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第二部
公爵家のお茶会にてⅧ
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こ、これは……ブラックオレンジでは⁈ しかもグラスのふちには、くし形に切られた果肉が添えられています。これは……贅沢な使い方。
陽が沈む前の夕日ような濃い茜色、普通のオレンジとは違う色味を称してブラックオレンジと言われています。味もオレンジの何倍も濃厚で糖度も高く甘みも強い。それに栽培方法が難しいために希少価値が高いため、お値段のも高くなかなか手に入らない果物です。
濃厚な味なのでそのままストレートではなく、ミネラルウオーターやソーダ、氷等で薄めて飲むのが通常とされています。我が家でもお目にかかれるのは滅多にありません。
やっぱり、公爵家。
大勢のお客様を招待したお茶会で普通に提供されるなんて……すごいわ。
「ブラックオレンジジュースが気になりますの? 欲しければもらってくればいいんじゃないかしら。確か数量限定って言ってましたわよ。早い者勝ちですって」
私の目がブラックオレンジジュースに釘付けだったのがわかりやすかったのか、物欲しそうに見えていたのか、ビビアン様はストローでグラスの中をかき回しながら、レアな情報を教えてくれました。
貴重な果物ですものね。ふんだんに準備してあるわけではないのでしょう。
人が持ってきたものを物欲しそうにジーと見つめるという、はしたない行為を初対面のしかも高位貴族であるビビアン様にしてしまうなんて……恥ずかしい姿を見せてしまいました。
醜態に目を上げられずに俯いていると
「美味しそうですわね? ブラックオレンジのジュースなんて、めったにお目にかかれるものではないわ。わたしも注文しようかしら」
ディアナが助け舟を出してくれました。
「そうよねえ。わたくしだって、ほんの数回しか口にしたことはないわ。いい機会だから、一緒に飲みましょう? 早くしないとなくなってしまうわよ」
「そうね。ちょっと、行ってくるわ。フローラも行きましょう」
「ええ」
ディアナが席を立つのを見て私もつられるように立ち上がりました。
不躾な態度もビビアン様は気にならない様子で話を続けます。
「二人共、行ってらっしゃい。ここで待ってるわ」
ビビアン様は小さくひらひらと手を振って見送ってくれました。
「フローラったら、目を見開いてまじまじとジュースを見ているんだもの。ちょっと、おかしかったわ」
ディアナはその時の場面を思い出したのか、口に手を当ててくすくすと笑いだしました。
「もう、そんなに笑わなくていいじゃないの」
そんなにおかしかったのかしら?
ディアナの笑いはなかなかおさまりません。人前なので笑い声が控え目なのが妙に恥ずかしさを助長するようで、顔が火照っていきます。
穴があったら入りたいわ。ううん。自分で穴を掘って自ら埋めたい気分よ。そのくらい、恥ずかしい。
「気持ちはわかるわ。わたしも一瞬見入ってしまったもの。ブラックオレンジなんて珍しいものね。ローシャス公爵家の特産物だから、栽培元の特権ね」
ああ、そうでした。
驚きのあまり失念してましたけど、ブラックオレンジはローシャス公爵家のブランドの一つでした。そうとわかれば少し落ち着いてきました。
それでも、貴重品には変わりないのですけれど。
飲み物のカウンターまで行くと、私たちは目的のブラックオレンジジュースを頼みました。オーダーなっているようで注文を受け付けてから作ってくれるようです。よく見るとメニュー表が置いてありました。
出来上がるまで料理が並ぶカウンターへと目を移しました。種類も豊富で量が少なくなった皿を取り下げるとまた新しい料理が運ばれて熱々の湯気が食欲を誘っています。
やがて、ジュースが出来上がり受け取ってくると、ディアナは皿に料理を盛っていました。
「食べるの?」
皿の上には数種類。さっきのだって結構な量だったと思うのですが。
「もちろんよ。お腹すいているもの。フローラは?」
「どうしようかしら? でも、早く行かないとビビアン様が待っていらっしゃるのでは?」
「いいのよ。待たせておけば」
ビビアン様の姿を見た後、素っ気なく言い放つディアナ。
「でも……」
相手は公爵令嬢ですし、機嫌を損なえばどうなるのか。
「大丈夫よ。わたしたちに割って入ってきたのはあちら。それに料理を選ぶ時間くらい待ってくれるわよ」
「……」
言われてみれば、そうかも。ここはビュッフェ形式だから多少時間がかかっても問題はないのかもしれません。困ったちゃんって聞いたからちょっと心配してしまいました。
「わたしがさっき言ったことはあまり気にしないで。あくまでも私見だから。必要以上に気構えたりしなくてもいいと思うわ」
私の気持ちを察してくれたのでしょう。
ビビアン様の性格を把握しているようなディアナの言葉に、ホッと胸を撫で下ろしました。ディアナが言うのだから、きっと大丈夫なのでしょう。
陽が沈む前の夕日ような濃い茜色、普通のオレンジとは違う色味を称してブラックオレンジと言われています。味もオレンジの何倍も濃厚で糖度も高く甘みも強い。それに栽培方法が難しいために希少価値が高いため、お値段のも高くなかなか手に入らない果物です。
濃厚な味なのでそのままストレートではなく、ミネラルウオーターやソーダ、氷等で薄めて飲むのが通常とされています。我が家でもお目にかかれるのは滅多にありません。
やっぱり、公爵家。
大勢のお客様を招待したお茶会で普通に提供されるなんて……すごいわ。
「ブラックオレンジジュースが気になりますの? 欲しければもらってくればいいんじゃないかしら。確か数量限定って言ってましたわよ。早い者勝ちですって」
私の目がブラックオレンジジュースに釘付けだったのがわかりやすかったのか、物欲しそうに見えていたのか、ビビアン様はストローでグラスの中をかき回しながら、レアな情報を教えてくれました。
貴重な果物ですものね。ふんだんに準備してあるわけではないのでしょう。
人が持ってきたものを物欲しそうにジーと見つめるという、はしたない行為を初対面のしかも高位貴族であるビビアン様にしてしまうなんて……恥ずかしい姿を見せてしまいました。
醜態に目を上げられずに俯いていると
「美味しそうですわね? ブラックオレンジのジュースなんて、めったにお目にかかれるものではないわ。わたしも注文しようかしら」
ディアナが助け舟を出してくれました。
「そうよねえ。わたくしだって、ほんの数回しか口にしたことはないわ。いい機会だから、一緒に飲みましょう? 早くしないとなくなってしまうわよ」
「そうね。ちょっと、行ってくるわ。フローラも行きましょう」
「ええ」
ディアナが席を立つのを見て私もつられるように立ち上がりました。
不躾な態度もビビアン様は気にならない様子で話を続けます。
「二人共、行ってらっしゃい。ここで待ってるわ」
ビビアン様は小さくひらひらと手を振って見送ってくれました。
「フローラったら、目を見開いてまじまじとジュースを見ているんだもの。ちょっと、おかしかったわ」
ディアナはその時の場面を思い出したのか、口に手を当ててくすくすと笑いだしました。
「もう、そんなに笑わなくていいじゃないの」
そんなにおかしかったのかしら?
ディアナの笑いはなかなかおさまりません。人前なので笑い声が控え目なのが妙に恥ずかしさを助長するようで、顔が火照っていきます。
穴があったら入りたいわ。ううん。自分で穴を掘って自ら埋めたい気分よ。そのくらい、恥ずかしい。
「気持ちはわかるわ。わたしも一瞬見入ってしまったもの。ブラックオレンジなんて珍しいものね。ローシャス公爵家の特産物だから、栽培元の特権ね」
ああ、そうでした。
驚きのあまり失念してましたけど、ブラックオレンジはローシャス公爵家のブランドの一つでした。そうとわかれば少し落ち着いてきました。
それでも、貴重品には変わりないのですけれど。
飲み物のカウンターまで行くと、私たちは目的のブラックオレンジジュースを頼みました。オーダーなっているようで注文を受け付けてから作ってくれるようです。よく見るとメニュー表が置いてありました。
出来上がるまで料理が並ぶカウンターへと目を移しました。種類も豊富で量が少なくなった皿を取り下げるとまた新しい料理が運ばれて熱々の湯気が食欲を誘っています。
やがて、ジュースが出来上がり受け取ってくると、ディアナは皿に料理を盛っていました。
「食べるの?」
皿の上には数種類。さっきのだって結構な量だったと思うのですが。
「もちろんよ。お腹すいているもの。フローラは?」
「どうしようかしら? でも、早く行かないとビビアン様が待っていらっしゃるのでは?」
「いいのよ。待たせておけば」
ビビアン様の姿を見た後、素っ気なく言い放つディアナ。
「でも……」
相手は公爵令嬢ですし、機嫌を損なえばどうなるのか。
「大丈夫よ。わたしたちに割って入ってきたのはあちら。それに料理を選ぶ時間くらい待ってくれるわよ」
「……」
言われてみれば、そうかも。ここはビュッフェ形式だから多少時間がかかっても問題はないのかもしれません。困ったちゃんって聞いたからちょっと心配してしまいました。
「わたしがさっき言ったことはあまり気にしないで。あくまでも私見だから。必要以上に気構えたりしなくてもいいと思うわ」
私の気持ちを察してくれたのでしょう。
ビビアン様の性格を把握しているようなディアナの言葉に、ホッと胸を撫で下ろしました。ディアナが言うのだから、きっと大丈夫なのでしょう。
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