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28話 勉強会③
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午後六時を過ぎたころ。
窓の外はオレンジから藍色へと変わり、
庭の噴水の音が、少しだけ涼しさを運んできていた。
「……ふぅ。だいぶ集中しましたね」
白石がペンを置き、肩を回す。
カーディガンを脱いでブラウス一枚になったその姿は、
夕方の光に照らされてどこか色っぽかった。
「ねえ白石さん、集中しすぎて疲れたんじゃない?」
橘がストレッチをしながら笑う。
ミニスカートの裾が少しだけ上がり、
白石がチラッと目を逸らす。
「……そんな格好で動かないでください。危ないです」
「え~? 何が危ないの~?」
「主に、健斗くんの集中が」
「うわ、それ言う~? ねぇ健斗くん、どこ見てた?」
「み、見てないって!」
慌てて視線を逸らす俺を見て、
橘はいたずらっぽく笑い、白石は咳払いしてノートを閉じた。
(なんで俺が怒られてるんだ……)
そのとき、リビングのドアが軽くノックされた。
「お勉強、お疲れ様です」
沙耶香さんが紅茶のポットを持って入ってくる。
「夜も更けてまいりましたので、軽いお菓子をどうぞ」
「ありがとうございます」
白石が丁寧に頭を下げる。
橘は「やっぱり“お屋敷のティータイム”って感じ~!」とテンションを上げていた。
「お嬢様方、砂糖とミルクはお好みで」
「お嬢様じゃないです!」
「いや、あたしはお嬢様でもいいけど?」
沙耶香さんの冗談に二人の声が重なり、思わず笑いがこぼれた。
それを見ていた美優さんが、頬杖をつきながら言う。
「なんだか、家庭教師いらずね。私の出番、ないんじゃないかしら?」
「そ、そんなことありません! 美優さんの解説、すごく分かりやすいです!」
慌てて言うと、美優さんはくすっと笑う。
「ありがとう。でも――」
カップを唇に近づけながら、
「“健斗くんを見てる”のは、みんな真剣みたいね」
その言葉に、紅茶の湯気よりも早く、場の空気がぴんと張り詰めた。
白石が小さく眉を上げる。
「……勝負ですから」
橘も笑顔で返す。
「勝負なら、こっちだって負けないけど?」
二人の視線が交わる。
けれど、どちらも目を逸らさない。
沙耶香さんが微笑を浮かべながら、
「まぁまぁ、争う前に甘いものでもどうぞ」
と皿を差し出す。
けれど――甘いのはお菓子だけではなかった。
夜の帳が下り始め、勉強会は自然と“休憩モード”に変わっていた。
橘は床に座って雑誌を眺め、
白石はノートを見直しながら静かに紅茶を飲む。
美優さんはスマホで問題集のデータをチェックしており、
沙耶香さんは静かにティーカップを磨いていた。
そんな穏やかな空気の中――
「ねぇ健斗くん、これ」
橘が身を乗り出して雑誌を見せてきた。
「夏祭りの特集。屋台の写真、見てるだけでワクワクするね」
「ほんとだ。すごい人だなぁ」
「こういうの、一緒に行ったら楽しそうじゃない?」
「……っ!」
それは、完全に爆弾発言だった。
白石がちらりとこちらを見て、
静かにページを閉じる音が響く。
「夏祭り、ですか。そうですね……。テストが終わったら、行けたらいいですね」
「へぇ、行けたら、ね~?」
「ええ。もちろん、健斗くんと」
「おっと~、ストレート~」
橘が笑いながら紅茶をすすり、
白石は微笑んだまま静かに返す。
「テストで勝った方が誘うんでしたよね?」
「ふふ、覚えてたんだ。あたしも忘れてないよ」
二人の間にまた静電気が走る。
その“火花”を横目に、美優さんが小声で俺に囁いた。
「……健斗くん、ほんとにモテるのね」
「ち、違います! なんか勝手に盛り上がってるだけで!」
「ふふ、男子はだいたいそう言うのよ」
その一言に、沙耶香さんも笑みを浮かべる。
「そうですね。坊……いえ、健斗さんは昔から“誠実にモテる”タイプですもの」
「な、なんですかそれ……!」
女子4人の笑い声が重なり、夜の屋敷が少しだけ明るくなった。
夜の8時。
勉強会はようやくお開きになった。
玄関で靴を履く白石と橘。
二人とも、外の夜風に頬を染めていた。
「今日は、ありがとうございました」
白石が静かに頭を下げる。
「うん、ありがと~。お菓子も紅茶も最高だった!」
橘も満足そうに笑う。
「……次は、テスト本番ね」
「うん。負けないよ、白石さん」
「こちらこそ」
二人の笑顔の奥で、
再び静かな火花が散った。
その光景を見ながら、
俺はなんとも言えない不安と期待を胸に抱いていた。
(……この屋敷、来週にはもっと騒がしくなるな)
夜風が吹き抜け、
噴水の水音が静かに響いていた。
窓の外はオレンジから藍色へと変わり、
庭の噴水の音が、少しだけ涼しさを運んできていた。
「……ふぅ。だいぶ集中しましたね」
白石がペンを置き、肩を回す。
カーディガンを脱いでブラウス一枚になったその姿は、
夕方の光に照らされてどこか色っぽかった。
「ねえ白石さん、集中しすぎて疲れたんじゃない?」
橘がストレッチをしながら笑う。
ミニスカートの裾が少しだけ上がり、
白石がチラッと目を逸らす。
「……そんな格好で動かないでください。危ないです」
「え~? 何が危ないの~?」
「主に、健斗くんの集中が」
「うわ、それ言う~? ねぇ健斗くん、どこ見てた?」
「み、見てないって!」
慌てて視線を逸らす俺を見て、
橘はいたずらっぽく笑い、白石は咳払いしてノートを閉じた。
(なんで俺が怒られてるんだ……)
そのとき、リビングのドアが軽くノックされた。
「お勉強、お疲れ様です」
沙耶香さんが紅茶のポットを持って入ってくる。
「夜も更けてまいりましたので、軽いお菓子をどうぞ」
「ありがとうございます」
白石が丁寧に頭を下げる。
橘は「やっぱり“お屋敷のティータイム”って感じ~!」とテンションを上げていた。
「お嬢様方、砂糖とミルクはお好みで」
「お嬢様じゃないです!」
「いや、あたしはお嬢様でもいいけど?」
沙耶香さんの冗談に二人の声が重なり、思わず笑いがこぼれた。
それを見ていた美優さんが、頬杖をつきながら言う。
「なんだか、家庭教師いらずね。私の出番、ないんじゃないかしら?」
「そ、そんなことありません! 美優さんの解説、すごく分かりやすいです!」
慌てて言うと、美優さんはくすっと笑う。
「ありがとう。でも――」
カップを唇に近づけながら、
「“健斗くんを見てる”のは、みんな真剣みたいね」
その言葉に、紅茶の湯気よりも早く、場の空気がぴんと張り詰めた。
白石が小さく眉を上げる。
「……勝負ですから」
橘も笑顔で返す。
「勝負なら、こっちだって負けないけど?」
二人の視線が交わる。
けれど、どちらも目を逸らさない。
沙耶香さんが微笑を浮かべながら、
「まぁまぁ、争う前に甘いものでもどうぞ」
と皿を差し出す。
けれど――甘いのはお菓子だけではなかった。
夜の帳が下り始め、勉強会は自然と“休憩モード”に変わっていた。
橘は床に座って雑誌を眺め、
白石はノートを見直しながら静かに紅茶を飲む。
美優さんはスマホで問題集のデータをチェックしており、
沙耶香さんは静かにティーカップを磨いていた。
そんな穏やかな空気の中――
「ねぇ健斗くん、これ」
橘が身を乗り出して雑誌を見せてきた。
「夏祭りの特集。屋台の写真、見てるだけでワクワクするね」
「ほんとだ。すごい人だなぁ」
「こういうの、一緒に行ったら楽しそうじゃない?」
「……っ!」
それは、完全に爆弾発言だった。
白石がちらりとこちらを見て、
静かにページを閉じる音が響く。
「夏祭り、ですか。そうですね……。テストが終わったら、行けたらいいですね」
「へぇ、行けたら、ね~?」
「ええ。もちろん、健斗くんと」
「おっと~、ストレート~」
橘が笑いながら紅茶をすすり、
白石は微笑んだまま静かに返す。
「テストで勝った方が誘うんでしたよね?」
「ふふ、覚えてたんだ。あたしも忘れてないよ」
二人の間にまた静電気が走る。
その“火花”を横目に、美優さんが小声で俺に囁いた。
「……健斗くん、ほんとにモテるのね」
「ち、違います! なんか勝手に盛り上がってるだけで!」
「ふふ、男子はだいたいそう言うのよ」
その一言に、沙耶香さんも笑みを浮かべる。
「そうですね。坊……いえ、健斗さんは昔から“誠実にモテる”タイプですもの」
「な、なんですかそれ……!」
女子4人の笑い声が重なり、夜の屋敷が少しだけ明るくなった。
夜の8時。
勉強会はようやくお開きになった。
玄関で靴を履く白石と橘。
二人とも、外の夜風に頬を染めていた。
「今日は、ありがとうございました」
白石が静かに頭を下げる。
「うん、ありがと~。お菓子も紅茶も最高だった!」
橘も満足そうに笑う。
「……次は、テスト本番ね」
「うん。負けないよ、白石さん」
「こちらこそ」
二人の笑顔の奥で、
再び静かな火花が散った。
その光景を見ながら、
俺はなんとも言えない不安と期待を胸に抱いていた。
(……この屋敷、来週にはもっと騒がしくなるな)
夜風が吹き抜け、
噴水の水音が静かに響いていた。
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