。
 身体も小刻みに震えており、今にもこの場に倒れそうなほどだ。

「ユースフェルト殿下?どうなさったのですか?」

 私は、下に居るだろうアンナライラ嬢とそのお母様に気づかれないように小声でユースフェルト殿下に声をかける。だが、ユースフェルト殿下はアンナライラ嬢がいる方向を凝視したまま私の声には反応を示さなかった。
 いったいどうしたというのだろうか。

「いや……まさか、そんなはずは……。」

 ユースフェルト殿下の口から小さなつぶやきが漏れる。その声も震えている。
 
「ユースフェルト殿下。一度戻って休みましょう。今にも倒れてしまいそうですわ。」

 そう促すがユースフェルト殿下の足は根が生えたようにその場から動かず、私が失礼を承知ながら腕を引いてみてもまったく動く気配がなかった。
 どうしようかと思っていると、階段の下の方から「カツカツカツ」という音が聞こえてきた。どうやらアンナライラ嬢と会話をしていた人物が階段を上がってきたようだ。

「ユースフェルト殿下。下から誰かが上がって参ります。端に避けましょう。」

「……そんな……なんでっ……。」

「あら。ユースフェルトではないの。こんなところに何をしにきたのかしら?」

 避ける間もなく、階段を上ってきた人と視線があった。
 私はその人に見覚えがあった。
 端に避けると私は深くお辞儀をする。

「……は……ははうえ……。」

 アンナライラ嬢と会話をしていたのはユースフェルト殿下の実のお母様であり、この国の側妃であるユフェライラ様だったのだ。

「ああ、あの子に会いに来たのね。ユースフェルト。あなたは判断を誤りました。あの子と一緒にいたかったのであれば、あの子の手綱をしっかりと握っておくべきでしたね。」

 ユフェライラ様はそう言って唇の端を引き上げた。

「……なぜ……なぜですかっ!?」

「あら?なにかあったの?」

「……アンナライラは……。母上が、アンナライラを作ったとは、どういうことなのでしょうか……。」

 ユースフェルト殿下は両手の拳をぎゅっと握りしめ、下を向きながらユフェライラ様に質問をする。

「……聞いていたのね。あれはね、あの子の妄言よ。あの子はこの国の王妃になりたかった。それがあの子に幻をみせたのね。今、あなたが聞いたのは意味の無い言葉よ。忘れなさい。」

 ユフェライラ様は笑みを浮かべたままそうユースフェルト殿下に言い聞かせる。

「母上っ!」

 納得の出来ないユースフェルト殿下はユフェライラ様にもう一度問いかける。

「忘れなさい。」

 だが、ユフェライラ様は笑みを深めてそう答えるのだった。
感想 49

あなたにおすすめの小説

すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜

まりー
恋愛
   ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。  でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。    

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。