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二度目の裏切り
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あの日、アランがわたしの前から姿を消した後、分厚い雲がさっと晴れて澄み渡る青空が広がったかのように、心が軽くなったのを感じていた。シュロトとの未来だけを信じ、過去の束縛から完全に解き放たれたのだと――。
それから数日が過ぎた頃、ヴァロア侯爵家から届いた美しい招待状。シュロトの自筆で「リリーナ、素晴らしい夜を共に過ごしたい」という一文が添えられていた。その文字を見るだけで胸が高鳴り、返事を書く指に自然と力が入る。もちろん答えは「喜んで」以外にありえなかった。
「リリーナ、すごいじゃない! ヴァロア侯爵家主催の晩餐会なんて、そうそうたる方々がお集まりになる特別な夜よ。それはもう、正式なお披露目も同然じゃなくて?」
ビアンカは自分のことのように目を輝かせ、わたしの肩を揺さぶった。
「お披露目なんてそんな……。でも、もしシュロトがそう考えてくれているのなら、本当に光栄に思うわ」
気がつけば自然に頬が熱を帯びる。あの慈善バザーの日以来、シュロトとの距離はますます縮まり、わたしたちの関係は周囲からも祝福されるようになっていた。アランとの婚約破棄の痛手も、シュロトの温かさがゆっくりと癒してくれた。今度こそ本物の愛を育んでいける――そう信じて疑わなかった。
――まさかあんな形で無残に踏みにじられ、打ち砕かれることになるなんて、この時は夢にも思っていなかった。人生とはどうしてこうも過酷な試練を与えるのだろうか。
---
ヴァロア侯爵家の豪壮な屋敷は無数の灯りに彩られ、オーケストラの優雅なワルツが流れ、華やかな熱気に包まれていた。はやる気持ちを抑えながら、一心にシュロトの姿を探した。約束通り、彼はきっとわたしを待っていてくれるはずだと、期待に胸を膨らませながら。
――そして見てしまった。
ホールの最も華やかな中央、色とりどりの花で飾られたアーチの下で、オペラ座の舞台のスポットライトのような輝きを一身に浴びて立つシュロトの姿を。
けれど、彼の腕でたわやかにエスコートされていたのは――わたしではなかった。
血のように鮮烈な深紅のドレスがその豊かな曲線を惜しげもなく際立たせている。周囲のどんな令嬢の美しさをも霞ませ、全ての注目を独り占めにするかのような、勝利の笑みを浮かべてシュロトの隣に立つ女性。その艶やかな黒髪、計算され尽くした色香の妖しい眼差しを見間違えるはずがない。
――――――――ルネアだった。
あまりの衝撃に世界から色が、音が、温度がすべて遠ざかっていった。周囲のざわめきも甘美なはずの音楽も、全てが無機質なノイズとなって鼓膜を打つ。呼吸の仕方を忘れてしまったかのように息が詰まり、胸が激しく締め付けられる。
どうして……? なぜ、シュロトがルネアと……?
つい先日まで未来を語りかけてくれていたシュロトが? あの夜会でアランとルネアの冷笑から守るために、あれほど毅然と、そして優しく振る舞ってくれたシュロトが?
アランとの関係をこれみよがしに誇示し、嘲りを隠そうともしなかった悪意に満ちたルネアと、なぜ今、あんなにも親密に寄り添って……?
それから数日が過ぎた頃、ヴァロア侯爵家から届いた美しい招待状。シュロトの自筆で「リリーナ、素晴らしい夜を共に過ごしたい」という一文が添えられていた。その文字を見るだけで胸が高鳴り、返事を書く指に自然と力が入る。もちろん答えは「喜んで」以外にありえなかった。
「リリーナ、すごいじゃない! ヴァロア侯爵家主催の晩餐会なんて、そうそうたる方々がお集まりになる特別な夜よ。それはもう、正式なお披露目も同然じゃなくて?」
ビアンカは自分のことのように目を輝かせ、わたしの肩を揺さぶった。
「お披露目なんてそんな……。でも、もしシュロトがそう考えてくれているのなら、本当に光栄に思うわ」
気がつけば自然に頬が熱を帯びる。あの慈善バザーの日以来、シュロトとの距離はますます縮まり、わたしたちの関係は周囲からも祝福されるようになっていた。アランとの婚約破棄の痛手も、シュロトの温かさがゆっくりと癒してくれた。今度こそ本物の愛を育んでいける――そう信じて疑わなかった。
――まさかあんな形で無残に踏みにじられ、打ち砕かれることになるなんて、この時は夢にも思っていなかった。人生とはどうしてこうも過酷な試練を与えるのだろうか。
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ヴァロア侯爵家の豪壮な屋敷は無数の灯りに彩られ、オーケストラの優雅なワルツが流れ、華やかな熱気に包まれていた。はやる気持ちを抑えながら、一心にシュロトの姿を探した。約束通り、彼はきっとわたしを待っていてくれるはずだと、期待に胸を膨らませながら。
――そして見てしまった。
ホールの最も華やかな中央、色とりどりの花で飾られたアーチの下で、オペラ座の舞台のスポットライトのような輝きを一身に浴びて立つシュロトの姿を。
けれど、彼の腕でたわやかにエスコートされていたのは――わたしではなかった。
血のように鮮烈な深紅のドレスがその豊かな曲線を惜しげもなく際立たせている。周囲のどんな令嬢の美しさをも霞ませ、全ての注目を独り占めにするかのような、勝利の笑みを浮かべてシュロトの隣に立つ女性。その艶やかな黒髪、計算され尽くした色香の妖しい眼差しを見間違えるはずがない。
――――――――ルネアだった。
あまりの衝撃に世界から色が、音が、温度がすべて遠ざかっていった。周囲のざわめきも甘美なはずの音楽も、全てが無機質なノイズとなって鼓膜を打つ。呼吸の仕方を忘れてしまったかのように息が詰まり、胸が激しく締め付けられる。
どうして……? なぜ、シュロトがルネアと……?
つい先日まで未来を語りかけてくれていたシュロトが? あの夜会でアランとルネアの冷笑から守るために、あれほど毅然と、そして優しく振る舞ってくれたシュロトが?
アランとの関係をこれみよがしに誇示し、嘲りを隠そうともしなかった悪意に満ちたルネアと、なぜ今、あんなにも親密に寄り添って……?
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