私は物語の蚊帳の外にされました~継母と連れ子が更正済みなんですが~

福留しゅん

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転②

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 学園生活はいたって平穏でした。

 私は婚約者のリシャール様と更に親密になっていきましたし、ジャネットは最上級生になっていた幼馴染の男子生徒であるパトリックにちょっかいをかけながらも時間を共にしました。

「なんだ、パトリックの好きな人ってジャネット嬢だったのか」
「言い方ぁ! ジャネットは俺の幼馴染で友達だから!」
「彼女に楽させたいからって騎士爵取ろうと頑張ってるんだろう? ジャネット嬢は侯爵令嬢だ。素直にならないとそのうち縁談をまとめられかねないよ」
「うぐっ。も、物事には順序ってもんがあってだな……」

 パトリックは平民階級ですがリシャール様とは学友でして、自然と私とジャネットはリシャール様方二人と過ごすことが多くなりました。気兼ねなく喋り合うジャネットとパトリックの関係が少し羨ましく疎ましく思えたものです。

 リシャール様とは下校の最中に街によって買い食いしたり、休みの日に近くの湖まで散策に出かけたり、休暇中に別荘に行って乗馬などを体験したりと、とても楽しい思い出を作っていきました。

 さて、そんなふうに順調だった私達の学園生活ですが、身近なところで騒動が起こるようになりました。

「リシャール様。あの方々は?」

 リシャール様と同学年であらせられる第二王子殿下とご学友何名かが一人の女子生徒と親しくしているのを目撃しました。知り合いどころか友人関係を通り越し、皆様はその女子生徒を愛しているかのように優しく甘く接していました。

 良く見たらその殿方の中にはクロヴィス様もいるではありませんか。彼はずっと昔に私やジャネットにしたように会話を弾ませて笑い合います。他の殿方がいなければきっと親しい付き合いをしているようにしか見えません。

「ああ、どうも第二王子殿下方はノエミ嬢に心を奪われてしまったらしいね。最近では人目をはばからずにノエミ嬢に接する始末だ」
「第二王子殿下方には婚約者のご令嬢もいらっしゃるのでは?」
「いるよ。けれど殿下達はあくまで友人として親しくしているだけだ、と主張するばかりなのさ。呆れちゃうよね」
「それではあまりに不誠実ではありませんか」

 無論、何人かが王子殿下方を咎めたこともあったそうです。しかし恋に障害はつきもの、とばかりに聞く耳を持たないどころかますます熱を上げる始末。恋に溺れるとはまさに殿下達を指す言葉でして、見ていられませんでした。

 私達は当事者でなかったので一歩退いた目線で見ていられましたが、彼らの婚約者だったご令嬢にとってはたまりません。嘆き悲しむ方、呆れて諦める方、ノエミさんに嫉妬する方など、様々な反応を見せていました。

「カミーユ様はあの方の本質を見抜いていらっしゃったんですね……。わたし、なんて人を見る目が無かったのかしら」

 ある日、そのうちの一人、伯爵家のご令嬢であるマガリー様から私に声をかけられました。そして胸の内を明かしてくださりました。どうやらクロヴィス様を婚約者としたことへの後悔でいっぱいのようです。

 私は浮気を理由に婚約を破棄できないかと尋ねましたが、家同士で決めたことなので簡単には覆せず、当主が前向きで一時の女遊びは目をつむるよう叱られたそうです。嘆かれるマガリー様が他人に思えず、胸が痛みました。

 かと言ってもはや他人である私が口出しできることではなくなっています。困り果てた私はマガリー様を連れて先生に相談することにしました。先生の知恵を借りて打開出来ないかと思ったのです。

「先生。どうにかなりませんか?」
「なりますよ」
「そうですよね。やはりどうにも……何ですって?」
「ですから、なりますよ。要するにクロヴィスさんを婿として迎え入れるのにふさわしくないことを証明すればいいんです」
「どうやって?」
「簡単です。ノエミさんと密接な関係になる程度で婚約破棄に不十分であれば、二人にそれ以上に踏み込ませてしまえばいい」

 先生曰く、男というのは禁断の恋を妨害されれば逆効果で、もっと燃え上るのだそうです。なので一旦距離をおいて素知らぬ顔をしつつ、クロヴィス様が何かしでかさないかを監視させとけばいい、と。一方でクロヴィス様とノエミさんの関係がより熱くなるよう定期的に薪をくべるべきだとも先生は語りました。

「焚きつける役目は大人の先生が務めるべきでしょう。吉報を待ちなさい」

 こう述べた先生が浮かべた笑みは……どことなく恐ろしくてたまりませんでした。
 先生の黒い一面を見たように思えてならなかったです。

 そうして第二王子殿下を初めとする殿方はノエミさんに夢中になりました。学園外での逢瀬は序の口。休日も婚約者そっちのけでノエミさんに費やしました。そして手を繋ぎ、寄り添い、抱擁を交わし、口付けまで至り、終いにはノエミさんに愛の告白をしたのです。

 第二王子殿下が恋に溺れていく過程を私達は冷めた目で見つめていました。中には明らかな失望や軽蔑まで顕にする方もいらっしゃいました。第二王子殿下方は自分達から距離を置く学生に気付かないまま、愚かにも更にノエミさんとの関係を深めていったのです。

「第二王子殿下は現実から目を背けたままの方が幸せかもしれないね。夢から覚めてしまえばもう終わりだもの」
「しかし寝ぼけたままでいてもらっては周りはいい迷惑です。このまま放置していていいのでしょうか?」
「聞く耳を持たない以上、取り返しがつかなくなる前に痛い目を見てもらう。それが教師陣の方針みたいだよ。私らに迷惑がかからないよう距離を取り続ければいいさ」
「大事にならなければいいけれど……」

 私の懸念は膨らむばかりでした。
 そしてそれはとんでもない騒動となって表に出てしまったのです。
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