私は物語の蚊帳の外にされました~継母と連れ子が更正済みなんですが~

福留しゅん

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転①

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 王立学園、それは王都にある国により設立された貴族や一部の秀でた市民に開放された高等教育を受ける場。貴族の子供はそこに三年間通うことが義務付けられています。そこで専門知識を学ぶも良し、同年代と交流を深めるのも良し。様々な生活模様を自分で計画していかねばなりません。

 私とジャネットは一年近く年齢が離れていますが、ちょうど同学年になってしまう年度の区切りとなっていました。なので私はジャネットと共に学園に入学しました。おそろいの制服に身を包んではにかんで喜ぶ妹が可愛かったです。

 学園に通う、それは同時に屋敷での教育の終わりでもあります。
 オルガ先生ともお別れの時期がやってきたのです。
 学園に通ってる間も週何回か継続を、とお願いしたのですが、断られました。

「すでに次の就職先の内定を貰っていますので」
「「そ、そんなぁ」」

 私とジャネットは二人して嘆いたものです。

 授業最終日にはささやかながらお別れ会を催しました。私、ジャネット、ララ母様や先生と親しくなった使用人達が参加してとても賑わいました。夜会で出る豪華な料理や綺羅びやかな装飾はありませんでしたが、思い出に残る楽しい時間が過ごせました。

 名残惜しくもオルガ先生が帰る時間になり、私もジャネットも思わず涙をこぼしてしまいました。先生はハンカチを当てて涙を拭い取ってくれます。その優しさが今日限りかと思ったら更に涙が出てしまいます。

「さて、カミーユさん、ジャネット。学園生活を終えたらいよいよ大人の仲間入りです。どう過ごすかによって人生は左右するでしょう。それほど強い影響を受けると言っても過言ではありません。それを肝に銘じておくように」
「「はい、先生」」
「それと、学園ではとんでもないことに巻き込まれるでしょう。しかし、決して己を見失わず、己の立ち位置を俯瞰的に見つめ、冷静に対処なさい。そうすれば惑わされずに正しい道を歩めます」
「? 分かりました、先生」

 先生が一体何を想定しているのか分かりませんでしたが、先生の言葉を胸に刻みました。先生は軽くはにかむと私とジャネットを抱きしめました。ララ母様もたまにしてくれますが、先生からは何故かお母様のようなぬくもりを感じました。

「よくぞここまで成長しましたね。先生はとても嬉しいです。まるで愛娘が出来たようでしたよ」
「せ、先生ぃ……」
「これからのますますの頑張りと活躍を祈っていますからね」
「うん、うん……!」

 こうしてオルガ先生とはお別れになりました。私もジャネットも先生の姿が見えなくなるまでずっと先生が去っていくのを見送りました。いい加減寒いから中にはいりなさい、とララ母様に叱られてようやく玄関を後にします。

「先生、どうか私達を見守っていて下さい……」

 そう願った私でしたが……後悔してます。
 正直あの時の悲しみと感動を返してほしいです。
 謝ったって許してあげません。美味しいお菓子を送られても駄目ですからね。

「今日から教鞭を振るうことになりましたオルガです。皆さん、よろしく」

 だって次の就職先が学園だなんて聞いてませんでしたよ!

 学園の入学式を終えて割り振られた教室にやってきた私は同じく新入生の方々と交流を深めた後に各々の席に座りました。そしてやってきた担任の教師を目にして、驚きの声が出るのを慌てて口を抑えて止めました。

「詐欺です。私達を弄んで楽しかったですか?」
「人聞きが悪いですね。王都の学び舎に転職する予定だと伝えたじゃないですか」

 どうしてどのように先生が学園の教員になったかは興味ありましたが、それよりもまた先生の授業を受けられることが嬉しくてたまりませんでした。なので怒りもそこそこに留めて純粋に喜ぶとしましょう。

 廊下を歩きながら先生と親睦を深めていたら、向かい側から別の教員が歩いてきました。彼は女子生徒に囲まれながらも爽やかな笑みをこぼして大人の対応をしています。こちらに気づくと男性教員は先生に挨拶してきました。

「オルガ先生、お疲れ様です」
「お疲れ様です、グランシア先生」
「そちらのご令嬢は新入生ですか。もしや家庭教師を務めていらっしゃった家の?」
「ええ、教え子です」

 男性教員の名はグランシア。この方はなんと王国の王弟殿下でいらっしゃいます。

 いかに王立学園だからと普通は王族が職員として務めることはまずありません。王族は内政、外交など王国に欠かせない仕事をしなくてはなりませんから、いかに将来有望な貴族の子供相手とはいえ職員として遊ばせるわけにもいかないのです。

 ただし例外があり、王族の子供が学園生の場合はその限りではありません。王族が職員になることで学園に通う王子王女が己の立場を振りかざして横暴を働くことを防いでいます。過去に何かやらかした愚か者がいたということでしょう。

 私が入学した時点で王立学園には二名の王族が通っています。最上級生の第二王子殿下と新入生の第三王子殿下。王弟殿下にも王子がいらっしゃるので、王弟殿下が学園を離れるのは暫く先になりそうです。

「そうでしたか。ではやるべきこととやらは次の段階に進んだということですか」
「ええ、そうなりますね」
「私も応援していますよ。手伝えることがあれば遠慮なく声をかけて下さい」
「ええ、困ったらそうさせてもらいます」

 王弟殿下と先生は雑談を交わしてすれ違いました。王弟殿下を追いかける先輩方が何故か先生を牽制するような視線を送ってきましたが、先生は気に留めずに歩みを止めませんでした。

「先生は今日が初出勤ではなかったんですか?」
「どうしてそんな質問を?」
「だって王弟殿下と親しげに語り合っていましたから」
「とある事情でジャネットに教えるようになる前に知り合ったんですよ。カミーユさんやジャネットに教えていない日は王弟殿下のお子様に教えてました」

 そんなの聞いてない。そういえば先生はご自分のことを自分からはあんまり喋らないんですよね。質問すればそれなりに答えてくれますけれど、どうも本質的な部分はあえてはぐらかしてくるような印象も覚えましたっけ。

 信頼関係を築けばいつか明かしてくれる、とも期待してましたけれど、ここまでクソボケ……失礼、これはジャネットの言葉でしたね。ここまで秘密主義だとこちらから踏み込まないと駄目なんでしょうね。

「先生。これからもよろしくお願いしますね」
「ええ。この学園生活が有意義になるようになさい」
「その間先生からは色々と聞き出しますから。覚悟しておいてくださいね」
「え、と。お手柔らかに」

 先生はぎこちない笑みをこちらに浮かべてきました。
 珍しい反応ですけど容赦はしませんからね。
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