少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei

文字の大きさ
32 / 88

32 フロアーボスとの死闘

しおりを挟む
「ポピィ、ちょっといいか?」
 俺は先頭を歩くポピィに近づいて、小さな声で言った。

「はいです」
 ポピィは立ち止まったが、俺は歩くように促して、並んで歩き出した。

「次の蛇の魔物と戦う時、俺が魔法を発動するまでの間、そいつの動きを止めてほしいんだ。だから、その、闇魔法の〈睡眠〉で、そいつを眠らせてくれないか?」

 俺の言葉に、ポピィは一瞬、迷うように目を逸らしたが、すぐに俺の方を真っすぐに見て頷いた。
「分かりました。トーマ様のお役に立てるなら、やるですっ!」

 俺は一つポピィの肩をポンと叩いてから、元の位置に戻った。

 それから約五分後、通路が右に折れている場所の手前で、ポピィが立ち止まった。
「この先に、大きな魔力反応があるです」

「ああ、俺も感知した。間違いない、キングバイパーだな。じゃあ、隊長、ルッドさん、さっきの打ち合わせ通りで」

「うむ、分かった。気をつけるんだぞ」
 二人は頷くと、立ち止まって距離をとった。

 俺はポピィと一緒に、足音を忍ばせながら、通路を右に曲がって進んだ。

(おお、おお、いるなぁ、でかい図体しやがって……ん、だが、思ったほどステータスは高くないぞ)
 そいつは、全長十五メートルほど、鎌首をもたげると、高さ五メートルはある天井に楽々届くくらいの大きさだった。

*******************

【名前】 *** Lv58
【種族】 ポイズン・バイパー
【性別】 ♂        
【年齢】 800歳以上(推定)      

【体力】 655  
【物理力】416
【魔力】 63  
【知力】 122
【敏捷性】380  
【器用さ】89
【運】  75
【ギフト】***
【称号】 

【スキル】            
〈強化系〉身体強化Rnk10 
〈攻撃系〉噛みつきRnk9 締め付けRnk10  
     猛毒Rnk10 威嚇Rnk8
〈防御系〉物理耐性Rnk10 魔法耐性Rnk9 
毒耐性Rnk10 魔力感知Rnk9 
〈その他〉

********************

「よし、ポピィ、ガード障壁で覆ったから、しばらくは大丈夫だと思うが、奴の攻撃はなるべくかわしながら、〈睡眠〉をかけてみてくれ」

「はい、了解です、行きますっ!」
 ポピィは、ゲルベスト製のナイフを手に、勇躍、巨大毒蛇の前に飛び出していった。

 俺は、ナビの助けを借りながら、蛇の巨体を覆うガード障壁の計算を始める。ただし、魔法をかけるときに動かれると、また、位置の計算をやり直さなければならない。どうか、ポピィの〈睡眠〉がかかりますようにと祈った。しかし、事はそんなに甘くはなかった。

「トーマ様、だめですっ、何度かけても弾かれてしまいます」
 ポピィが、蛇の攻撃をかわしながら、泣きそうな声で叫んだ。

(ああ、そうか……ポピィの闇魔法はランク1だし、奴の魔法耐性はランク9だからな、通じないか。それなら、しかたがない)

「ポピィ、気にするな。こっちに戻って来い」

 俺の声に、ポピィは悔しげな顔で、俺の側に戻って来た。
「ごめんなさいです、トーマ様」

「いや、奴の魔法耐性が上だったというだけさ。まあ、俺がやってみてだめならば、今回はあきらめよう」
 ポピィは悔しそうだったが、しっかりと頷いた。

 シールドで囲んでその中で焼き蛇にする、という当初の計画は実行できなくなったが、それなら真っ向から戦うまでだ。
「さあて……おい、デカブツ、余裕こいていられるのは、今だけだぞ。行くぞっ!」
 俺は気合とともに、一気に魔力を放出して、そいつの顔面にウインドウボムを叩きこんだ。

 ギッ、シャアアアアアアアッ!
 巨大蛇が漏らす息の音が、あたりに響き渡り、猛毒の液が霧となって撒き散らされる。

 俺は慌ててポピィの体をつかんで、口と鼻を袖で塞ぎながら、曲がり角まで走った。そして、ポピィをゴウゼン隊長たちの方へ押しやりながら言った。
「ポピィ、二人を連れて四階へ行ってくれ。俺が、何とか奴を止める」

「えっ、で、でも、トーマ様一人では……」

「俺は大丈夫だ、信じろ。さあ、早く、行け」

 ポピィは今にも泣きそうな顔だったが、小さく頷くと、二人の騎士たちの方へ走っていった。

♢♢♢

 キングバイパー(正確には、ポイズン・バイパーキングか)は、ようやく衝撃から立ち直って、しかし、まだ少しふらつきながら、ゆっくりとこちらに向かって来ていた。
 俺は正面から、奴の前まで歩いて近づいていった。

「おい、デカブツ、俺の魔法が強いか、お前の魔法耐性が強いか、勝負しようぜ」
 俺の声に、そいつは爬虫類特有の金色の目の瞳孔をぎゅっと細くして、怒りが頂点に達した形相を見せ、大きく顎(あぎと)を開いた。そして、シャアアッという威嚇音とともに、頭を振りかぶって、まさに俺の体を一飲みにしようと襲い掛かろうとした途端、そいつは、そのまま頭から地面に倒れこんでしまったのだった。
 ズドドーンッ、という大きな音と地響きが辺りを震わせて響き渡った。

「へへん、俺の勝ちだな」
 口ではそう言ったものの、まだ俺の体は緊張と恐怖に震えていた。体全体にガード障壁は張っていたものの、嚙み砕かれる恐れはあったし、〈麻痺〉の魔法が弾かれる可能性もあった。いざという時は、奴の口の奥に、ファイヤーボムを叩きこんでやるつもりではあったが、まさに命がけの勝負だったのだ。
 
(ナビさんよ、珍しく警告とか、忠告とか何も言わなかったけど、俺を信じていたってことか?)

『呆れて何も言えなかっただけです』

 ナビはそう答えただけだったが、だぶん、いざという時の奥の手を何か隠している、俺はそういう気がした。

 ともあれ、〈麻痺〉が効くことが分かったのは僥倖だった。あとは、この巨体をどう始末するかだが……。

『最も安全な方法は、空間魔法でストレージを作り、その中で焼却することです』

(うん、そうだな。今なら動かないから、位置計算もできる。でも、それはかなり魔力を消耗するんだよなあ。あと、何匹かいるんだろう?魔力切れになりそうだよ)

『でしたら、最初の計画通り、ガード障壁で囲んで焼却しましょう。ただし、注意しないと、毒の成分が煙と一緒に空中に残る可能性がありますから、焼却後に〈キュア〉の魔法で、この辺り一帯を解毒する必要があります』

 どっちも面倒くさいが、どっちの方法が、魔力の消費が少ないかを考えて、後者の方法を選択した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

読んでくださってありがとうございます。
少しでも面白いと思われたら、📣の応援よろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

落ちこぼれの【無属性】魔術師、実は属性そのものを定義する「概念魔法」の創始者だった

風船色
ファンタジー
「魔法とは才能(血筋)ではなく、記述されるべき論理(ロジック)である」 王立魔導学院で「万年最下位」の烙印を押された少年、アリスティア・レイロード。属性至上主義のこの世界で、火すら出せない彼は「無属性のゴミ」と蔑まれ、ついに卒業試験で不合格となり国外追放を言い渡される。 しかし、彼を嘲笑う者たちは知らなかった。アリスティアが、既存の属性魔法など比較にならないほど高次の真理――世界の現象を数式として捉え、前提条件から書き換える『概念魔法(コンセプト・マジック)』の使い手であることを。 追放の道中、彼は石ころに「硬度:無限」の概念を付与し、デコピン一つで武装集団を粉砕。呪われた最果ての森を「快適な居住空間」へと再定義し、封印されていた銀嶺竜の少女・ルナを助手にして、悠々自適な研究生活をスタートさせる。 一方、彼を捨てた王国は、属性魔法が通用しない未知の兵器を操る帝国の侵攻に直面していた。「助けてくれ」と膝をつくかつての同級生や国王たちに対し、アリスティアは冷淡に告げる。 「君たちの誇りは、僕の昼寝より価値があるのか?」 これは、感情に流されない徹底した合理主義者が、己の知的好奇心のために世界の理を再構築していく、痛快な魔導ファンタジー。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...