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34 魔物との相性 2
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俺はメイスに、土魔法の〈分離〉をエンチャントすることにした。といっても、〈分離〉なんてスキルは獲得していない。今、この場で獲得しなければならないのだ。
まず、手近にある壁をメイスで叩いて一部を壊す。崩れ落ちた石のかけらを手のひらの上に置いて、それが小さな鉱物の粒に分離して、サラサラの砂になるイメージを思い浮かべる。そして、魔力を流す……と、成功だ。こぶし大の石は、一気に砂になって手のひらからこぼれ落ちていった。
『お見事です。土属性魔法〈分離〉のスキルを獲得しました。これをメイスにエンチャントして、ゴーレムの関節部を集中して攻撃しましょう』
(ああ、そのつもりだ。よし、始めようか)
♢♢♢
俺は、〈加速〉で一気にゴーレムとの距離を詰めていく。ゴーレムは巨大な腕を振り上げて、叩き潰そうと振り下ろしてきたが、その動きはあまりにも遅い。まるで、俺とゴーレムは、異なる時間経過の世界で動いているような感じだ。
スローモーションのような動きのゴーレムの周囲を動き回りながら、俺はまず、奴の右足の足首に何度も何度もメイスを叩きこんでいった。そのたびに、ゴーレムの足首の金属が、ミスリルと鉄の砂に分離して、サラサラと地面に落ちていった。
ところが、その落ちたはずの金属の砂が、まるで逆再生のビデオのように、削れたゴーレムの足首に少しずつ戻っていくのが、俺の目に映ったのだ。
(うわっ、そりゃあないだろう、神様よ。これが〈再生〉?いやいや、こんなの〝時間の逆戻し〟じゃねえか)
俺は、理不尽なこの世界の創造主に文句を言いながら、怒りに任せてメイスを振り続けた。
(くそっ、これじゃあ埒(らち)があかない……それなら……)
俺は、メイスをストレージに収納した。そして、直接自分の手のひらをゴーレムの体に押し付け始めた。
《第三者視点》
二人の獣人騎士とポピィは、二十メートルほど離れた場所で、俺とゴーレムの戦いを固唾を飲んで見守っていた。
「なんという速さだ……これが〈加速〉のスキルか……」
「すごい……ゴーレムの攻撃がまったく当たらない、いや、当たる気がしない……だが、トーマの攻撃も、ゴーレムには通じないようだ」
二人の獣人騎士は、トーマの動きに驚嘆しながらも、この戦いはやはり、敗北という結果に終わるだろう、と内心で予想していた。
だが、ポピィは違った。キラキラした目でトーマの戦いを見ながら、感嘆の声を発した後、こうつぶやいた。
「……よく見るです。ゴーレムの体から、少しずつ金属が剥がれ落ちているです。トーマ様は、きっと倒します……」
そんな三人の目に、突然、トーマがメイスをどこかへ隠し、素手で戦い始める場面が飛び込んできた。
二人の獣人騎士はもちろん、ポピィも、これには驚いて、思わずあっと声を上げた。
「な、何を考えているんだ、素手でゴーレムと戦うなんて……」
二人の騎士は、居ても立ってもいられなくなって、加勢に飛び出そうとしたが、ポピィは、二人の前に立って止めた。
「今、お二人が行っても、えっと、その、なにもならないのです。それより、よく見てくださいです。ほら、ゴーレムの体から落ちる金属が、さっきより増えたのです」
そう言われて、二人は目を凝らして二十メートル先を見つめた。
「おお、確かに……いったい、何が起こっている?」
《トーマ視点》
その時、ガコンッ、と音がして、ついにゴーレムの右の足首から下の部分が、その上の部位から外れた。ゴーレムはバランスを失い、膝を折るようにして右側に傾いた。だが、すぐに、足首から下の部分が、もぞもぞと動き出し、元の位置にくっつこうとしている。
「くそっ、させるかっ!〈ルーム〉っ!」
俺は、とっさにその足首から下の金属の塊に手を触れて、ストレージ空間に収納した。
「よし、この方法でいこう」
俺のストレージは、十メートルの三乗の広さがある。こいつ一体くらいは入るだろう。
その後は、ただの作業だった。ただ、へとへとに疲れる肉体労働だったが……。
「ハア、ハア……どうだ、この野郎、手足をもがれて転がっている気分は……?」
俺の前には、今や、胴体と腰、両腿、両二の腕、そして頭の芋虫のようなゴーレムがいた。そいつは、まだ、二の腕で這いずりながら、俺に向かって来ようとしていた。
俺は、再びメイスを取り出すと、ありったけの魔力で〈分離〉の魔法をエンチャントし、跳躍してゴーレムの背中に飛び乗った。そして、メイスの先端をそいつの背中の中央に突き立てた。
魔力感知を持つゴーレムは、いよいよヤバいと思ったのか、二の腕と腿をバタバタと動かして暴れたが、すでにメイスは、金属粉を撒き散らしながら、そいつの背中にずぶずぶと食い込んでおり、俺はメイスにつかまって、必死に振り落とされないように頑張った。
やがて、メイスの先端に、コツッ、と金属以外の何かが当たる感触があった。俺は、それが奴の心臓、つまり魔石だと確信した。
俺は、暴れるゴーレムの上に立ち上がって、メイスに力をこめ、
「これで…終わりだアアアッ!」
一気に突き下ろした。
バキンッ、と割れる感触と音がして、ゴーレムは、一瞬フリーズしたまま動きを止め、そでから、ガラガラと大きな音を立てて、バラバラの金属の塊に分かれた。
こうして、六階層での戦いはようやく終わった。
♢♢♢
(いや、気持ちは分かるけど、俺、疲れているからさぁ、もう、質問はやめてくれませんか……)
俺たちは、六階層の隠し部屋の中でキャンプをしていた。不思議なのだが、隠し部屋の中に魔物が宝箱を守っていることはあるが、外から魔物が入ってくることはない。どういう原理なのだろう。ナビもよく分からないらしい。
それより、さっきから、二人の獣人騎士の質問が止まらない。まあ、いろいろと、俺の魔法を見たので無理もないが、理屈を説明するのが面倒くさい。まあ、最後は、それが魔法なんです、と言ってごまかしてはいるが……。
「皆さん、できましたですよ。明日は、いよいよ最奥に行きますから、これを食べたら、早めに休みましょう」
おいしそうな匂いの湯気を立てている鍋を持ってきたポピィが、質問攻めにあっている俺を助けるように、そう言って真ん中に鍋を下した。
「おお、うまそうだな、今夜は魚のスープか」
「ふふ……魚もお肉も両方入ってますよ」
まだ質問を続けたがっていた二人も、おいしそうな匂いには勝てず、思わず顔をほころばせていた。
まず、手近にある壁をメイスで叩いて一部を壊す。崩れ落ちた石のかけらを手のひらの上に置いて、それが小さな鉱物の粒に分離して、サラサラの砂になるイメージを思い浮かべる。そして、魔力を流す……と、成功だ。こぶし大の石は、一気に砂になって手のひらからこぼれ落ちていった。
『お見事です。土属性魔法〈分離〉のスキルを獲得しました。これをメイスにエンチャントして、ゴーレムの関節部を集中して攻撃しましょう』
(ああ、そのつもりだ。よし、始めようか)
♢♢♢
俺は、〈加速〉で一気にゴーレムとの距離を詰めていく。ゴーレムは巨大な腕を振り上げて、叩き潰そうと振り下ろしてきたが、その動きはあまりにも遅い。まるで、俺とゴーレムは、異なる時間経過の世界で動いているような感じだ。
スローモーションのような動きのゴーレムの周囲を動き回りながら、俺はまず、奴の右足の足首に何度も何度もメイスを叩きこんでいった。そのたびに、ゴーレムの足首の金属が、ミスリルと鉄の砂に分離して、サラサラと地面に落ちていった。
ところが、その落ちたはずの金属の砂が、まるで逆再生のビデオのように、削れたゴーレムの足首に少しずつ戻っていくのが、俺の目に映ったのだ。
(うわっ、そりゃあないだろう、神様よ。これが〈再生〉?いやいや、こんなの〝時間の逆戻し〟じゃねえか)
俺は、理不尽なこの世界の創造主に文句を言いながら、怒りに任せてメイスを振り続けた。
(くそっ、これじゃあ埒(らち)があかない……それなら……)
俺は、メイスをストレージに収納した。そして、直接自分の手のひらをゴーレムの体に押し付け始めた。
《第三者視点》
二人の獣人騎士とポピィは、二十メートルほど離れた場所で、俺とゴーレムの戦いを固唾を飲んで見守っていた。
「なんという速さだ……これが〈加速〉のスキルか……」
「すごい……ゴーレムの攻撃がまったく当たらない、いや、当たる気がしない……だが、トーマの攻撃も、ゴーレムには通じないようだ」
二人の獣人騎士は、トーマの動きに驚嘆しながらも、この戦いはやはり、敗北という結果に終わるだろう、と内心で予想していた。
だが、ポピィは違った。キラキラした目でトーマの戦いを見ながら、感嘆の声を発した後、こうつぶやいた。
「……よく見るです。ゴーレムの体から、少しずつ金属が剥がれ落ちているです。トーマ様は、きっと倒します……」
そんな三人の目に、突然、トーマがメイスをどこかへ隠し、素手で戦い始める場面が飛び込んできた。
二人の獣人騎士はもちろん、ポピィも、これには驚いて、思わずあっと声を上げた。
「な、何を考えているんだ、素手でゴーレムと戦うなんて……」
二人の騎士は、居ても立ってもいられなくなって、加勢に飛び出そうとしたが、ポピィは、二人の前に立って止めた。
「今、お二人が行っても、えっと、その、なにもならないのです。それより、よく見てくださいです。ほら、ゴーレムの体から落ちる金属が、さっきより増えたのです」
そう言われて、二人は目を凝らして二十メートル先を見つめた。
「おお、確かに……いったい、何が起こっている?」
《トーマ視点》
その時、ガコンッ、と音がして、ついにゴーレムの右の足首から下の部分が、その上の部位から外れた。ゴーレムはバランスを失い、膝を折るようにして右側に傾いた。だが、すぐに、足首から下の部分が、もぞもぞと動き出し、元の位置にくっつこうとしている。
「くそっ、させるかっ!〈ルーム〉っ!」
俺は、とっさにその足首から下の金属の塊に手を触れて、ストレージ空間に収納した。
「よし、この方法でいこう」
俺のストレージは、十メートルの三乗の広さがある。こいつ一体くらいは入るだろう。
その後は、ただの作業だった。ただ、へとへとに疲れる肉体労働だったが……。
「ハア、ハア……どうだ、この野郎、手足をもがれて転がっている気分は……?」
俺の前には、今や、胴体と腰、両腿、両二の腕、そして頭の芋虫のようなゴーレムがいた。そいつは、まだ、二の腕で這いずりながら、俺に向かって来ようとしていた。
俺は、再びメイスを取り出すと、ありったけの魔力で〈分離〉の魔法をエンチャントし、跳躍してゴーレムの背中に飛び乗った。そして、メイスの先端をそいつの背中の中央に突き立てた。
魔力感知を持つゴーレムは、いよいよヤバいと思ったのか、二の腕と腿をバタバタと動かして暴れたが、すでにメイスは、金属粉を撒き散らしながら、そいつの背中にずぶずぶと食い込んでおり、俺はメイスにつかまって、必死に振り落とされないように頑張った。
やがて、メイスの先端に、コツッ、と金属以外の何かが当たる感触があった。俺は、それが奴の心臓、つまり魔石だと確信した。
俺は、暴れるゴーレムの上に立ち上がって、メイスに力をこめ、
「これで…終わりだアアアッ!」
一気に突き下ろした。
バキンッ、と割れる感触と音がして、ゴーレムは、一瞬フリーズしたまま動きを止め、そでから、ガラガラと大きな音を立てて、バラバラの金属の塊に分かれた。
こうして、六階層での戦いはようやく終わった。
♢♢♢
(いや、気持ちは分かるけど、俺、疲れているからさぁ、もう、質問はやめてくれませんか……)
俺たちは、六階層の隠し部屋の中でキャンプをしていた。不思議なのだが、隠し部屋の中に魔物が宝箱を守っていることはあるが、外から魔物が入ってくることはない。どういう原理なのだろう。ナビもよく分からないらしい。
それより、さっきから、二人の獣人騎士の質問が止まらない。まあ、いろいろと、俺の魔法を見たので無理もないが、理屈を説明するのが面倒くさい。まあ、最後は、それが魔法なんです、と言ってごまかしてはいるが……。
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