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どうして ーブリジットー
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君が好きだからだ。
ゆっくり、しっかり、ブリジットが聞き逃す事ができない様に告げられる。
ブリジットはさっきまでの沸騰した頭が嘘のようにするすると冷めていくのを感じていた。
(タチの悪い悪戯だわ。)
取り乱しているブリジットをみて面白がっているのか。
しかしそんな冗談に付き合う気はない。
アベルに腕を掴んでいる手を離すように求めた。
離してもらえないならガネット夫人達に助けを求め、二度と会わないようにしてもらおうと思っていた。
こんな悪ふざけを続けるならこちらも誠実である必要はない。
しかしブリジットの予想に反してアベルはあっさり手を離す。
そして諦めた様な表情を浮かべると「帰る前にひとつだけ」と切り出した。
そうして差し出された手を見て、ブリジットは息を呑んだ。
どうして……
体は強張り動く事ができない。
「君に持っていてほしい。」
そう言って手のひらにあったのは刺繍の入った青いリボンだった。
「まだ会ったことのない君にきっと似合うだろうと思って選んだ。」
離れに置いて行ったはずだった。
誰かが見つけたら捨ててくれるだろうと。
どうしてそれをアベルが持ってくるのだ。
アベルは優しくブリジットの髪を一房取る。
リボンを結ぶと彼女を見て眩しそうに笑った。
「やっぱり似合う。」
ブリジットの背筋をビリビリと何かが這い上がって来た。
髪の毛が逆立つ。
ドン!!
そう感じた瞬間ブリジットはアベルを思い切り突き飛ばした。
悔しいことにびくともしない。
アベルはただ瞠目してブリジットを見ていた。
「どうして!あなたがっ……」
言葉に詰まる。
どうしてまたこんなものを握らせるのだ。
理不尽な思いがした。
だって……だって……!!
ブリジットは自分を奮い立たせる。
髪に結ばれたリボンを勢いのままむしり取った。
「あなたがっ!私にっ……!!」
アベルにリボンを叩きつけてやろうと大きく手を振りかぶる。
しかしその後が続かない。
投げつける事も手を下ろす事も出来ずぎゅうっとリボンを強く握りしめた。
「どうして…………!」
どうしても手放す事ができない。
震えながら精一杯、つまりそうな言葉を絞り出す。
「……言ったでしょう!!私にっ……!私をっ……!」
支離滅裂のような言葉。
でも止まらない。
「…………愛する事は…………ないって………………」
言った途端大粒の涙が溢れた。
一度溢れ出すととめどなく溢れてくる。
「う……」
こんな情けない涙を流したくなかった。
「す……すまない……」
謝られたい訳でもない。
アベルがブリジットに向かって手を伸ばした。
ブリジットは無言で勢いよくその手を振り払った。
「本当に……すまなかった……」
それでもアベルはブリジットに歩み寄ることをやめない。
ブリジットはアベルを押し返す。
しかしやすやすとブリジットはアベルの腕に閉じ込められてしまった。
「すまない、ブリジット。すまない……」
ドン、とアベルの胸を叩く。
しかし抱きしめられるとそれすら敵わなくなった。
「許してほしい……」
囁くようなアベルの懇願がブリジットの耳元で響く。
「愛する事はないなんて言ったんだ……信じられない……」
遠くでデイビットが呟いた。
ゆっくり、しっかり、ブリジットが聞き逃す事ができない様に告げられる。
ブリジットはさっきまでの沸騰した頭が嘘のようにするすると冷めていくのを感じていた。
(タチの悪い悪戯だわ。)
取り乱しているブリジットをみて面白がっているのか。
しかしそんな冗談に付き合う気はない。
アベルに腕を掴んでいる手を離すように求めた。
離してもらえないならガネット夫人達に助けを求め、二度と会わないようにしてもらおうと思っていた。
こんな悪ふざけを続けるならこちらも誠実である必要はない。
しかしブリジットの予想に反してアベルはあっさり手を離す。
そして諦めた様な表情を浮かべると「帰る前にひとつだけ」と切り出した。
そうして差し出された手を見て、ブリジットは息を呑んだ。
どうして……
体は強張り動く事ができない。
「君に持っていてほしい。」
そう言って手のひらにあったのは刺繍の入った青いリボンだった。
「まだ会ったことのない君にきっと似合うだろうと思って選んだ。」
離れに置いて行ったはずだった。
誰かが見つけたら捨ててくれるだろうと。
どうしてそれをアベルが持ってくるのだ。
アベルは優しくブリジットの髪を一房取る。
リボンを結ぶと彼女を見て眩しそうに笑った。
「やっぱり似合う。」
ブリジットの背筋をビリビリと何かが這い上がって来た。
髪の毛が逆立つ。
ドン!!
そう感じた瞬間ブリジットはアベルを思い切り突き飛ばした。
悔しいことにびくともしない。
アベルはただ瞠目してブリジットを見ていた。
「どうして!あなたがっ……」
言葉に詰まる。
どうしてまたこんなものを握らせるのだ。
理不尽な思いがした。
だって……だって……!!
ブリジットは自分を奮い立たせる。
髪に結ばれたリボンを勢いのままむしり取った。
「あなたがっ!私にっ……!!」
アベルにリボンを叩きつけてやろうと大きく手を振りかぶる。
しかしその後が続かない。
投げつける事も手を下ろす事も出来ずぎゅうっとリボンを強く握りしめた。
「どうして…………!」
どうしても手放す事ができない。
震えながら精一杯、つまりそうな言葉を絞り出す。
「……言ったでしょう!!私にっ……!私をっ……!」
支離滅裂のような言葉。
でも止まらない。
「…………愛する事は…………ないって………………」
言った途端大粒の涙が溢れた。
一度溢れ出すととめどなく溢れてくる。
「う……」
こんな情けない涙を流したくなかった。
「す……すまない……」
謝られたい訳でもない。
アベルがブリジットに向かって手を伸ばした。
ブリジットは無言で勢いよくその手を振り払った。
「本当に……すまなかった……」
それでもアベルはブリジットに歩み寄ることをやめない。
ブリジットはアベルを押し返す。
しかしやすやすとブリジットはアベルの腕に閉じ込められてしまった。
「すまない、ブリジット。すまない……」
ドン、とアベルの胸を叩く。
しかし抱きしめられるとそれすら敵わなくなった。
「許してほしい……」
囁くようなアベルの懇願がブリジットの耳元で響く。
「愛する事はないなんて言ったんだ……信じられない……」
遠くでデイビットが呟いた。
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