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ディアナside④
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今日はローズ様とアンジェラと三人で王宮で昼食会は名目で、実際は≪フローラとレイニーの恋を見守る会≫の集まり。
もともとはガーデンパーティーの後でレイニーと会わせるようと計画を立てていたのだけど、なぜか紹介する前に二人は出会ってしまった。それは結果オーライで大成功だったわけだけど。
レイニーはフローラが気に入ったみたいだし、本人の自覚はどうであれフローラだって好意は持ってると思うわ。
ということで更なる計画を立てようということで集合したのよね。
「フローラちゃんってかわいいわよね。早く義妹になってくれないかしら」
アンジェラが口火を切ってスープカップを置くとため息交じりに呟いた。
本日の昼食はスープにサラダ。メインのお肉料理にロールパン、デザートに紅茶。三時ごろにはアフタヌーンティーの予定なので量も控えてある。食べすぎには要注意だわね。
「そうねえ、それなら一層のことすぐに結婚させちゃったらどうかしら?」
ローズ様がいきなり結論を出してきたわ。
何のための恋を見守る会なんだか。気持ちはわかるけどもね。
「わたくしも賛成です。お義母様、そうしちゃいましょう」
いや、いや……この人たち暴走するタイプだったの?
わたしはサラダを口にしながら、しばしこの二人の様子を眺めていた。
「フローラちゃんは元々、王家に欲しかったのよ」
そうだったの? それは初耳。知らなかったわ。何気に爆弾発言じゃないかしら。
「ローナの国内栽培の成功でフローラちゃんが金紫珠褒賞を受けたでしょう。その時にね、王子妃にどうかってヘンリーと話をしていたのよ」
金紫珠褒賞とは国に貢献したりあらゆる分野で功績のあった貴族や国民を讃える最高の賞のこと。審査も厳しく滅多にもらえるものではなく受賞も二十年ぶりとか。
ローナの国内栽培は革新的で国にどれだけの利益を齎したのか計りしれないと言われている。
その時、フローラは十五才。たった十五才で誰もなしえることのできなかった研究を成功させたのだものね。賞にふさわしい人選だったわ。
ちなみにヘンリーとは国王陛下のことです。
「王子妃にって話が出てたのに、なぜ実現しなかったのですか?」
アンジェラが首を傾げながら聞いているけど、わたしもそこは疑問だわ。だって、フローラの婚約者いえ元婚約者は最低のエドガーだったんですからね。
「一応ね、ブルーバーグ侯爵家に打診はしたのよ。王子妃にどうかって」
「「うん、うん」」
マジですか?
わたしとアンジェラはカトラリーを皿に戻して聞き逃すまいと、全身が耳になったように身を乗り出した。
「こちらもいろいろと考えてはいたのよ。でもね……」
「「うん、うん」」
次の言葉を待つわたしたちをチラッと見ながら
「侯爵から王子妃と研究の両立は難しいのではないかと言われたのよ」
ガクッと肩を落として残念そうに語るローズ様。
「あー」
わたしは思わず声を出してしまったわ。
ローレンツおじさまの言い分もわかるわね。ブルーバーグ家に婿入りするわけではなく、嫡男がいるからそもそも無理だけど。王子妃だとその役目も担わなくてはいけないものね。
それにしてもフローラのためとはいえ王家からの結婚話を断ったのね。今にして思えばよい決断だったとは言えないわね。しょうがないことだけど。
「それは……なんとも。正論のような気がしなくもないですわね」
「そうなのよ。アンジェラ。あれだけの逸材を王家という籠の中に閉じ込めては、宝の持ち腐れになってしまうかもと考えてしまったのよ。だから無理強いはしなかったの」
「確かにあの頃はそうかもしれないわね。フローラちゃんは十五才でしょう? ブルーバーグ侯爵がそう思うのは無理もないかもしれませんね」
「でも、その結果が、あれでは……」
エドガーの所業を思い出してしまったわ。ムカムカしてきた。沸々と煮えたぎったマグマのような怒りが湧いてくる。あいつのせいでどれだけフローラが傷ついたことか、今すぐにでも思い知らせてやりたいくらいだわ。
怒りに震えていると
「ねっ。ディアナ、どうしたの? そんな鬼のような形相をして……怖いわよ」
アンジェラがビクビクと怯えたようにわたしの顔を窺ってた。若干、距離も取ってるわ。
そんなに怖かったかしら。
「ごめんなさい。ちょっと、いやなことを思い出しちゃっただけよ」
そうよね。
ここは≪フローラとレイニーの恋を見守る会≫だったわ。本来の目的を忘れるところでした。
「そうだわ。ローズ様。では、過去は過去として聞きますけど、誰の王子妃にするつもりだったんですか?」
王子妃にというからには誰か想定する王子がいたのよね。王子は三人だけど。王太子のエドワードはアンジェラと結婚していたから除外されるとして、残りは二人ね。
「あっ。わたくしも気になりますわ」
アンジェラが小さく手を上げた。一応興味はあるのね。わたしだけでなくてよかったわ。
ローズ様はわたしたちの顔を順に見つめてしばらくの沈黙の後、名前を口にした。
「……レイニーよ」
もともとはガーデンパーティーの後でレイニーと会わせるようと計画を立てていたのだけど、なぜか紹介する前に二人は出会ってしまった。それは結果オーライで大成功だったわけだけど。
レイニーはフローラが気に入ったみたいだし、本人の自覚はどうであれフローラだって好意は持ってると思うわ。
ということで更なる計画を立てようということで集合したのよね。
「フローラちゃんってかわいいわよね。早く義妹になってくれないかしら」
アンジェラが口火を切ってスープカップを置くとため息交じりに呟いた。
本日の昼食はスープにサラダ。メインのお肉料理にロールパン、デザートに紅茶。三時ごろにはアフタヌーンティーの予定なので量も控えてある。食べすぎには要注意だわね。
「そうねえ、それなら一層のことすぐに結婚させちゃったらどうかしら?」
ローズ様がいきなり結論を出してきたわ。
何のための恋を見守る会なんだか。気持ちはわかるけどもね。
「わたくしも賛成です。お義母様、そうしちゃいましょう」
いや、いや……この人たち暴走するタイプだったの?
わたしはサラダを口にしながら、しばしこの二人の様子を眺めていた。
「フローラちゃんは元々、王家に欲しかったのよ」
そうだったの? それは初耳。知らなかったわ。何気に爆弾発言じゃないかしら。
「ローナの国内栽培の成功でフローラちゃんが金紫珠褒賞を受けたでしょう。その時にね、王子妃にどうかってヘンリーと話をしていたのよ」
金紫珠褒賞とは国に貢献したりあらゆる分野で功績のあった貴族や国民を讃える最高の賞のこと。審査も厳しく滅多にもらえるものではなく受賞も二十年ぶりとか。
ローナの国内栽培は革新的で国にどれだけの利益を齎したのか計りしれないと言われている。
その時、フローラは十五才。たった十五才で誰もなしえることのできなかった研究を成功させたのだものね。賞にふさわしい人選だったわ。
ちなみにヘンリーとは国王陛下のことです。
「王子妃にって話が出てたのに、なぜ実現しなかったのですか?」
アンジェラが首を傾げながら聞いているけど、わたしもそこは疑問だわ。だって、フローラの婚約者いえ元婚約者は最低のエドガーだったんですからね。
「一応ね、ブルーバーグ侯爵家に打診はしたのよ。王子妃にどうかって」
「「うん、うん」」
マジですか?
わたしとアンジェラはカトラリーを皿に戻して聞き逃すまいと、全身が耳になったように身を乗り出した。
「こちらもいろいろと考えてはいたのよ。でもね……」
「「うん、うん」」
次の言葉を待つわたしたちをチラッと見ながら
「侯爵から王子妃と研究の両立は難しいのではないかと言われたのよ」
ガクッと肩を落として残念そうに語るローズ様。
「あー」
わたしは思わず声を出してしまったわ。
ローレンツおじさまの言い分もわかるわね。ブルーバーグ家に婿入りするわけではなく、嫡男がいるからそもそも無理だけど。王子妃だとその役目も担わなくてはいけないものね。
それにしてもフローラのためとはいえ王家からの結婚話を断ったのね。今にして思えばよい決断だったとは言えないわね。しょうがないことだけど。
「それは……なんとも。正論のような気がしなくもないですわね」
「そうなのよ。アンジェラ。あれだけの逸材を王家という籠の中に閉じ込めては、宝の持ち腐れになってしまうかもと考えてしまったのよ。だから無理強いはしなかったの」
「確かにあの頃はそうかもしれないわね。フローラちゃんは十五才でしょう? ブルーバーグ侯爵がそう思うのは無理もないかもしれませんね」
「でも、その結果が、あれでは……」
エドガーの所業を思い出してしまったわ。ムカムカしてきた。沸々と煮えたぎったマグマのような怒りが湧いてくる。あいつのせいでどれだけフローラが傷ついたことか、今すぐにでも思い知らせてやりたいくらいだわ。
怒りに震えていると
「ねっ。ディアナ、どうしたの? そんな鬼のような形相をして……怖いわよ」
アンジェラがビクビクと怯えたようにわたしの顔を窺ってた。若干、距離も取ってるわ。
そんなに怖かったかしら。
「ごめんなさい。ちょっと、いやなことを思い出しちゃっただけよ」
そうよね。
ここは≪フローラとレイニーの恋を見守る会≫だったわ。本来の目的を忘れるところでした。
「そうだわ。ローズ様。では、過去は過去として聞きますけど、誰の王子妃にするつもりだったんですか?」
王子妃にというからには誰か想定する王子がいたのよね。王子は三人だけど。王太子のエドワードはアンジェラと結婚していたから除外されるとして、残りは二人ね。
「あっ。わたくしも気になりますわ」
アンジェラが小さく手を上げた。一応興味はあるのね。わたしだけでなくてよかったわ。
ローズ様はわたしたちの顔を順に見つめてしばらくの沈黙の後、名前を口にした。
「……レイニーよ」
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