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第13話「公然の秘密と、口には出せない忠誠」
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政務会議の終了直後、イツキは書類をまとめながら気づいた。
誰かの視線が、ずっとこちらを向いている。
(……王子)
エランディス王国第一王子、クラウス・エランディス。
中肉中背、やや気弱そうな面立ち。貴族女子たちの間では“優しくて誠実”が定番の評価らしい。
――すっかり忘れていたが、私を“断罪”した本人である。
(……よく来たわね)
イツキはため息を堪えながら、手元の資料を整える。
「そこの……イツキ嬢」
声をかけられた。
「お話がある。……よろしければ、庭園で」
(まさかとは思うけど……いや、まさか、ね)
⸻
庭園。午後の光が柔らかく差し込む中、クラウス王子は落ち着かない様子で手を組んでいた。
イツキが無言で立ち尽くすと、王子は少し顔を赤らめて言った。
「私は……君のような、聡明で、芯のある女性を初めて見た。もしよければ……その……私の傍に――」
「……つまり、“お飾りではない”伴侶をお求めということでしょうか?」
イツキの問いに、王子は一瞬黙り、そして頷いた。
「そ、そうだ。君なら、王家をともに支えてくれると……」
⸻
イツキは、ほんの数秒、黙った。
「お断りします」
あまりにあっさりとした一言に、王子が瞬きを繰り返す。
「な、なぜだ!」
「理由は明確です。まず私は王家の者ではありませんし、身分的にも不釣り合いです」
「そ、そんなことは……!」
「それに――IQが10ほど下がった状態で、結婚の話をされても、現実的に考えにくいですね」
「……え?」
「さきほどの告白のようなもの、会話の文脈に合致しない感情表現は、交渉的観点からも非常に非効率です。つまり――脈絡がない」
王子の顔が、見る見るうちに真っ赤になっていく。
「そ、そこまで言う必要は……!」
「むしろ、これ以上言わないことが“思いやり”では?」
その笑みは冷たく、淡々としていた。
⸻
【ユージン】
「……刺したな、今。言葉で、きれいに。しかも心臓」
王子にちょっと同情しながらも、内心ガッツポーズ。
やっぱりこの女、最高に面倒で最高に面白い。
⸻
【レオン】
「また今日も容赦なかった」
それなのに、なぜかほっとしている自分がいる。
“この人は、誰の機嫌も取らない”――それが、何より信頼できる。
⸻
王子はふらつきながら立ち去っていった。
その背中を、イツキは一度も振り返らなかった。
⸻
夜。イツキが屋敷に戻ると、ノアが笑顔で迎えてきた。
「おかえりなさいませっ!」
「……ただいま」
少し疲れた声で返すと、ノアが小首を傾げた。
「今日……あの、王子様、来てましたよね?」
「……ええ、まあ」
「もう来ないんですか?」
「……たぶん、二度と来ないでしょうね」
「そっか……なんか、緊張してたみたいなのに、最後ぜんぜん笑わなくなっちゃって……」
イツキ(思考停止):「……そりゃ、笑えないでしょうよ」
誰かの視線が、ずっとこちらを向いている。
(……王子)
エランディス王国第一王子、クラウス・エランディス。
中肉中背、やや気弱そうな面立ち。貴族女子たちの間では“優しくて誠実”が定番の評価らしい。
――すっかり忘れていたが、私を“断罪”した本人である。
(……よく来たわね)
イツキはため息を堪えながら、手元の資料を整える。
「そこの……イツキ嬢」
声をかけられた。
「お話がある。……よろしければ、庭園で」
(まさかとは思うけど……いや、まさか、ね)
⸻
庭園。午後の光が柔らかく差し込む中、クラウス王子は落ち着かない様子で手を組んでいた。
イツキが無言で立ち尽くすと、王子は少し顔を赤らめて言った。
「私は……君のような、聡明で、芯のある女性を初めて見た。もしよければ……その……私の傍に――」
「……つまり、“お飾りではない”伴侶をお求めということでしょうか?」
イツキの問いに、王子は一瞬黙り、そして頷いた。
「そ、そうだ。君なら、王家をともに支えてくれると……」
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イツキは、ほんの数秒、黙った。
「お断りします」
あまりにあっさりとした一言に、王子が瞬きを繰り返す。
「な、なぜだ!」
「理由は明確です。まず私は王家の者ではありませんし、身分的にも不釣り合いです」
「そ、そんなことは……!」
「それに――IQが10ほど下がった状態で、結婚の話をされても、現実的に考えにくいですね」
「……え?」
「さきほどの告白のようなもの、会話の文脈に合致しない感情表現は、交渉的観点からも非常に非効率です。つまり――脈絡がない」
王子の顔が、見る見るうちに真っ赤になっていく。
「そ、そこまで言う必要は……!」
「むしろ、これ以上言わないことが“思いやり”では?」
その笑みは冷たく、淡々としていた。
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【ユージン】
「……刺したな、今。言葉で、きれいに。しかも心臓」
王子にちょっと同情しながらも、内心ガッツポーズ。
やっぱりこの女、最高に面倒で最高に面白い。
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【レオン】
「また今日も容赦なかった」
それなのに、なぜかほっとしている自分がいる。
“この人は、誰の機嫌も取らない”――それが、何より信頼できる。
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王子はふらつきながら立ち去っていった。
その背中を、イツキは一度も振り返らなかった。
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夜。イツキが屋敷に戻ると、ノアが笑顔で迎えてきた。
「おかえりなさいませっ!」
「……ただいま」
少し疲れた声で返すと、ノアが小首を傾げた。
「今日……あの、王子様、来てましたよね?」
「……ええ、まあ」
「もう来ないんですか?」
「……たぶん、二度と来ないでしょうね」
「そっか……なんか、緊張してたみたいなのに、最後ぜんぜん笑わなくなっちゃって……」
イツキ(思考停止):「……そりゃ、笑えないでしょうよ」
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