記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。

鷲井戸リミカ

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「どうか自分と結婚してくれ、君に苦労はさせない」
「レスターさま、またそのような御戯れを。レスターさまのご帰還をお待ちのご家族の方が今の話を聞けば、きっと泣いてしまうでしょう」
「記憶のないわたしが帰る場所は、君の元以外どこにもない。わたしは、君だけを愛しているんだ」

 目の前でひざまずき、熱っぽく語る美貌の男。これほどまでに熱烈に愛想ささやかれてぐらつかないでいることは、きっと容易なことではないだろう。けれど、求婚されているメルヴィンがうなずくことはない。だって必死に愛を乞う男は、かつてメルヴィンを捨てた元夫だったのだから。
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