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招待状Ⅱ
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心温まる和やかな空気に私が目を潤ませていると、
「それともう一つあるんだ」
お父様がちょっと控え目に話を切り出しました。
いくつか話があるとのことでしたね。感動に包まれている場合ではなかったです。両親の愛情は嬉しかったので、部屋に帰ってから存分に浸ろうと思います。
ほんわかとしたムードの中にいた私は姿勢を正しました。
「フローラが紹介状を書いたトリッシュ医師の件だが、今日連絡があったんだ。面会をしたいということだったんだが、私ではなくてシャロンに任せようと思っている。こっちは専門外だから縫製などを手掛けているシャロンの方が力になれると思っているんだ。それとフローラがアドバイザーとしてついてくれると助かるんだが。どうかな? 仕事を増やしてしまって申し訳ないが」
お父様がすまなさそう顔で私を見ましたが、
「大丈夫ですよ。先生の手作り品を商品化したいといったのは私ですし、責任もってお世話します」
胸を張って答えました。
「わたくしも履いてみたけれどすごくよくて、おかげで足のむくみが減って楽になったわ」
お母様の足元を見ると室内履きを履いていました。実は私も履いています。底を補強してクッション性を出していているためか、さらに履き心地がよくなって部屋ではますます手放せなくなりました。
紹介状を送った時に先生がもう一足贈ってくれたのです。それをお母様にプレゼントしましたが、すぐに室内履きの虜になりましたわ。
私の目に狂いはなかったってことですね。
気になっていたので私があとで聞いてみようと思った件でした。連絡が来たということは、先生もその気になったと前向きにとらえていいということですよね。良かったわ。万々歳です。
「商談相手は女性で対象も女性となるとわたくしが適任だろうってなったのよ。仕事も男性より女性の方が向いているでしょうし、楽しみだわ」
「でも、お母様。仕事が一気に増えますが、大丈夫ですか?」
忙しくなると無理をしないか体のことが心配になりました。
「あら、大丈夫よ。健康には十分気をつけるわ。それに今、やる気が漲っているところなの」
お母様もノリノリですね。
「シャロンもフローラも無理はしないで、体に気をつけるように。それで早急にスケジュール調整をして面会する時間を知らせてほしいんだ。いいかい? 二人とも」
「はい。お父様もですよ」
「承知いたしました。あなたも体を大事にしてね」
「わかった。気をつける」
私達は顔を見合わせると笑い合いました。お互いの気遣いがこの場を温かいものにして穏やかな空気が流れます。
私は優しい両親に恵まれたようです。
「これで衣と食が揃ったわ。ここまで来たら住の方も揃えたいわね」
なんてことを言いだしたお母様。住もって欲張りではないですか? 見た目はお姫様のように楚々っとしているのに中身はけっこう貪欲でした。
「それでしたら、スイーツとカフェのお店の内装をうちの職人で手掛けてもらったらどうですか? 既成のものでなくイメージに合うオリジナルなものを作ってもらったらどうでしょう。うちの製品のアピールにもなりますし」
消費を拡大していくにはいろいろなアプローチも必要でしょう。
テンネル家との契約もなくなりましたから、どこかで需要を見つけ出さないと申し訳ないですから。
「それもいいわね。さっそく物件を探さなくっちゃ」
お母様は俄然やる気が出てきたようです。お互いアイディアを出し合えばよいものができるのではないでしょうか。私もわくわくしてきました。
「二人とも仕事の話はそれぐらいにして、後日計画書を出してほしい。予算のこともあるからね」
「「はい」」
私はお母様とアイコンタクトを取って返事をしました。
「そして、これが最後だが……」
お父様が机の引き出しから一通の手紙を取り出すと、それを私の目の前に置きました。
「フローラ宛てに届いたものだよ」
「私にですか?」
手紙はお父様の執事が管理しています。まずは執事の手に渡り宛名と差出人を記録してそれぞれの元へ届けられるので、よほどでない限りお父様から渡されることはありません。そう、よほどでない限り。
「どなたからでしょう?」
「見たらわかるよ」
それはそうなんでしょうけれど、できれば事前に教えてくれないかしら?
私はそろそろと手紙に手を伸ばしました。
目を凝らしてしっかりと表書きを確認します。宛名は私です。間違いはありません。
恐る恐る差出人を見ると……
ローズ・グリセア。
鮮やかな薔薇の刻印が目に飛び込んできました。
それは王妃陛下からの招待状でした。
「それともう一つあるんだ」
お父様がちょっと控え目に話を切り出しました。
いくつか話があるとのことでしたね。感動に包まれている場合ではなかったです。両親の愛情は嬉しかったので、部屋に帰ってから存分に浸ろうと思います。
ほんわかとしたムードの中にいた私は姿勢を正しました。
「フローラが紹介状を書いたトリッシュ医師の件だが、今日連絡があったんだ。面会をしたいということだったんだが、私ではなくてシャロンに任せようと思っている。こっちは専門外だから縫製などを手掛けているシャロンの方が力になれると思っているんだ。それとフローラがアドバイザーとしてついてくれると助かるんだが。どうかな? 仕事を増やしてしまって申し訳ないが」
お父様がすまなさそう顔で私を見ましたが、
「大丈夫ですよ。先生の手作り品を商品化したいといったのは私ですし、責任もってお世話します」
胸を張って答えました。
「わたくしも履いてみたけれどすごくよくて、おかげで足のむくみが減って楽になったわ」
お母様の足元を見ると室内履きを履いていました。実は私も履いています。底を補強してクッション性を出していているためか、さらに履き心地がよくなって部屋ではますます手放せなくなりました。
紹介状を送った時に先生がもう一足贈ってくれたのです。それをお母様にプレゼントしましたが、すぐに室内履きの虜になりましたわ。
私の目に狂いはなかったってことですね。
気になっていたので私があとで聞いてみようと思った件でした。連絡が来たということは、先生もその気になったと前向きにとらえていいということですよね。良かったわ。万々歳です。
「商談相手は女性で対象も女性となるとわたくしが適任だろうってなったのよ。仕事も男性より女性の方が向いているでしょうし、楽しみだわ」
「でも、お母様。仕事が一気に増えますが、大丈夫ですか?」
忙しくなると無理をしないか体のことが心配になりました。
「あら、大丈夫よ。健康には十分気をつけるわ。それに今、やる気が漲っているところなの」
お母様もノリノリですね。
「シャロンもフローラも無理はしないで、体に気をつけるように。それで早急にスケジュール調整をして面会する時間を知らせてほしいんだ。いいかい? 二人とも」
「はい。お父様もですよ」
「承知いたしました。あなたも体を大事にしてね」
「わかった。気をつける」
私達は顔を見合わせると笑い合いました。お互いの気遣いがこの場を温かいものにして穏やかな空気が流れます。
私は優しい両親に恵まれたようです。
「これで衣と食が揃ったわ。ここまで来たら住の方も揃えたいわね」
なんてことを言いだしたお母様。住もって欲張りではないですか? 見た目はお姫様のように楚々っとしているのに中身はけっこう貪欲でした。
「それでしたら、スイーツとカフェのお店の内装をうちの職人で手掛けてもらったらどうですか? 既成のものでなくイメージに合うオリジナルなものを作ってもらったらどうでしょう。うちの製品のアピールにもなりますし」
消費を拡大していくにはいろいろなアプローチも必要でしょう。
テンネル家との契約もなくなりましたから、どこかで需要を見つけ出さないと申し訳ないですから。
「それもいいわね。さっそく物件を探さなくっちゃ」
お母様は俄然やる気が出てきたようです。お互いアイディアを出し合えばよいものができるのではないでしょうか。私もわくわくしてきました。
「二人とも仕事の話はそれぐらいにして、後日計画書を出してほしい。予算のこともあるからね」
「「はい」」
私はお母様とアイコンタクトを取って返事をしました。
「そして、これが最後だが……」
お父様が机の引き出しから一通の手紙を取り出すと、それを私の目の前に置きました。
「フローラ宛てに届いたものだよ」
「私にですか?」
手紙はお父様の執事が管理しています。まずは執事の手に渡り宛名と差出人を記録してそれぞれの元へ届けられるので、よほどでない限りお父様から渡されることはありません。そう、よほどでない限り。
「どなたからでしょう?」
「見たらわかるよ」
それはそうなんでしょうけれど、できれば事前に教えてくれないかしら?
私はそろそろと手紙に手を伸ばしました。
目を凝らしてしっかりと表書きを確認します。宛名は私です。間違いはありません。
恐る恐る差出人を見ると……
ローズ・グリセア。
鮮やかな薔薇の刻印が目に飛び込んできました。
それは王妃陛下からの招待状でした。
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