【完結】未来から来た私がもたらしたもの

ぅ→。

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朝から屯所内はゴタゴタしてる。八月十八日の政変だ。

「私の隊服はどこだ!」
「山南副長」
「何処だと聞いておる!!」

温厚なはずの山南副長でも声を荒らげてる。というか、私に聞かれても私は山南敬助の小姓ではないのだから知らない。私はただの女中だ。

「山南さぁん、これどうぞぉ」
「おお!凛君、ありがとう」

凛ちゃんが山南敬助の隊服を持ってきた。

「何故!私の防備がこれだけなのだ!?」

山南敬助は先陣を斬るというのに防備が足りないと怒りを顕にしてる。

大丈夫。戦にはならないから。

心の中でそう思いながら、成り行きを見守る。

「麗奈」
「一さん」
「行ってくる」
「はい。おかえりお待ちしております」

隊士たちを見送った。

「麗奈ちゃん、これって池田屋事件ですかぁ?」
「違うわ」

この子、歴史をあまり知らないのね。既に公方様より新撰組の名前はもらったが、本来はこの時の働きにより頂くのよね。

「そうですねぇ。芹沢さん、生きてますしぃ。ところで、芹沢さんって何で死ぬのですかぁ?」
「知らないわ」
「ええー。大学出てるのに知らないのぉ?ホントに大学出たのお?」

アメリカの大学で幕末の勉強なんてしないわよ。それに芹沢鴨の死について色々とあり、どれが正しいのかなんて分からない。

分かってるのは近藤派が暗殺したということだけ。

理由は芹沢鴨の所業により松平容保から命令が下ったともあるし、単に近藤派が芹沢派を消して新撰組の実権を握りたかったともある。どれが真実なのか分からない。多分、今いても分からないだろう。本当のことなんて近藤勇と土方歳三くらいしかしらないと思う。

隊士はいなくても仕事はある。私は女中の仕事に励んだ。凛ちゃんは何してるかは知らない。私の邪魔さえしなければそれでいい。

洗濯を終え、お手製のハンドクリームを塗る。

んー。いい匂い。結構、いい出来ね。

「頑張ってますね」

後ろから山崎烝に声を掛けられた。

「お仕事お疲れ様です」
「凛君は昼寝してますよ」
「そうですか?」

勿論、このことは土方副長には報告しますけどねと山崎烝は続けた。彼の監視もあと少しだろう。長州の動きや潜伏先を知るために働くことになる。

「怒らないのですか?あんさんと凛君の扱いの差に」
「私は一さんにさえ分かってもらえれれば、それだけで幸せなのです。他の人にどう思われても構いません」
「健気ですなぁ。あんさんみたいな嫁子をもらった斎藤君が羨ましいですわ」

私みたいな人殺しの女を貰ってくれるなんて一さんぐらいよ。だから、私は一さんのために尽くすの。それしか出来ないから。

それにしても一さんは何でこんな人殺しの私がいいんだろうか?私が男だったら凛ちゃんの方がいいと思う。男には良いところしか見せてないけど、笑顔が似合う明るい子だもの。

私が凛ちゃんより優れてるところは、見た目ぐらいかな?こればっかりは自惚れでなく自信がある。この見た目があったからこそ特殊部隊の一員になって、悪の組織に潜入ってことになったのだから。胸も86のEカップ、ウエスト56、ヒップ78。文句なしの体もしてる。因みにあそこは男が言うには名器らしい。

「仕事が終わったなら別の仕事がありますよ」

別の仕事?

私と凛ちゃんは遊郭に連れていかれた。そこでべっぴんさんにしてもらうようにと山崎烝は告げた。

諜報活動なわけではないし、何のためかな?

訳は分からないけど、着飾る。凛ちゃんは綺麗な着物に大はしゃぎ。

長時間掛けて支度が終わる。

「凛君は近藤局長と土方副長のところに。麗奈君は勿論、斎藤君のところに」

なるほど。帰ってきた隊士たちのために開く宴のためにこんな格好してるのね。

中に入ると凛ちゃんは一目散に土方歳三のところに行く。わざとなのか目の前で転んで土方歳三に抱き止められるというハプニングを起こしてるけど。私は優雅に一さんのもとに行く。

「麗奈、美しいのだが……」

気に入らなかったかしら?

「他の男に見せたくない」

一さんの独占欲に顔がにやけそうになる。私は一さんの横に座りお酌をする。

「天女さん、綺麗ですね~。僕にも注いでください~」

そう言う沖田総司に一さんが酒を注ぐ。

「一君、酷いです~。僕は天女さんのお酒が飲みたいです~」
「麗奈は俺の妻だ」

そう言って一さんは、私の腰に腕を回して抱き寄せた。

「麗奈も飲め」

日本酒は初めてだ。20歳までは飲んではだめ?それは未来の日本の話。特殊部隊にいた私は酒に溺れることがないようにと幼い頃から酒に慣らされてきた。

注いでもらった酒をクイッと飲み干す。

「飲める口なのか?」

一さんが心配そうに聞いてきた。

「それなりに?」

日本酒は飲んだことがないから、分からないが泥酔することはないだろう。一さんも酒に強いのか表情が変わることはない。

「あー!麗奈ちゃん、未成年はお酒飲んだらダメですよぉ」

凛ちゃんが注意してくるが、この時代は未成年は飲んではいけないという決まりはない。だから周りは首を傾げていた。

「凛。お前も飲め」
「20歳未満は飲んではだめなのです」
「何だ?それ」

凛ちゃんは何度も私に禁酒を求めてくるが、私はそれを無視して一さんとお酒を楽しんだ。日本酒は口当たりがよく飲みやすい。ついつい酒が進む。

気が付けば、そこらで屍が沢山出来ていた。

何人かは遊女を奥の部屋へと連れて行ってる。

「沖田さんはそれ以上、飲んだらダメですぅ。体によくないですぅ」
「うるさいですよ~。君に命令されたくありません~」

まだ沖田総司が労咳になると思ってる凛ちゃんは沖田総司の体の心配をする。土方歳三はそんな凛ちゃんを止めない。土方歳三なら知ってるはず、沖田総司が労咳で亡くならないということを。それを凛ちゃんに伝えないのはどうしてなんだろうか?

そこに何か理由でもあるのかな?

私には土方歳三の考えが分からなかった。
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