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33 魔物との相性 1
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《第三者視点》
五階層へ下りる階段の近くに、心配そうな顔で座り込んだ三人の姿があった。何度か、ズシーンという巨体が倒れるような音が、三人が座った辺りまで聞こえてきた。だが、すでに二十分が過ぎようとしていたが、トーマは姿を見せていなかった。
やがて、無言に耐えられなくなったゴウゼン男爵が、こう切り出した。
「やはり、ここにじっとしていても埒(らち)は開かない。どんな結果になったにしろ、見に行くしかあるまい」
「うむ、そうですね」
ルッド騎士爵も、それに同意した。
「ま、待ってくださいです……」
二人から少し離れて、階段の方をじっと見つめていたポピィが、涙ぐんだ目を二人に向けて叫んだ。
「……トーマ様は、無理なら、あきらめて帰ってくると言いました。トーマ様は、絶対にウソは言わないです。わ、わたしたちが行ったら、逆にトーマ様を危険にするかもしれないのです」
小さな少女の必死の訴えに、腰を上げかけた二人は、顔を見合わせて再び座り込んだ。
「分かった、もうしばらく待つとしよう。だが、あと十分待ってもトーマが帰ってこなければ、探しに行く。それでいいな?」
ゴウゼン隊長の言葉に、ポピィは口を引き結んだまま、こくりと頷いた。
だが、長く待つ必要はなかった。それから二分ほど過ぎた時、ポピィは、ハッと何かに気づいて立ち上がったかと思うと、脱兎のごとき勢いで階段を駆け下りていった。やがて、その階段の下から現れたのは、ポピィに抱きかかえられながら、ふらつく足取りで苦笑いを浮かべるトーマだった。
《トーマ視点》
(いやあ、さすがに疲れましたね。やることは簡単だったけど、魔力の消耗が半端ない……)
俺は、ポピィにまめまめしく世話されながら、階段脇の地面に体を横たえていた。ゴウゼン隊長とルッドさんが、さっきから俺の顔を覗き込みながら、事の経過を詳しく聞きたがっていたが、俺の使った魔法を詳しく話す気力が今はない。
「ええっと、まあ、簡単に言うと、三匹とも気絶させて、焼き殺した、といった感じです」
俺の適当な説明に、当然ながら二人は納得せず、どうやって気絶させたのか、どんな魔法を使ったのか、と矢継ぎ早に質問してきたが、ポピィから「今はトーマ様を休ませてあげてください」と一喝され、すごすごと俺のそばから離れていった。
それからどのくらい経ったのか、俺はちらちらと揺れる炎を見ながら、しだいに意識がはっきりするのを感じていた。どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。
「あっ、トーマ様、大丈夫ですか?」
ポピィの心配そうな顔が、覗き込むようにして尋ねた。
「ああ、もう大丈夫だ……俺、どれくらい寝ていたんだ?」
俺は起き上がりながらポピィに訊いた。
「ええっと、二十分くらいだと思うです」
ポピィは、答えながら、焚火の側に置いてある鍋からスープらしきものをカップに注いで俺に手渡した。
俺はそれを受け取ってから、焚火の向こうに座ってこちらを見ている二人の獣人騎士に目を向けた。
「ご心配をおかけしました。これをいただいたら、すぐに出発しましょう」
「ああ、無事で何よりだ。だが、無理をする必要はない。お前が寝ている間に、我々二人で五階層を調べてきた。信じられないが、確かにキングバイパーの姿はなかった。後は、六階層のゴーレムを倒すだけだ。ここで、一晩ゆっくり体を休めて、明日六階層に挑戦しようと、話していたところだ」
ゴウゼン隊長の言葉はありがたかったが、俺は首を振って言った。
「いや、このダンジョンは、おそらく六階では終わりません。まだ、下があると思います。それと、ダンジョンの魔物は、復活します。どのくらいの周期で復活するのかは、分かりませんが、魔物を完全に消滅させるには、このダンジョンの《コア》を破壊しなければなりません。時間をかけすぎると、バイパーも復活するかもしれません」
俺の言葉に、二人は驚愕の表情で唸り声を上げた。
「なんと、そんなことまで知っていたのか?我々は、ここに来る前に、王都の賢者と名高いお方から、ダンジョンの知識を教わったのだが、今、お前が言ったことを、そのまま賢者様も言っておられた……いったい、どこからそんな知識を?」
(いや、まあ、ナビさんからの受け売りですけどね)
「男爵殿、今はそれを問うてもせんなきこと。それより、トーマの言う通り、魔物が復活する前に、このダンジョンの最奥を見極め、対策を練ることが肝要かと」
(おお、ルッドさん、良い事言うねえ…古めかしい言い回しで分かりにくかったけど)
「うむ、そうであるな。よし、では出発しよう」
ゴウゼン隊長も頷いて立ち上がった。
俺たちは、焚火を消してから、再びポピィを先頭に五階層への階段を下りて行った。
♢♢♢
なるほど、これがゴーレムって奴か。初めて見るが、本当に手足の関節が謎の力でくっついているんだな。
六階層は、固い外装を持つ魔物がいろいろ登場してきた。先日戦ったハリネズミの魔物、ロックヘッジホグや岩そのものが生きているように転がり、跳んで襲ってくる、ポッドロック、そして、おなじみのガーゴイルなどだ。
ここで活躍したのは、俺とゴウゼン隊長だ。ゴウゼン隊長は盾役で敵の攻撃を防ぎながら、シールドバッシュで、結構な数の敵を減らしてくれた。
剣の名手のルッドさんも、ポピィも、この階層は相性が悪い敵ばかりで、活躍はまたの機会でということになった。
そして、いよいよ、この階層のフロアーボスのおでましだ。
全身が銀色に輝く金属の立方体や直方体でできている。漫画やアニメでおなじみの、あのゴーレムである。
(なあ、ナビ、あいつどのくらいの温度で溶けると思う?)
『あのメタルの成分は、おそらくミスリルと鉄の合金だと思われます。そうなると、融点は約二千度かと』
(二千度かあ、ファイヤー系の魔法じゃ通じなさそうだな。うーん、となると……なあ、あいつも魔物なら魔石を壊すか、抜き取れば倒れるはずだよな?)
『はい。魔力感知で調べましたが、胸の奥の中心部に魔石があります』
(うわあ、いよいよ打つ手に困ったぞ……どうするかなぁ)
俺が頭を抱えて考え込むと、ナビが、何やらためらいがちにこう言った。
『あのう、マスター……私の本来の役目は、マスターがご自分の力で答えを見出すのをサポートすることですが、今は緊急の場面ですので、答えから先に申します……』
(お、おう、頭の悪い主人で、すまねえ)
『……マスターはこの数か月で、かなり土属性魔法を使い、スキルを高められました。〈調合〉で精密な合金も作られました。実は、〈調合〉の反対は〈分離〉というものです。つまり、〈分離〉のスキルを使えば……』
(待ったっ!それ以上言わなくていい!うおおお、ありがとうな、ナビ、よし、やってやるぜ)
「ト、トーマ様、大丈夫ですか?」
さっきから、俺が一人で百面相のようなことをしているのを、心配したポピィが問いかけた。
「ああ、大丈夫だ。さて、ポピィ、ゴウゼン隊長、ルッドさん、しばらく安全なところで見ていてください。ちょっと、行ってきます」
「えっ、お、おい、トーマ」
「トーマ様っ」
三人が驚きの声を上げている間に、俺はメタルゴーレムの近くまで走り去っていた。
メタルゴーレムは、俺が排除すべき敵と認識したのだろう、二、三歩前に進むと、腕を両側に突き出して上に曲げた。つまり、ボディビルダーが自分の筋肉を自慢して見せる、あのポーズをとったのである。
(おい、お前、誰にアピールしてんだよ。ていうか、お前、目がないのにどうやって見てるんだ?)
突っ込みを入れつつ、俺は、ゴーレムを〈鑑定〉しながら、手に持ったメイスに魔力を流し込んだ。
『ゴーレムは、魔力感知で周囲を認識しています』
(ああ、なるほど…つまり、赤外線センサーの画面のような見え方か)
********************
【名前】 *** Lv55
【種族】 メタル・ゴーレム
【性別】 ***
【年齢】 800歳以上(推定)
【体力】 1288
【物理力】893
【魔力】 75
【知力】 85
【敏捷性】76
【器用さ】90
【運】 65
【ギフト】***
【称号】
【スキル】
〈強化系〉
〈攻撃系〉打撃Rnk10 威圧Rnk10
〈防御系〉物理耐性Rnk10 魔法耐性Rnk8
毒耐性Rnk10 魔力感知Rnk10
〈その他〉※再生Rnk10 ※魔石に依存
********************
(は、〈再生〉? 何だ、そりゃ? まさか、やっつけても、元に戻るのか?)
『はい。非常に特殊なスキルですが、確かに存在します。ただし、魔石に依存する、とありますから、魔石を体から切り離せば、再生できなくなると思われます』
(なるほど、素早さが勝負の分かれ目、というわけね。オーケー)
五階層へ下りる階段の近くに、心配そうな顔で座り込んだ三人の姿があった。何度か、ズシーンという巨体が倒れるような音が、三人が座った辺りまで聞こえてきた。だが、すでに二十分が過ぎようとしていたが、トーマは姿を見せていなかった。
やがて、無言に耐えられなくなったゴウゼン男爵が、こう切り出した。
「やはり、ここにじっとしていても埒(らち)は開かない。どんな結果になったにしろ、見に行くしかあるまい」
「うむ、そうですね」
ルッド騎士爵も、それに同意した。
「ま、待ってくださいです……」
二人から少し離れて、階段の方をじっと見つめていたポピィが、涙ぐんだ目を二人に向けて叫んだ。
「……トーマ様は、無理なら、あきらめて帰ってくると言いました。トーマ様は、絶対にウソは言わないです。わ、わたしたちが行ったら、逆にトーマ様を危険にするかもしれないのです」
小さな少女の必死の訴えに、腰を上げかけた二人は、顔を見合わせて再び座り込んだ。
「分かった、もうしばらく待つとしよう。だが、あと十分待ってもトーマが帰ってこなければ、探しに行く。それでいいな?」
ゴウゼン隊長の言葉に、ポピィは口を引き結んだまま、こくりと頷いた。
だが、長く待つ必要はなかった。それから二分ほど過ぎた時、ポピィは、ハッと何かに気づいて立ち上がったかと思うと、脱兎のごとき勢いで階段を駆け下りていった。やがて、その階段の下から現れたのは、ポピィに抱きかかえられながら、ふらつく足取りで苦笑いを浮かべるトーマだった。
《トーマ視点》
(いやあ、さすがに疲れましたね。やることは簡単だったけど、魔力の消耗が半端ない……)
俺は、ポピィにまめまめしく世話されながら、階段脇の地面に体を横たえていた。ゴウゼン隊長とルッドさんが、さっきから俺の顔を覗き込みながら、事の経過を詳しく聞きたがっていたが、俺の使った魔法を詳しく話す気力が今はない。
「ええっと、まあ、簡単に言うと、三匹とも気絶させて、焼き殺した、といった感じです」
俺の適当な説明に、当然ながら二人は納得せず、どうやって気絶させたのか、どんな魔法を使ったのか、と矢継ぎ早に質問してきたが、ポピィから「今はトーマ様を休ませてあげてください」と一喝され、すごすごと俺のそばから離れていった。
それからどのくらい経ったのか、俺はちらちらと揺れる炎を見ながら、しだいに意識がはっきりするのを感じていた。どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。
「あっ、トーマ様、大丈夫ですか?」
ポピィの心配そうな顔が、覗き込むようにして尋ねた。
「ああ、もう大丈夫だ……俺、どれくらい寝ていたんだ?」
俺は起き上がりながらポピィに訊いた。
「ええっと、二十分くらいだと思うです」
ポピィは、答えながら、焚火の側に置いてある鍋からスープらしきものをカップに注いで俺に手渡した。
俺はそれを受け取ってから、焚火の向こうに座ってこちらを見ている二人の獣人騎士に目を向けた。
「ご心配をおかけしました。これをいただいたら、すぐに出発しましょう」
「ああ、無事で何よりだ。だが、無理をする必要はない。お前が寝ている間に、我々二人で五階層を調べてきた。信じられないが、確かにキングバイパーの姿はなかった。後は、六階層のゴーレムを倒すだけだ。ここで、一晩ゆっくり体を休めて、明日六階層に挑戦しようと、話していたところだ」
ゴウゼン隊長の言葉はありがたかったが、俺は首を振って言った。
「いや、このダンジョンは、おそらく六階では終わりません。まだ、下があると思います。それと、ダンジョンの魔物は、復活します。どのくらいの周期で復活するのかは、分かりませんが、魔物を完全に消滅させるには、このダンジョンの《コア》を破壊しなければなりません。時間をかけすぎると、バイパーも復活するかもしれません」
俺の言葉に、二人は驚愕の表情で唸り声を上げた。
「なんと、そんなことまで知っていたのか?我々は、ここに来る前に、王都の賢者と名高いお方から、ダンジョンの知識を教わったのだが、今、お前が言ったことを、そのまま賢者様も言っておられた……いったい、どこからそんな知識を?」
(いや、まあ、ナビさんからの受け売りですけどね)
「男爵殿、今はそれを問うてもせんなきこと。それより、トーマの言う通り、魔物が復活する前に、このダンジョンの最奥を見極め、対策を練ることが肝要かと」
(おお、ルッドさん、良い事言うねえ…古めかしい言い回しで分かりにくかったけど)
「うむ、そうであるな。よし、では出発しよう」
ゴウゼン隊長も頷いて立ち上がった。
俺たちは、焚火を消してから、再びポピィを先頭に五階層への階段を下りて行った。
♢♢♢
なるほど、これがゴーレムって奴か。初めて見るが、本当に手足の関節が謎の力でくっついているんだな。
六階層は、固い外装を持つ魔物がいろいろ登場してきた。先日戦ったハリネズミの魔物、ロックヘッジホグや岩そのものが生きているように転がり、跳んで襲ってくる、ポッドロック、そして、おなじみのガーゴイルなどだ。
ここで活躍したのは、俺とゴウゼン隊長だ。ゴウゼン隊長は盾役で敵の攻撃を防ぎながら、シールドバッシュで、結構な数の敵を減らしてくれた。
剣の名手のルッドさんも、ポピィも、この階層は相性が悪い敵ばかりで、活躍はまたの機会でということになった。
そして、いよいよ、この階層のフロアーボスのおでましだ。
全身が銀色に輝く金属の立方体や直方体でできている。漫画やアニメでおなじみの、あのゴーレムである。
(なあ、ナビ、あいつどのくらいの温度で溶けると思う?)
『あのメタルの成分は、おそらくミスリルと鉄の合金だと思われます。そうなると、融点は約二千度かと』
(二千度かあ、ファイヤー系の魔法じゃ通じなさそうだな。うーん、となると……なあ、あいつも魔物なら魔石を壊すか、抜き取れば倒れるはずだよな?)
『はい。魔力感知で調べましたが、胸の奥の中心部に魔石があります』
(うわあ、いよいよ打つ手に困ったぞ……どうするかなぁ)
俺が頭を抱えて考え込むと、ナビが、何やらためらいがちにこう言った。
『あのう、マスター……私の本来の役目は、マスターがご自分の力で答えを見出すのをサポートすることですが、今は緊急の場面ですので、答えから先に申します……』
(お、おう、頭の悪い主人で、すまねえ)
『……マスターはこの数か月で、かなり土属性魔法を使い、スキルを高められました。〈調合〉で精密な合金も作られました。実は、〈調合〉の反対は〈分離〉というものです。つまり、〈分離〉のスキルを使えば……』
(待ったっ!それ以上言わなくていい!うおおお、ありがとうな、ナビ、よし、やってやるぜ)
「ト、トーマ様、大丈夫ですか?」
さっきから、俺が一人で百面相のようなことをしているのを、心配したポピィが問いかけた。
「ああ、大丈夫だ。さて、ポピィ、ゴウゼン隊長、ルッドさん、しばらく安全なところで見ていてください。ちょっと、行ってきます」
「えっ、お、おい、トーマ」
「トーマ様っ」
三人が驚きの声を上げている間に、俺はメタルゴーレムの近くまで走り去っていた。
メタルゴーレムは、俺が排除すべき敵と認識したのだろう、二、三歩前に進むと、腕を両側に突き出して上に曲げた。つまり、ボディビルダーが自分の筋肉を自慢して見せる、あのポーズをとったのである。
(おい、お前、誰にアピールしてんだよ。ていうか、お前、目がないのにどうやって見てるんだ?)
突っ込みを入れつつ、俺は、ゴーレムを〈鑑定〉しながら、手に持ったメイスに魔力を流し込んだ。
『ゴーレムは、魔力感知で周囲を認識しています』
(ああ、なるほど…つまり、赤外線センサーの画面のような見え方か)
********************
【名前】 *** Lv55
【種族】 メタル・ゴーレム
【性別】 ***
【年齢】 800歳以上(推定)
【体力】 1288
【物理力】893
【魔力】 75
【知力】 85
【敏捷性】76
【器用さ】90
【運】 65
【ギフト】***
【称号】
【スキル】
〈強化系〉
〈攻撃系〉打撃Rnk10 威圧Rnk10
〈防御系〉物理耐性Rnk10 魔法耐性Rnk8
毒耐性Rnk10 魔力感知Rnk10
〈その他〉※再生Rnk10 ※魔石に依存
********************
(は、〈再生〉? 何だ、そりゃ? まさか、やっつけても、元に戻るのか?)
『はい。非常に特殊なスキルですが、確かに存在します。ただし、魔石に依存する、とありますから、魔石を体から切り離せば、再生できなくなると思われます』
(なるほど、素早さが勝負の分かれ目、というわけね。オーケー)
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