39 / 50
ーアメリアー
しおりを挟む
さあどんな悪役令嬢が登場するの。
皆が注目する中、公爵令嬢は馬車から降りてきた。
思わず息を呑む。
この私がたかが17歳の令嬢に釘付けになり動けなくなってしまった。
彼女の動きひとつひとつすべて惹きつけられ目が離せない。
ふらりと横で大きな影が動く。
息子のルカだ。
ハッと我にかえりルカのお尻を気付かれぬようつねった。
ルカもハッとしたように挨拶をしたが心ここにあらずのように見える。
あのルカが。
世間では『話すだけで落ちない女はいない』『無自覚の魔性の男、怖い』なんて囁かれていたが、私はいつか女性で大ポカをするんじゃないかとヒヤヒヤしていた。
まさかそれが今じゃないでしょうね
まだ心ここにあらずのまま応接室のソファーに座っているルカが心配だけれど、公爵家の護衛たちも案内しなければならない。
そして指示を終えて戻ってみればエリザベス嬢1人でお茶を飲んでいた。
ルカは?
しかし気を取り直し
「護衛の方々の帰り支度も整ったようですよ。お見送りなさいますか。」
とエリザベス嬢に声をかけた。
すると少し驚いた顔をしてこちらを見た、かと思うとサーと青ざめてゆく。
「では少し失礼して護衛達を見送って参ります。」
と少し早足に部屋を出ていった。
今更実感した、といった様子だった。
1人になるという事を。
私はゆっくりとソファーに座る。
王族命令が下ってからずっと自分が冷静ではなかったような気がした。
噂を鵜呑みにしてはいけないと言いつつ随分噂に振り回されてはいなかったか。
公爵家から届いた手紙は日程以外気にはしていなかった。
思い起こせば1人で遠い地に娘をやる親心に溢れた手紙ではなかったか。
今目の前にいたのは1人でどこにも行ったことのない、不安でいっぱいの17歳の御令嬢だ。
怒りに身を任せ存在感に飲み込まれ色んな事を見誤るところだった。
噂など関係ない。
悪役令嬢の偏見を取り払ってどんな御令嬢か、少しずつ知っていこう。
そう思っていたのに。
「あら、可愛いわね。尻尾をつけている子供が居るじゃない。」
辺境領の西の方にあるダルタールに向かうためバラルヒルガムの街を通っているところだった。
「可愛いですよね。エリザベス様が孤児院に訪問された時手作りの尻尾をお土産で持って行かれたようですね。孤児院の子供達がすっかり気に入ってしまってずっと付けているそうで。それが教会に訪れた人たちの間で話題になって、教会が同じものを作ってバザーで売り出したところ爆発的に売れたようです。真似する商店も出てきてすっかり子供なら市民も貴族も全員つけてる、と言うくらい人気、と聞きましたよ。なにより自分で作れますしね。」
市井に詳しい私の専属侍女が楽しそうに言った。
「そう、しばらく街を移動していなかったから知らなかったわ。」
感心しながら窓の外を眺めた。街の雰囲気なんてすぐに移り変わる。
と、また別のことが気になった。
「?何か催しでもあるのかしら。」
「どうされましたか。」と侍女が聞き返す。
「若い女性は揃いも揃って同じ格好を。髪型まで揃えているじゃない。」
というと侍女は「ああ!」と顔を輝かせた。
「編み込みポニーテール!流行っているんですよ!耳の後ろの方から編み込むのが何ともオシャレで!そして編み上げブーツにリボンを通してスカーフと髪のリボンと色を揃えるのも流行りなんです!!」と興奮気味に話す。
「私も休日に恥ずかしながらこの格好をしましたよ。確かに若い女性は全員しているのかもしれませんね。」ふふふと楽しそうに笑う。
しかしリボンやスカーフの色こそ人により違うが見事に全員同じ格好である。
一体何があったのだ。
「孤児院にエリザベス様が訪問された時のファッションを孤児院の職員や教会に訪れていた人たちが真似されて、じわじわと人気が出てるようです。先日商店が真似して靴やブラウス、リボンもセットで売り出したら即完売したと話題ですよ。」
城のメイドたちもエリザベス様の髪型を真似ている子多いですしね。
と続けた。
ぞわり、と鳥肌がたつ。
確かに最近城の若い女の子達がずいぶん垢抜けてきたと思っていたが。
しかしまだエリザベス嬢が来て数週間ではないか。
教会に行ったのはいつだったか。
私は気付かぬうちにゴクリとつばを飲み込んでいた。
(第一王子の不始末とはいえ、王家はよくエリザベス嬢を手放したわね。)
今から長らく城を離れなければならないことに背筋が寒くなった。
初恋を拗らせた息子が何事も起こさねばいいが。
もう祈るしかなかった。
皆が注目する中、公爵令嬢は馬車から降りてきた。
思わず息を呑む。
この私がたかが17歳の令嬢に釘付けになり動けなくなってしまった。
彼女の動きひとつひとつすべて惹きつけられ目が離せない。
ふらりと横で大きな影が動く。
息子のルカだ。
ハッと我にかえりルカのお尻を気付かれぬようつねった。
ルカもハッとしたように挨拶をしたが心ここにあらずのように見える。
あのルカが。
世間では『話すだけで落ちない女はいない』『無自覚の魔性の男、怖い』なんて囁かれていたが、私はいつか女性で大ポカをするんじゃないかとヒヤヒヤしていた。
まさかそれが今じゃないでしょうね
まだ心ここにあらずのまま応接室のソファーに座っているルカが心配だけれど、公爵家の護衛たちも案内しなければならない。
そして指示を終えて戻ってみればエリザベス嬢1人でお茶を飲んでいた。
ルカは?
しかし気を取り直し
「護衛の方々の帰り支度も整ったようですよ。お見送りなさいますか。」
とエリザベス嬢に声をかけた。
すると少し驚いた顔をしてこちらを見た、かと思うとサーと青ざめてゆく。
「では少し失礼して護衛達を見送って参ります。」
と少し早足に部屋を出ていった。
今更実感した、といった様子だった。
1人になるという事を。
私はゆっくりとソファーに座る。
王族命令が下ってからずっと自分が冷静ではなかったような気がした。
噂を鵜呑みにしてはいけないと言いつつ随分噂に振り回されてはいなかったか。
公爵家から届いた手紙は日程以外気にはしていなかった。
思い起こせば1人で遠い地に娘をやる親心に溢れた手紙ではなかったか。
今目の前にいたのは1人でどこにも行ったことのない、不安でいっぱいの17歳の御令嬢だ。
怒りに身を任せ存在感に飲み込まれ色んな事を見誤るところだった。
噂など関係ない。
悪役令嬢の偏見を取り払ってどんな御令嬢か、少しずつ知っていこう。
そう思っていたのに。
「あら、可愛いわね。尻尾をつけている子供が居るじゃない。」
辺境領の西の方にあるダルタールに向かうためバラルヒルガムの街を通っているところだった。
「可愛いですよね。エリザベス様が孤児院に訪問された時手作りの尻尾をお土産で持って行かれたようですね。孤児院の子供達がすっかり気に入ってしまってずっと付けているそうで。それが教会に訪れた人たちの間で話題になって、教会が同じものを作ってバザーで売り出したところ爆発的に売れたようです。真似する商店も出てきてすっかり子供なら市民も貴族も全員つけてる、と言うくらい人気、と聞きましたよ。なにより自分で作れますしね。」
市井に詳しい私の専属侍女が楽しそうに言った。
「そう、しばらく街を移動していなかったから知らなかったわ。」
感心しながら窓の外を眺めた。街の雰囲気なんてすぐに移り変わる。
と、また別のことが気になった。
「?何か催しでもあるのかしら。」
「どうされましたか。」と侍女が聞き返す。
「若い女性は揃いも揃って同じ格好を。髪型まで揃えているじゃない。」
というと侍女は「ああ!」と顔を輝かせた。
「編み込みポニーテール!流行っているんですよ!耳の後ろの方から編み込むのが何ともオシャレで!そして編み上げブーツにリボンを通してスカーフと髪のリボンと色を揃えるのも流行りなんです!!」と興奮気味に話す。
「私も休日に恥ずかしながらこの格好をしましたよ。確かに若い女性は全員しているのかもしれませんね。」ふふふと楽しそうに笑う。
しかしリボンやスカーフの色こそ人により違うが見事に全員同じ格好である。
一体何があったのだ。
「孤児院にエリザベス様が訪問された時のファッションを孤児院の職員や教会に訪れていた人たちが真似されて、じわじわと人気が出てるようです。先日商店が真似して靴やブラウス、リボンもセットで売り出したら即完売したと話題ですよ。」
城のメイドたちもエリザベス様の髪型を真似ている子多いですしね。
と続けた。
ぞわり、と鳥肌がたつ。
確かに最近城の若い女の子達がずいぶん垢抜けてきたと思っていたが。
しかしまだエリザベス嬢が来て数週間ではないか。
教会に行ったのはいつだったか。
私は気付かぬうちにゴクリとつばを飲み込んでいた。
(第一王子の不始末とはいえ、王家はよくエリザベス嬢を手放したわね。)
今から長らく城を離れなければならないことに背筋が寒くなった。
初恋を拗らせた息子が何事も起こさねばいいが。
もう祈るしかなかった。
300
あなたにおすすめの小説
【完結】君を迎えに行く
とっくり
恋愛
顔だけは完璧、中身はちょっぴり残念な侯爵子息カインと、
ふんわり掴みどころのない伯爵令嬢サナ。
幼い頃に婚約したふたりは、静かに関係を深めていくはずだった。
けれど、すれ違いと策略により、婚約は解消されてしまう。
その別れが、恋に鈍いカインを少しずつ変えていく。
やがて彼は気づく。
あの笑顔の奥に、サナが隠していた“本当の想い”に――。
これは、不器用なふたりが、
遠回りの先で見つけた“本当の気持ち”を迎えに行く物語
奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
◇レジーナブックスより書籍発売中です!
本当にありがとうございます!
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
拝啓、婚約者様。婚約破棄していただきありがとうございます〜破棄を破棄?ご冗談は顔だけにしてください〜
みおな
恋愛
子爵令嬢のミリム・アデラインは、ある日婚約者の侯爵令息のランドル・デルモンドから婚約破棄をされた。
この婚約の意味も理解せずに、地味で陰気で身分も低いミリムを馬鹿にする婚約者にうんざりしていたミリムは、大喜びで婚約破棄を受け入れる。
婚約破棄されました。
まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。
本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。
ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。
習作なので短めの話となります。
恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。
ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。
Copyright©︎2020-まるねこ
婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?
【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】
暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」
高らかに宣言された婚約破棄の言葉。
ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。
でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか?
*********
以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。
内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる