【完結】婚約破棄したのに「愛してる」なんて囁かないで

遠野エン

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二度目の裏切り

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ルネアは人垣の向こうにぼんやりと立ち尽くすわたしに気づくと、自慢げに示すかのようにシュロトに甘えて寄り添った。シュロトはルネアに、あの、わたしだけに向けられると思っていた温もり溢れる笑みを向けている。

誰かこれは何かの間違いだと、単なる悪ふざけだと言って。受け入れたくない光景を前に、ただその場で棒立ちすることしかできなかった。

どれほどの時間が経っただろうか。やっとの思いで硬直した体を動かし、気力を奮い立たせ、足元の震えをなだめながら一歩、また一歩と二人のもとへ歩み寄った。周囲の好奇と軽蔑が入り混じった視線が無数の針のように全身に突き刺さるのがわかる。

「シュロト……」

それだけで精一杯だった。絞り出した声はか細く哀れなほどに頼りなかった。

シュロトはゆっくりとこちらに顔を向けた。その表情はわたしが知っているいつもの温和で優しい彼とはまるで別人だった。冷え冷えとして拒絶の色さえ浮かんでいるような……そんな見知らぬ顔だった。

「ああ、リリーナ。わざわざ来てくれたんだね。ご苦労様」

その声も以前とは違う、よそよそしく、心を閉ざしたような響きを帯びていた。まるで道端で偶然会ったさほど親しくもない知人に話しかけるような、そんな他人行儀な声。

「シュロト、これは……一体どういうこと? ルネアと……どうして……?」

心の奥底では破滅的な予感が暗い渦を巻いていた。

彼は一瞬だけわずかに眉をひそめた後、氷のように冷たい表情に戻り、その瞳から感情というものが綺麗に抜け落ちてしまったように見えた。

「どういうこととは? ご覧の通りだが。何か疑問でもあるのかい? 今宵、僕はこのルネア・フォードを正式なパートナーとしてエスコートしている。それが何か問題でも?」

「……冗談はやめて。招待してくれたのはあなたでしょう? エスコートしてくれると……」

裏切られたという激しい怒りでほとんど叫ぶように言った。

「ああ、そうだったね。招待状は送った」

シュロトはこともなげにあっさりと認めた。

「確かに招待はした。でも、それは社交辞令というもの。まさかあれを本気にしていたの? 君も貴族の娘なら、それくらいの社交上の駆け引きは理解できるだろう?」

「社交辞令……? 駆け引き……?」

言葉を失った。彼の言葉一つ一つが見えない鉄槌となって心を容赦なく打ち砕いていく。あの手紙に込められていたはずの温かい気持ちはどこへ行ってしまったというの。

「あなたは共に素晴らしい夜を過ごしたいと……わたしのための夜だと……そう書いてくれたわ!」

隣でルネアがくすくすという甲高い嘲笑う声が聞こえた。彼女は扇子で口元を隠し、その目はわたしを完膚なきまでに見下していた。

「まあ、リリーナったら。まだシュロト様のあの甘いお言葉を鵜呑みにしていたの? 本当におめでたくて哀れな人ね。男性の言葉なんてその場の雰囲気でいくらでも変わるものよ。それくらい学習なさいませ」

シュロトはそんなルネアの侮辱的な言葉を制するでもなく、むしろ肯定するかのように軽く傾けた。

「リリーナ。もう回りくどい言い方はやめよう。単刀直入に言う。君との関係はもう終わりだ。これきりにする」
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