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あれから一週間
しおりを挟むエリザベスがルシアーノとセイラの逢瀬の盗み聞きした日から一週間が経とうとしていた。
逢瀬から逃げたもののやはり道はわからず、しかし運よくベンチを見つけたため足を休めていた。
すると血相を変えた護衛の女性騎士サラがエリザベスを探し当ててくれた。
歩きすぎてまた痛めて腫れてしまった足を見たサラは青ざめながらエリザベスを横抱きに抱え部屋に帰った。
女性に抱き抱えられ帰るのは流石に恥ずかしかったが
「これからは護衛に一言声をかけてくださいませ。」と手当てをされながら念を押されてエリザベスは反省した。
足を痛めたエリザベスのためにアレクが護衛を女性に変えてくれたのはこういうことが起きた時のためだ。男性騎士に足を見てもらう訳にいかないのだから。
それから一週間、エリザベスは足の痛みを理由にゆっくりしていた。
辺境伯領に来てから短い間にあまりにも色々ありすぎた。
誰にも会わずに少しぼんやりしたかったのだ。
なのに例外が一日だけあった。
アメリアにお茶に誘われたのだ。
足を理由に断りたかったがそうもいかず、護衛のサラに車椅子を押してもらい行ってみれば、アメリアの他にルシアーノと初めて見るご令嬢が席についていた。
聞かずともご令嬢はセイラだと何故だかわかった。
セイラは青みがかった銀髪をしており、瞳はグレー。
先日声だけ聞いた時は気の強そうな声をしていたが、くりっとした黒目がちの目をした柔和な可愛らしい顔立ちをしていた。
今回はセイラがどうしてもエリザベスに紹介して欲しいと折れなかったらしく誘われたらしい。
エリザベスはいろんな意味で居心地の悪い思いをしながらも2人は自己紹介し合った。
セイラはジェンティルダ城から見える海の守りを一手に引き受けるインウダーナ伯爵領のご令嬢で、立派な海軍が有名だ。
北の辺境領とは陸海合同演習を定期的に行っており切っても切れない関係である。
もちろんルシアーノとアレクともセイラは幼い時からの仲なのだ。
ということを熱弁されエリザベスは「まあ」「そうですの」などと言いながら笑顔で相槌を打っていた。ルシアーノの顔は見れなかった。
セイラの熱弁も一区切りだろうかという時、おもむろにルシアーノが立ち上がる。
「もういいだろう」と言うとエリザベスのそばまできた。
(え?)
どうしてエリザベスの元に来たのか。エリザベスが混乱しているといきなり抱き上げられた。
「?!」
声を上げることもできずポカンとしたが、我に返り慌てて周りに目を走らせると皆一様にポカンとしている。
するとエリザベスは護衛のサラが持っている車椅子に座らされ、
部屋に戻るようルシアーノはサラに指示を出した。
あっけにとられていたサラだったがすぐに気を取り直し返事をして車椅子を押して退室した。
扉が閉まる刹那、セイラが弾けたように笑い出し「やるじゃないの!」と言う声が聞こえた。
いくらエリザベスがのんびりしているといっても流石にわかる。
追い出されたのだと。
本当は足は三日ほどで良くなっていた。
でも療養してるといえば誰にも合わなくて済む。
ルシアーノにも。
会えば怒らせ、謝ってばかりの自分にエリザベスはほとほと嫌気がさしていた。
立派な辺境伯夫人には程遠いと思うと泣きたくなった。
でもそろそろ一週間。療養も限界かとエリザベスが思っていた頃だった。
アメリア様の侍女がエリザベスのお見舞いに来たいがいいか、と伝言を持ってきた。
午後の昼下がりお茶の用意ができると、アメリアが花を持ってお見舞いにエリザベスの部屋にきた。
アメリアのお見舞いは二度目だ。
教会で足を捻った次の日が一度目。
そして今回である。
なおアメリアは教会での一件は詳しくは知らないようだった。
ルシアーノは見舞いに来たかと尋ねられ、エリザベスがルシアーノから花をもらったというとアメリアはあからさまにホッとした顔をした。
花は侍女経由でもらったこと、カードはなかったことはエリザベスは黙っておくことにした。
「いい年をした息子を気にかける馬鹿な親とお思いでしょうが、息子は少し女性の扱いがあまりわかっておらず‥」と失礼を侘びつつおおらかな態度を崩さないエリザベスにアメリアは感謝した。
そして今回部屋を訪問したのは見舞いと、城を一週間ほど留守にする。という話だった。
「辺境領の西の方にあるダルタールという町が先日の大雨で川が氾濫し隣のグネスラ領とを結ぶ橋が流されてしまいました。辺境領だけの話ではないためアレクを連れて私も視察に行くことにしました。アレクは状況把握次第帰しますが、私はもう少し話を進めてから帰ります。」
そこまで言うと「少し早いですが」と四角い箱を取り出し机の上に置いた。
「お誕生日おめでとうございます。」
エリザベスはすっかり忘れていた。
明後日が自分の誕生日だったことを。
プレゼントはジュンブリザート領パインダセ地方で取れる高品質のルビー、パインダセルビーで作ったブローチだった。
小ぶりのブローチが2つ。
「控えめなアクセサリーがお好きなようでしたので」
「ええ、その通りです、とても嬉しいですわ!」
エリザベスははずんだ声でお礼を言った。
何よりひっそりたのしむおしゃれが好きな事をアメリアが気付いていたことがうれしかった。
「誕生日当日はシェフに特別なディナーを用意するように申し付けました。ルシアーノと2人になりますが‥」アメリアが言い淀む。
「まあ、素敵な誕生日をありがとうございます。ぜひルシアーノ様とディナーをご一緒させていただきます。」
ルシアーノはきっと嫌がっている。
確信めいた思いに怯みそうになったが、すべて隠してエリザベスはふわりと微笑んだ。
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