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16話 メイドとデート② お食事、服購入
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午前中に展示をひと通り見て回ったあと、俺と沙耶香――いや、今日の彼女は自然に「沙耶香さん」ではなく「沙耶香」と呼びたくなるくらい、大人っぽくて特別な存在に見えていた。
「そろそろお昼にしましょうか、健斗さん」
博物館を出て、沙耶香が俺の方に微笑む。
普段は「坊ちゃま」と呼ぶ彼女から名前を呼ばれるだけで、胸が妙にくすぐったくなった。
「い、いいですね。ちょっと予約してあるんです」
「まぁ……もう予約まで。健斗さん、本当に頼もしくなりましたね」
案内されたのは、都会の街並みを見下ろせるカフェレストラン。
落ち着いた木のテーブルに白いクロス、窓の向こうには人の流れが小さく見える。
「本日の日替わりランチと、健斗さんは……?」
「俺も同じので」
料理が運ばれるまでの間、沈黙が訪れる。
いつもなら気まずいはずなのに、なぜか悪くない。むしろ心臓の音だけがやけに大きく響いていた。
「……こうして外でご一緒するのは、不思議ですね」
沙耶香がぽつりと言った。
「普段は屋敷の中ばかりで……でも、今日は隣にいるのがご主人様ではなく――健斗さん、ですから」
「……っ!」
名前を呼ばれるたびに、体温が上がる気がする。
「わ、私……なんだか夫婦のようにも思えてしまいます」
「ふ、夫婦……!?」
思わず声を上げてしまい、店内の視線がこちらに集まる。
慌てて口を押さえる俺を見て、沙耶香はくすっと笑った。
「ふふ……からかいすぎましたか?」
「か、からかわないでくださいよ……」
ちょうどそのとき、熱々のランチプレートが運ばれてきた。
湯気を立てる料理の向こうで、沙耶香がナプキンを広げる。
「はい、あーん」
「なっ……ここで!?」
「ふふ……冗談です。けれど……それくらいして差し上げてもいいのですよ?」
上品に笑う沙耶香。その柔らかな仕草ひとつひとつが、普段の「メイド」とはまるで違って見えて、俺はまともに顔を見られなかった。
ナプキンをたたみ、料理を口に運びながら、沙耶香がふとこちらを見た。
「……あの、健斗さん」
「はい?」
「少し、このあと寄りたい場所があるのです」
「寄りたい場所?」
「ええ。服を買いたいと思って」
「服……ですか?」
普段はメイド服ばかりだから、意外に感じて思わず聞き返してしまう。
「せっかくですから、この街の百貨店で少し見てみたいのです。……もちろん、健斗さんのお時間をいただけるなら、ですが」
「い、いや! もちろん行きます!」
慌てて答えると、沙耶香はくすっと笑い、目元に手を添えた。
「ふふ……ありがとうございます。実は私服を買い足す機会がなかなかなくて。今日のように一緒にお出かけするなら、もっと選んでおきたいと思ったのです」
ダークブラウンの髪が揺れ、パールのイヤリングがきらりと光る。
その横顔を見ていると、なんだか「ただの買い物」以上の意味があるように思えて、胸がざわついた。
昼食を終えて百貨店のファッションフロアに入ると、沙耶香さんの表情がほんの少し柔らいだ。
「こうして並んで服を選ぶなんて、健斗さんとだからこそですね」
「俺と……?」
「ええ。普段は買い物といっても屋敷の用事ばかりですから。自分の服を選ぶなんて久しぶりです」
そう言って手に取ったのは、鮮やかなブルーのブラウス。
「これはどうでしょう?」
「……似合うと思います」
思わず即答すると、沙耶香さんが小さく微笑み、そのまま試着室へ。
数分後、カーテンが開いた。
薄手のブラウスに白のスカート。普段は見られない肩のラインが出ていて、思わず息を呑む。
「どうかしら?」
「……っ、すごく爽やかで……似合ってます!」
「ふふ、ありがとうございます」
次に手に取ったのは、意外にもパンツスタイルだった。
「動きやすそうですし、夏は涼しいでしょうね」
「……ズボン姿って、なんか新鮮です」
試着を終えて出てきた沙耶香さんは、淡いベージュのパンツにノースリーブのトップス。
布の面積が少ないわけではないのに、体のラインがはっきり出てしまっている。
ウエストのくびれ、すらりと伸びる脚、そしてトップスの胸元のふくらみ。
「どうでしょう? 少し大人っぽすぎますか?」
「い、いや……むしろ、大人っぽくて……」
うまく言葉が出てこず、声が裏返りそうになる。
沙耶香さんはそんな俺を見て、くすっと笑った。
「そうですか……では、これも候補に」
そして夏らしいワンピースも選んで試着。
今度は薄手の布地で、歩くたびに裾がふわりと揺れる。
「これは涼しくていいですね。けれど……透けてしまわないかしら」
「っ……だ、大丈夫です! 全然!」
「本当ですか? 健斗さんがそう仰るなら、信じましょう」
どの服も似合ってしまうから困る。
(やばい……どれも反則級に似合ってる……!)
気づけば、俺の両手は紙袋でいっぱいになっていた。
沙耶香さんは上品に微笑みながら言う。
「……こんなに選んでいただけるなんて、贅沢ですね」
「い、いや……似合ってるから、つい」
「ふふ……健斗さんがそう仰るなら、どれも大切に着ますね」
会計を終わらせて次の予定を伝えた。
「服も買いましたし、次はジュエリー系のところにでも行きましょう。」
「いいえ、まだ服は買い終えていませんよ。何なら本命です。」
俺は沙耶香さんに言われるがまま付いていった。
「そろそろお昼にしましょうか、健斗さん」
博物館を出て、沙耶香が俺の方に微笑む。
普段は「坊ちゃま」と呼ぶ彼女から名前を呼ばれるだけで、胸が妙にくすぐったくなった。
「い、いいですね。ちょっと予約してあるんです」
「まぁ……もう予約まで。健斗さん、本当に頼もしくなりましたね」
案内されたのは、都会の街並みを見下ろせるカフェレストラン。
落ち着いた木のテーブルに白いクロス、窓の向こうには人の流れが小さく見える。
「本日の日替わりランチと、健斗さんは……?」
「俺も同じので」
料理が運ばれるまでの間、沈黙が訪れる。
いつもなら気まずいはずなのに、なぜか悪くない。むしろ心臓の音だけがやけに大きく響いていた。
「……こうして外でご一緒するのは、不思議ですね」
沙耶香がぽつりと言った。
「普段は屋敷の中ばかりで……でも、今日は隣にいるのがご主人様ではなく――健斗さん、ですから」
「……っ!」
名前を呼ばれるたびに、体温が上がる気がする。
「わ、私……なんだか夫婦のようにも思えてしまいます」
「ふ、夫婦……!?」
思わず声を上げてしまい、店内の視線がこちらに集まる。
慌てて口を押さえる俺を見て、沙耶香はくすっと笑った。
「ふふ……からかいすぎましたか?」
「か、からかわないでくださいよ……」
ちょうどそのとき、熱々のランチプレートが運ばれてきた。
湯気を立てる料理の向こうで、沙耶香がナプキンを広げる。
「はい、あーん」
「なっ……ここで!?」
「ふふ……冗談です。けれど……それくらいして差し上げてもいいのですよ?」
上品に笑う沙耶香。その柔らかな仕草ひとつひとつが、普段の「メイド」とはまるで違って見えて、俺はまともに顔を見られなかった。
ナプキンをたたみ、料理を口に運びながら、沙耶香がふとこちらを見た。
「……あの、健斗さん」
「はい?」
「少し、このあと寄りたい場所があるのです」
「寄りたい場所?」
「ええ。服を買いたいと思って」
「服……ですか?」
普段はメイド服ばかりだから、意外に感じて思わず聞き返してしまう。
「せっかくですから、この街の百貨店で少し見てみたいのです。……もちろん、健斗さんのお時間をいただけるなら、ですが」
「い、いや! もちろん行きます!」
慌てて答えると、沙耶香はくすっと笑い、目元に手を添えた。
「ふふ……ありがとうございます。実は私服を買い足す機会がなかなかなくて。今日のように一緒にお出かけするなら、もっと選んでおきたいと思ったのです」
ダークブラウンの髪が揺れ、パールのイヤリングがきらりと光る。
その横顔を見ていると、なんだか「ただの買い物」以上の意味があるように思えて、胸がざわついた。
昼食を終えて百貨店のファッションフロアに入ると、沙耶香さんの表情がほんの少し柔らいだ。
「こうして並んで服を選ぶなんて、健斗さんとだからこそですね」
「俺と……?」
「ええ。普段は買い物といっても屋敷の用事ばかりですから。自分の服を選ぶなんて久しぶりです」
そう言って手に取ったのは、鮮やかなブルーのブラウス。
「これはどうでしょう?」
「……似合うと思います」
思わず即答すると、沙耶香さんが小さく微笑み、そのまま試着室へ。
数分後、カーテンが開いた。
薄手のブラウスに白のスカート。普段は見られない肩のラインが出ていて、思わず息を呑む。
「どうかしら?」
「……っ、すごく爽やかで……似合ってます!」
「ふふ、ありがとうございます」
次に手に取ったのは、意外にもパンツスタイルだった。
「動きやすそうですし、夏は涼しいでしょうね」
「……ズボン姿って、なんか新鮮です」
試着を終えて出てきた沙耶香さんは、淡いベージュのパンツにノースリーブのトップス。
布の面積が少ないわけではないのに、体のラインがはっきり出てしまっている。
ウエストのくびれ、すらりと伸びる脚、そしてトップスの胸元のふくらみ。
「どうでしょう? 少し大人っぽすぎますか?」
「い、いや……むしろ、大人っぽくて……」
うまく言葉が出てこず、声が裏返りそうになる。
沙耶香さんはそんな俺を見て、くすっと笑った。
「そうですか……では、これも候補に」
そして夏らしいワンピースも選んで試着。
今度は薄手の布地で、歩くたびに裾がふわりと揺れる。
「これは涼しくていいですね。けれど……透けてしまわないかしら」
「っ……だ、大丈夫です! 全然!」
「本当ですか? 健斗さんがそう仰るなら、信じましょう」
どの服も似合ってしまうから困る。
(やばい……どれも反則級に似合ってる……!)
気づけば、俺の両手は紙袋でいっぱいになっていた。
沙耶香さんは上品に微笑みながら言う。
「……こんなに選んでいただけるなんて、贅沢ですね」
「い、いや……似合ってるから、つい」
「ふふ……健斗さんがそう仰るなら、どれも大切に着ますね」
会計を終わらせて次の予定を伝えた。
「服も買いましたし、次はジュエリー系のところにでも行きましょう。」
「いいえ、まだ服は買い終えていませんよ。何なら本命です。」
俺は沙耶香さんに言われるがまま付いていった。
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