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お城案内 ールシアーノー
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「お待たせいたしました、ルシアーノ様。今日はよろしくお願いします。」
ふわりと女神の微笑みを見せるリズ嬢。
何だか背中がチリチリする。何だ?
「いえ、では参りましょうか。」まあいいと俺は貴族の振る舞いをみせる。
母上には、王都育ちの公爵令嬢に辺境の男は怖いだろうから貴族の振る舞いを忘れぬようにと釘を刺された。
アレクには、噂を鵜呑みにするのもよくないがあっさり信用しないでくれよと言われた。
母上にもアレクにも俺は信用なさすぎないか?
「今来たところからこの奥までずっと客間になります」
リズ嬢を案内して城内を歩く。少し後ろをついて来てくれる様子がいじらしく感じる。
まあそのまた後ろを執事のセバスチャンもついて来ているんだが。
「この奥を抜けまして、階段を降りますと図書館になります」とドアを開けた。
「まあ、素晴らしい規模ですね!」
ウチの図書館はなかなかのものだ。
貴重な本も多い。
好きな本を持って行ってもいいと言うと、リズ嬢の顔がパっと華やぐ。
そして興味深そうに本棚を探し始めた。
素直に驚き、喜んでいるように見える。
(思っていたより普通の御令嬢なんじゃないか?)と思うが
アレクのあっさり信用するなの声が頭をよぎる。
と、リズ嬢が本棚の上の方に手を伸ばす。
あれは届かないな。
辺境の学園に通っている時もよく見かけたシチュエーションだ。
本棚は大体令嬢に優しくない。
代わりに取ってやろうと俺はリズ嬢の後ろに立ち、本をとる。
「これですか」
と後ろから彼女を見下ろした。
するとリズ嬢は驚いた様にこちらを振り向くと、ふふと笑みをこぼす。
「ルシアーノ様は軽々と取ってしまわれるのですね。ありがとうございます。」
と本を受けとった。
思わずこぼれた様なリズ嬢の笑顔に大袈裟なほど驚いてしまい、カアッと体が熱くなった。
と同時に今までのご令嬢とは全然違う反応に戸惑った。
がすぐ戸惑いは隠して笑顔を浮かべ後ろに控えていた執事に本を渡した。
「ああ、そろそろいい時間ですね。先ほどの客間に戻りましょうか」
と俺が言うと
リズ嬢が真っ直ぐ俺を見つめ少し首を傾げて瞳だけで「?」を訴えてきた。
心臓が口から出るんじゃないかと言うくらい飛び跳ねた。
熱い。汗まで出てきた。
なんだかいつも通りじゃない、落ち着かない。
振り払うように踵を返しさっさと図書館を出る。
何とか冷静を取り戻しさっき案内した客間の一つに入っていく。
夕暮れ時窓から見える景色は、城に泊まる客人がすべからく褒め称える。
俺達からすれば日常なのでピンと来ないのだが。
正面の窓に行き、シャっとカーテンをひく。
「まあ!なんて素敵な景色でしょう!」
思った以上のリアクションが返ってきて思わず俺は固まってしまった。
何か言葉を返そうと思うのに出てこない。カーテンを持った手がチリチリした。
ふと気がつくとリズ嬢が俺の横に立っていた。俺はカエルのように飛び上がりそうになる。
「あの辺りの街は私が馬車で通った街でしょうか」
リズ嬢が嬉しそうに景色を指さして尋ねてくる。
俺はハッとしてリズ嬢に目線を合わせて腰をかがめた。
「あの辺り、そうですね。そして街の中心でもあります。また行くこともあるでしょう。」
と説明するとリズ嬢は「そうですね」と言いながら窓の外を見つめた。
綺麗だ
夕陽の街を見つめる透き通る深い緑の瞳はキラキラと輝いてまるで宝石がはめ込まれているようだ。
陶器のようになめらかな白い肌が瞳の輝きを際立たせている。
金糸のような美しい髪は神の世界に流れる川のように神々しく光り、リズ嬢の動きに合わせて流れを変えている。
本当に綺麗だ
「ありがとうございます。ルシアーノ様。こんな素敵な景色を見せていただいて。」
俺の目の前で景色を眺めながらリズ嬢が言う。
目の前で?
俺はバッと背筋を伸ばした。
街の説明をしたままリズ嬢の美しさに魅入っていたのか!
カッと顔が熱くなり思わず顔を逸らせた。
よかった、リズ嬢は気づいていない。
「では、そろそろ暗くなってきましたし、戻りましょうか」
誤魔化すように俺がいう。
「はい。ありがとうございました。」
こちらを向き御礼をいうリズ嬢。
何も気付いてない様子にホッとする、と同時に何故か腹も立った。
「ルシアーノ様?」
少し気遣わしげなリズ嬢の声がする。
「本は侍女に部屋に置いておくように指示しました。夕食まではゆっくりしてください。部屋までは執事のセバスチャンに送らせましょう。私は仕事があるのでここで。」
俺は誤魔化すように畳み掛けて話すと素早く部屋を出た。
ふわりと女神の微笑みを見せるリズ嬢。
何だか背中がチリチリする。何だ?
「いえ、では参りましょうか。」まあいいと俺は貴族の振る舞いをみせる。
母上には、王都育ちの公爵令嬢に辺境の男は怖いだろうから貴族の振る舞いを忘れぬようにと釘を刺された。
アレクには、噂を鵜呑みにするのもよくないがあっさり信用しないでくれよと言われた。
母上にもアレクにも俺は信用なさすぎないか?
「今来たところからこの奥までずっと客間になります」
リズ嬢を案内して城内を歩く。少し後ろをついて来てくれる様子がいじらしく感じる。
まあそのまた後ろを執事のセバスチャンもついて来ているんだが。
「この奥を抜けまして、階段を降りますと図書館になります」とドアを開けた。
「まあ、素晴らしい規模ですね!」
ウチの図書館はなかなかのものだ。
貴重な本も多い。
好きな本を持って行ってもいいと言うと、リズ嬢の顔がパっと華やぐ。
そして興味深そうに本棚を探し始めた。
素直に驚き、喜んでいるように見える。
(思っていたより普通の御令嬢なんじゃないか?)と思うが
アレクのあっさり信用するなの声が頭をよぎる。
と、リズ嬢が本棚の上の方に手を伸ばす。
あれは届かないな。
辺境の学園に通っている時もよく見かけたシチュエーションだ。
本棚は大体令嬢に優しくない。
代わりに取ってやろうと俺はリズ嬢の後ろに立ち、本をとる。
「これですか」
と後ろから彼女を見下ろした。
するとリズ嬢は驚いた様にこちらを振り向くと、ふふと笑みをこぼす。
「ルシアーノ様は軽々と取ってしまわれるのですね。ありがとうございます。」
と本を受けとった。
思わずこぼれた様なリズ嬢の笑顔に大袈裟なほど驚いてしまい、カアッと体が熱くなった。
と同時に今までのご令嬢とは全然違う反応に戸惑った。
がすぐ戸惑いは隠して笑顔を浮かべ後ろに控えていた執事に本を渡した。
「ああ、そろそろいい時間ですね。先ほどの客間に戻りましょうか」
と俺が言うと
リズ嬢が真っ直ぐ俺を見つめ少し首を傾げて瞳だけで「?」を訴えてきた。
心臓が口から出るんじゃないかと言うくらい飛び跳ねた。
熱い。汗まで出てきた。
なんだかいつも通りじゃない、落ち着かない。
振り払うように踵を返しさっさと図書館を出る。
何とか冷静を取り戻しさっき案内した客間の一つに入っていく。
夕暮れ時窓から見える景色は、城に泊まる客人がすべからく褒め称える。
俺達からすれば日常なのでピンと来ないのだが。
正面の窓に行き、シャっとカーテンをひく。
「まあ!なんて素敵な景色でしょう!」
思った以上のリアクションが返ってきて思わず俺は固まってしまった。
何か言葉を返そうと思うのに出てこない。カーテンを持った手がチリチリした。
ふと気がつくとリズ嬢が俺の横に立っていた。俺はカエルのように飛び上がりそうになる。
「あの辺りの街は私が馬車で通った街でしょうか」
リズ嬢が嬉しそうに景色を指さして尋ねてくる。
俺はハッとしてリズ嬢に目線を合わせて腰をかがめた。
「あの辺り、そうですね。そして街の中心でもあります。また行くこともあるでしょう。」
と説明するとリズ嬢は「そうですね」と言いながら窓の外を見つめた。
綺麗だ
夕陽の街を見つめる透き通る深い緑の瞳はキラキラと輝いてまるで宝石がはめ込まれているようだ。
陶器のようになめらかな白い肌が瞳の輝きを際立たせている。
金糸のような美しい髪は神の世界に流れる川のように神々しく光り、リズ嬢の動きに合わせて流れを変えている。
本当に綺麗だ
「ありがとうございます。ルシアーノ様。こんな素敵な景色を見せていただいて。」
俺の目の前で景色を眺めながらリズ嬢が言う。
目の前で?
俺はバッと背筋を伸ばした。
街の説明をしたままリズ嬢の美しさに魅入っていたのか!
カッと顔が熱くなり思わず顔を逸らせた。
よかった、リズ嬢は気づいていない。
「では、そろそろ暗くなってきましたし、戻りましょうか」
誤魔化すように俺がいう。
「はい。ありがとうございました。」
こちらを向き御礼をいうリズ嬢。
何も気付いてない様子にホッとする、と同時に何故か腹も立った。
「ルシアーノ様?」
少し気遣わしげなリズ嬢の声がする。
「本は侍女に部屋に置いておくように指示しました。夕食まではゆっくりしてください。部屋までは執事のセバスチャンに送らせましょう。私は仕事があるのでここで。」
俺は誤魔化すように畳み掛けて話すと素早く部屋を出た。
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