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ディアナside⑤
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「「レイニーですって‼」」
ローズ様の控えめで少し遠慮がちな答えにわたしとアンジェラは同時に声をあげてしまったわ。
「年齢も近いし、第三王子だから役割的には負担にならないかと思ってね。レイニーを推薦したの」
ローズ様は付け合わせの人参のグラッセにナイフを入れながら、レイニーを選んだ理由を教えてくれた。
やがて小さく切られた人参は、ソースを絡めたお肉の上にのせられてローズ様の口の中に消えていった。
ローズ様って、人参が苦手なのよね。
「ということは、フローラちゃんは王家の願いを叶えるために、三年の月日を経て巡り巡ってレイニーの元に帰ってきたということですね。素敵」
アンジェラが何やらロマンティックなことを言ったわ。
胸のあたりで指を組み合わせると、夢見る乙女のようにうっとりとしているように見えるのだけど、こんな人だったかしら?
普段はサバサバしているところがあるからリアリストだと思っていたのだけど。
それともフローラに関しては人が変わってしまうのかしら?
「そうね。いいこと言うわね。アンジェラ、きっとそうだと思うわ。三年前はまだ期が熟していなかったのね。だから、縁談がまとまらなかったのよ」
ローズ様もすっかりアンジェラに感化されている。
「意見が合ったところで具体的に話を進めていきましょう」
「そうですね。まずは二人の接点を作ることですわよね。どんな方法がいいのかしら?」
アンジェラは頭をひねりながら悩んでいる。
わたしは焼き立てのパンをちぎって食べた。口の中にバターの風味が広がって美味しい。
「ローズ様、策を考える前にレイニーの気持ちを聞きたいのですけど、どうなのでしょう?」
こちらは気があると思っていても想像でしかないから、実は勘違いでした、ではすまないものね。
「ああ、そうね。それが先ね。みんなで確認しておかないといけないわね」
わたしとアンジェラは頷いた。
少々……? ではないわね。だいぶ浮かれ気味だったわ。
わたしたちの気持ちは一つだけれど、猪突猛進的に後先考えずに行動したのでは纏まるものも纏まらないかもしれない。とにかくミッションを成功させるためには、わたしたちの相互理解と綿密でかつ柔軟な計画が必要だわ。
テーブルの上には紅茶とチーズケーキが並べられた。
紅茶の香りが心をリフレッシュさせてくれるわ。濃厚なチーズの香りも食欲をそそられる。わたしはチーズが大好きなのよ。
アンジェラもチーズケーキが大好物なのよね。もうすでに一口食べているわ。至福のひとときだわね。
ローズ様は紅茶を飲んで、一息ついたところで口を開いた。
「まずはレイニーね。お茶会の次の日にレイニーからフローラちゃんの気持ちを聞かせてもらったわ。このことはヘンリーも承知していることよ。結婚したいそうよ、王子妃に望んでいると。その返事として『まずはフローラちゃんの心を射止めなさい。婚約はそのあとよ』といっておいたわ。ディアナ、それでよかったかしら?」
「はい。十分です。ありがとうございます」
わたしは心の中でガッツポーズをしたわ。レイニーに気持ちがあれば九割は成功したようなものよ。アンジェラの顔が緩んでニコニコしてるわ。嬉しそう。
「射止めなさいなんてロマンがあるわあ。でも王族も貴族も政略結婚が常ですが、ブルーバーグ侯爵家の意向はどうなのですか? わたくしたちの思惑とは裏腹に別の婚約が成立したら笑うに笑えませんわ」
≪フローラとレイニーの恋を見守る会≫と勝手に命名して応援してても、結婚は家と家との結びつきでもあるから、思い通りにいかないこともあり得る。
フローラに結婚願望がないのは知っているし、シャロン様たちが結婚を無理強いしないことも知ってはいるけれど。
「最悪な事態にならないように先日ブルーバーグ侯爵夫妻を王宮に呼んだの」
ローズ様、すでに根回し済みなのね。さすがだわ。
「そこで、王家としてフローラちゃんをレイニーの王子妃として迎える用意があると話したわ。ただし二人の気持ちが優先で、特にフローラちゃんの気持ちを大事にするから強制的に婚約させることはないと伝えたわ」
そこまで言うとローズ様はチーズケーキを口にした。
わたしは紅茶を飲んで次の言葉をジッと待った。
シンとなった室内が緊張感を誘って身が引き締まる。アンジェラも真剣な顔で姿勢を正した。
「強制しない代わりに王宮へ招くこともあるからそれは承知してほしいということと、もしうまくいかなくても咎めたりすることはないということ。わたくしたちが望んでいるのはフローラちゃんが幸せになることだけだと言わせてもらったわ」
「……」
ローズ様の言葉に胸にこみ上げてきたものがあった。
泣きそうになるのを必死にこらえたわ。
ローズ様とアンジェラには婚約破棄までの経緯を話してある。エドガーのこと、テンネル侯爵家での仕事ぶりもわたしが知っている限りは伝えたわ。ヘンリーおじさまやエドワードの耳にも入っているかもしれないわね。
だからこそ、フローラには幸せな結婚をしてほしい。できることなら政略で結ばれるのではなく、愛し愛された幸せな恋愛もしてほしい。
それがわたしたち三人の願いなのよ。
フローラの幸せな結婚。
それを実現するべくわたしたちはこの日計画を練ったのだった。
ローズ様の控えめで少し遠慮がちな答えにわたしとアンジェラは同時に声をあげてしまったわ。
「年齢も近いし、第三王子だから役割的には負担にならないかと思ってね。レイニーを推薦したの」
ローズ様は付け合わせの人参のグラッセにナイフを入れながら、レイニーを選んだ理由を教えてくれた。
やがて小さく切られた人参は、ソースを絡めたお肉の上にのせられてローズ様の口の中に消えていった。
ローズ様って、人参が苦手なのよね。
「ということは、フローラちゃんは王家の願いを叶えるために、三年の月日を経て巡り巡ってレイニーの元に帰ってきたということですね。素敵」
アンジェラが何やらロマンティックなことを言ったわ。
胸のあたりで指を組み合わせると、夢見る乙女のようにうっとりとしているように見えるのだけど、こんな人だったかしら?
普段はサバサバしているところがあるからリアリストだと思っていたのだけど。
それともフローラに関しては人が変わってしまうのかしら?
「そうね。いいこと言うわね。アンジェラ、きっとそうだと思うわ。三年前はまだ期が熟していなかったのね。だから、縁談がまとまらなかったのよ」
ローズ様もすっかりアンジェラに感化されている。
「意見が合ったところで具体的に話を進めていきましょう」
「そうですね。まずは二人の接点を作ることですわよね。どんな方法がいいのかしら?」
アンジェラは頭をひねりながら悩んでいる。
わたしは焼き立てのパンをちぎって食べた。口の中にバターの風味が広がって美味しい。
「ローズ様、策を考える前にレイニーの気持ちを聞きたいのですけど、どうなのでしょう?」
こちらは気があると思っていても想像でしかないから、実は勘違いでした、ではすまないものね。
「ああ、そうね。それが先ね。みんなで確認しておかないといけないわね」
わたしとアンジェラは頷いた。
少々……? ではないわね。だいぶ浮かれ気味だったわ。
わたしたちの気持ちは一つだけれど、猪突猛進的に後先考えずに行動したのでは纏まるものも纏まらないかもしれない。とにかくミッションを成功させるためには、わたしたちの相互理解と綿密でかつ柔軟な計画が必要だわ。
テーブルの上には紅茶とチーズケーキが並べられた。
紅茶の香りが心をリフレッシュさせてくれるわ。濃厚なチーズの香りも食欲をそそられる。わたしはチーズが大好きなのよ。
アンジェラもチーズケーキが大好物なのよね。もうすでに一口食べているわ。至福のひとときだわね。
ローズ様は紅茶を飲んで、一息ついたところで口を開いた。
「まずはレイニーね。お茶会の次の日にレイニーからフローラちゃんの気持ちを聞かせてもらったわ。このことはヘンリーも承知していることよ。結婚したいそうよ、王子妃に望んでいると。その返事として『まずはフローラちゃんの心を射止めなさい。婚約はそのあとよ』といっておいたわ。ディアナ、それでよかったかしら?」
「はい。十分です。ありがとうございます」
わたしは心の中でガッツポーズをしたわ。レイニーに気持ちがあれば九割は成功したようなものよ。アンジェラの顔が緩んでニコニコしてるわ。嬉しそう。
「射止めなさいなんてロマンがあるわあ。でも王族も貴族も政略結婚が常ですが、ブルーバーグ侯爵家の意向はどうなのですか? わたくしたちの思惑とは裏腹に別の婚約が成立したら笑うに笑えませんわ」
≪フローラとレイニーの恋を見守る会≫と勝手に命名して応援してても、結婚は家と家との結びつきでもあるから、思い通りにいかないこともあり得る。
フローラに結婚願望がないのは知っているし、シャロン様たちが結婚を無理強いしないことも知ってはいるけれど。
「最悪な事態にならないように先日ブルーバーグ侯爵夫妻を王宮に呼んだの」
ローズ様、すでに根回し済みなのね。さすがだわ。
「そこで、王家としてフローラちゃんをレイニーの王子妃として迎える用意があると話したわ。ただし二人の気持ちが優先で、特にフローラちゃんの気持ちを大事にするから強制的に婚約させることはないと伝えたわ」
そこまで言うとローズ様はチーズケーキを口にした。
わたしは紅茶を飲んで次の言葉をジッと待った。
シンとなった室内が緊張感を誘って身が引き締まる。アンジェラも真剣な顔で姿勢を正した。
「強制しない代わりに王宮へ招くこともあるからそれは承知してほしいということと、もしうまくいかなくても咎めたりすることはないということ。わたくしたちが望んでいるのはフローラちゃんが幸せになることだけだと言わせてもらったわ」
「……」
ローズ様の言葉に胸にこみ上げてきたものがあった。
泣きそうになるのを必死にこらえたわ。
ローズ様とアンジェラには婚約破棄までの経緯を話してある。エドガーのこと、テンネル侯爵家での仕事ぶりもわたしが知っている限りは伝えたわ。ヘンリーおじさまやエドワードの耳にも入っているかもしれないわね。
だからこそ、フローラには幸せな結婚をしてほしい。できることなら政略で結ばれるのではなく、愛し愛された幸せな恋愛もしてほしい。
それがわたしたち三人の願いなのよ。
フローラの幸せな結婚。
それを実現するべくわたしたちはこの日計画を練ったのだった。
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