111 / 195
第二部
遠い告白Ⅴ
しおりを挟む
手を引かれて木々の合間をぬいながら歩いて行きます。ほどなくして視界がパァと開けたと思ったら、大きな噴水が目に入りました。大の大人でも泳げそうなくらい。大きなというより巨大なと言った方が合っているかもしれません。
飛沫を上げながら噴き出す噴水のてっぺんには、体を寄せ合う二羽の白鳥の彫刻が鎮座していました。そこを囲むようにベンチやテーブルが見えました。ここは王族の方の憩いの場所なのかもしれません。散歩するにも良さそうです。
「ここまでくれば大丈夫だろう。王族以外は誰も入れないからね」
「私が入っても大丈夫でしょうか?」
恐る恐る尋ねました。貴族達と共有する場所とは見るからに違います。静謐さの中にも神聖で清雅な雰囲気が空間を支配している聖域に私がいてもいいのかと畏れ多い気持ちになります。
そんな私の思いとは裏腹にレイ様はキョトンとした顔で私を見つめていました。
「俺が許可したから大丈夫だよ」
愛おしげに目を細めるレイ様に胸の奥が甘く疼きます。思いを自覚するとこんなにもひとつの表情が胸を打つのだと初めて知りました。レイ様はあまりにも優しすぎるので勘違いしそうにもなります。甘い夢は見ないようにしなければ、失礼になるでしょうし、彼はきっと私なんかを好きになるはずはないのですから。
「疲れただろう? 座ってゆっくり話さないか」
「はい」
木製ではなくクッション性のある柔らかいベンチ。ソファといってもいいくらいの座り心地のよいもので、それだけでも別空間だとわかります。
「レイ様、手を……」
「んっ?」
物音に気付いて場所を移動した時から、ずっと手をつないだままでした。
「もうそろそろ、離して頂いても……」
「いやだ。また、逃げられたらいやだからね。離さない」
「逃げませんよ」
たぶん。心の中でつけ加えて返事を返しました。それでもレイ様は納得していない様子。
「この前だって逃げたでしょう? なぜ? 話があると言ったのに」
「あれは……時間がなくて、あ、あの、あの……どうしても……」
あの日の事を思い出して、みるみる顔が朱に染まっていきます。レイ様への気持ちを自覚しましたなんて言えるわけもなくて、どう言い訳をしたものか、あたふたする私に何かが覆いかぶさったかと思ったら、レイ様に抱きしめられていました。
「レイ様」
「嫌われたわけではないよね」
「はい。嫌っていません。そんなことあるはずはありません」
だって、私はレイ様が大好きなのですから。
「よかった。ローラに嫌われたら立ち直れない」
「そんな、大袈裟ですよ。レイ様を嫌う人なんていないと思いますよ。大丈夫です」
彼の事を好きになっても嫌いになる人なんていないと思うわ。そこは断言できます。励ますように気落ちしたレイ様に声をかけると
「うん。ローラらしいね。ありがとう」
一声と共に、いっそう抱きしめられました。棒読みの声は気になったけれど、励ましにはなったようです。よかったわ。レイ様にはいつも元気でいてほしいもの。
「ところで、今日は何人の男と踊ったの?」
「えっ?」
唐突過ぎる問いに面食らってしまいました。未だレイ様の腕の中。さらにギュッと抱きしめられて息が……
「く、苦しい……」
レイ様の背中を叩きます。これ以上、力を込められたら窒息してしまいます。
「ご、ごめん」
やっと、腕の力を緩めて下さいましたが、苦悶から逃れ何度か深呼吸を繰り返している間もレイ様は私を離しませんでした。というより、いつの間にか膝の上にのせられて腕の中に囲われていました。
凄く、手慣れていらっしゃるんですが。とても女性の扱いに慣れていらっしゃるような、感じがします。
ダンスだって、お上手でしたし、何人もの令嬢と踊って楽しそうでしたし。
「それで、何人の令息と踊ったの?」
終わっていなかったのですね。そんなに気になることなのでしょうか?
「えっ……。三、四人くらいかと思います」
「そんなに踊ったの?」
驚かれるほど踊ったわけではないのでは? 普通では?
「レイ様だって、たくさんのご令嬢と踊っていらっしゃいました」
「俺は、二、三人くらいだと思うよ。ローラほどではないよ」
「……」
私ほどではないって、一人くらいしか違わないではないですか? それに確認しただけでも三人は超えていたと思います。列をなすほどのご令嬢相手ですから、二、三人ではなかったですよね。端折りすぎでは。
「ずっと、ご令嬢と踊っていらっしゃったから」
「うん。ローラもずっと誰かと踊ってた」
沈黙がおりて辺りが静寂に包まれた庭園。二人だけの世界を見守るように星々が輝いていました。
「本当はファーストダンスだって、ローラと踊りたかったんだ。二曲目だって、三曲目だって、本当はずっとローラと踊りたかった」
「……レイ様」
突然の告白にすぐに言葉が出てきませんでした。これはどう解釈すればいいのでしょう?
「私もレイ様ともっと踊りたかった。でも……」
言葉を紡ぐ前に人差し指を唇に当てられて、遮られました。レイ様の長い指が唇に触れて大きく心臓が跳ねます。菫色の瞳が私の心を捉えて体の芯が熱く火照るよう。
ドキドキと逸る心臓の音が耳にやけに響くから、彼に聞こえやしないかと恥ずかしさがこみ上げてきて、ますます、顔が赤くなっていきました。
指を外して下さらないかしら? このままでは声を出すこともできないですし、指の感触がリアルすぎて、このままでは心臓が壊れそうです。
私をジッと見つめていたレイ様の目元が緩んで笑みが浮かびました。八重の薔薇が絢爛と咲き誇るような麗しい笑顔。あまりの美しさに息を吞みました。
今夜のレイ様はいつもと違う。ぼんやりとそんなことを考えていると、唇から外された指は優雅に弧を描き私の胸元へ。
その様子がまるでスローモーションのように目に映って、呼吸をするのも忘れて見入っていました。しなやかな動きで髪を一房掬い取ったレイ様は唇を近づけてキスを落としました。
か、髪にキス⁈
一瞬、何が起きたのかわからなくて私のすべての機能がフリーズして頭が真っ白に……
「踊ろうか? ローラと踊らないと今夜は眠れないかもしれない」
形の良い唇が言葉を紡ぎます。ちょっとおどけたようなレイ様の声にハッと我に帰りました。
ううん。レイ様はきっと眠れるわ。だって、何事もなかったようにとても冷静だもの。
眠れないのは私の方だわ。今夜の出来事が忘れられなくて。狼狽えているのは私だけで、レイ様にとっては何でもないことなのよ。自惚れてはダメよ。
ふわりと抱えあげられた体はすぐに地に下ろされました。手を取られて空いている場所まで来ると呼吸を整えます。レイ様のリードを受けて体を動かしました。
今も大ホールではダンスが続いているのでしょうか。ここまで音楽は聞こえないけれど、体は自然とリズムを取っていました。レイ様のリードが素晴らしいからだわ。とても踊りやすい。
レイ様が曲を口ずさみます。聞き覚えのある音楽だわ。私と踊った曲かしら?
つないだ手がお互いの体温を感じて、お互い見つめ合うと天にも昇る心地に自然と笑みが零れます。
レイ様が好き。
このまま、ずっと踊っていたいわ。永遠なんてないのに、願ってしまう。あの時の瑕疵が頭をもたげそうになるのを抑えて、抑えて、蓋をしました。今は、今だけは無垢のまま幸せのままでいたいわ。
「今夜はこれで眠れますね」
ちょっと茶目っ気を出して、冗談めいて言ってみました。
「まだ、眠れないかな? だから、もうちょっとだけつきあって?」
一曲では足りなかったのかしら?
レイ様と踊るのは楽しくて一曲で終わりにしたくなくて、頷きました。踊る準備をと思ったら、手を引かれて行ったのは先ほどのベンチです。
「話があると言ったのは覚えている?」
腰を下ろしたレイ様はまっすぐに私を見つめていました。そういえば、先日も言われたような気がします。ダンスではなく話がしたかったのね。
「はい」
また逃げ出すとでも思っていらっしゃるのか、真剣な表情のレイ様は私の両手をしっかりと握りしめています。
先日は完全なる私情で逃げましたが、今回はそんな心配はいらないと思うのです。どんな内容か想像もつきませんけれど、逃げ出すような事はないでしょう、きっと。
お菓子の話かもしれませんし、厨房の調整ができたとか、現実逃避しているような感は否めませんが、妙な邪推はいけませんよね。
覚悟を決めました。
「レイ様、お話というのは?」
今までにないくらいの真剣で真面目な表情のレイ様に私の心にも緊張が走ります。何か深刻な話なのでしょうか?
緊張しすぎて逃げ出したくなったわ。どうしましょう。がっつりと掴まれた手がそれを許してくれません。
「うん。逃げないでね」
釘を刺されました。先ほどよりも距離も縮まっているような気がします。至近距離で話さないといけないことなのでしょうか。あまりの非日常な雰囲気にごくりと唾を飲み込みました。
二度目の覚悟です。
話を聞かないと帰してもらえないような気がしたので、大きく頷きました。
「俺は、ロー……」
バキ、バキッ。
突然、何かが折れたような大きな音が辺りに響きました。
レイ様の声は空へと吸い込まれて、最後まで発することが出来ませんでした。
誰も入れないはずの王族の庭園での不気味な物音に怖気が全身を襲います。レイ様が恐怖に震える私を抱き寄せてくれました。
私達は顔を見合わせて、それから、音のした方をゆっくりと振り向きました。
ヒッ。
思わず悲鳴が漏れました。
なぜ、ここに、ビビアン様が……
恐ろしいほどの瞋恚の目で睨みつけるビビアン様が立っていたのです。
飛沫を上げながら噴き出す噴水のてっぺんには、体を寄せ合う二羽の白鳥の彫刻が鎮座していました。そこを囲むようにベンチやテーブルが見えました。ここは王族の方の憩いの場所なのかもしれません。散歩するにも良さそうです。
「ここまでくれば大丈夫だろう。王族以外は誰も入れないからね」
「私が入っても大丈夫でしょうか?」
恐る恐る尋ねました。貴族達と共有する場所とは見るからに違います。静謐さの中にも神聖で清雅な雰囲気が空間を支配している聖域に私がいてもいいのかと畏れ多い気持ちになります。
そんな私の思いとは裏腹にレイ様はキョトンとした顔で私を見つめていました。
「俺が許可したから大丈夫だよ」
愛おしげに目を細めるレイ様に胸の奥が甘く疼きます。思いを自覚するとこんなにもひとつの表情が胸を打つのだと初めて知りました。レイ様はあまりにも優しすぎるので勘違いしそうにもなります。甘い夢は見ないようにしなければ、失礼になるでしょうし、彼はきっと私なんかを好きになるはずはないのですから。
「疲れただろう? 座ってゆっくり話さないか」
「はい」
木製ではなくクッション性のある柔らかいベンチ。ソファといってもいいくらいの座り心地のよいもので、それだけでも別空間だとわかります。
「レイ様、手を……」
「んっ?」
物音に気付いて場所を移動した時から、ずっと手をつないだままでした。
「もうそろそろ、離して頂いても……」
「いやだ。また、逃げられたらいやだからね。離さない」
「逃げませんよ」
たぶん。心の中でつけ加えて返事を返しました。それでもレイ様は納得していない様子。
「この前だって逃げたでしょう? なぜ? 話があると言ったのに」
「あれは……時間がなくて、あ、あの、あの……どうしても……」
あの日の事を思い出して、みるみる顔が朱に染まっていきます。レイ様への気持ちを自覚しましたなんて言えるわけもなくて、どう言い訳をしたものか、あたふたする私に何かが覆いかぶさったかと思ったら、レイ様に抱きしめられていました。
「レイ様」
「嫌われたわけではないよね」
「はい。嫌っていません。そんなことあるはずはありません」
だって、私はレイ様が大好きなのですから。
「よかった。ローラに嫌われたら立ち直れない」
「そんな、大袈裟ですよ。レイ様を嫌う人なんていないと思いますよ。大丈夫です」
彼の事を好きになっても嫌いになる人なんていないと思うわ。そこは断言できます。励ますように気落ちしたレイ様に声をかけると
「うん。ローラらしいね。ありがとう」
一声と共に、いっそう抱きしめられました。棒読みの声は気になったけれど、励ましにはなったようです。よかったわ。レイ様にはいつも元気でいてほしいもの。
「ところで、今日は何人の男と踊ったの?」
「えっ?」
唐突過ぎる問いに面食らってしまいました。未だレイ様の腕の中。さらにギュッと抱きしめられて息が……
「く、苦しい……」
レイ様の背中を叩きます。これ以上、力を込められたら窒息してしまいます。
「ご、ごめん」
やっと、腕の力を緩めて下さいましたが、苦悶から逃れ何度か深呼吸を繰り返している間もレイ様は私を離しませんでした。というより、いつの間にか膝の上にのせられて腕の中に囲われていました。
凄く、手慣れていらっしゃるんですが。とても女性の扱いに慣れていらっしゃるような、感じがします。
ダンスだって、お上手でしたし、何人もの令嬢と踊って楽しそうでしたし。
「それで、何人の令息と踊ったの?」
終わっていなかったのですね。そんなに気になることなのでしょうか?
「えっ……。三、四人くらいかと思います」
「そんなに踊ったの?」
驚かれるほど踊ったわけではないのでは? 普通では?
「レイ様だって、たくさんのご令嬢と踊っていらっしゃいました」
「俺は、二、三人くらいだと思うよ。ローラほどではないよ」
「……」
私ほどではないって、一人くらいしか違わないではないですか? それに確認しただけでも三人は超えていたと思います。列をなすほどのご令嬢相手ですから、二、三人ではなかったですよね。端折りすぎでは。
「ずっと、ご令嬢と踊っていらっしゃったから」
「うん。ローラもずっと誰かと踊ってた」
沈黙がおりて辺りが静寂に包まれた庭園。二人だけの世界を見守るように星々が輝いていました。
「本当はファーストダンスだって、ローラと踊りたかったんだ。二曲目だって、三曲目だって、本当はずっとローラと踊りたかった」
「……レイ様」
突然の告白にすぐに言葉が出てきませんでした。これはどう解釈すればいいのでしょう?
「私もレイ様ともっと踊りたかった。でも……」
言葉を紡ぐ前に人差し指を唇に当てられて、遮られました。レイ様の長い指が唇に触れて大きく心臓が跳ねます。菫色の瞳が私の心を捉えて体の芯が熱く火照るよう。
ドキドキと逸る心臓の音が耳にやけに響くから、彼に聞こえやしないかと恥ずかしさがこみ上げてきて、ますます、顔が赤くなっていきました。
指を外して下さらないかしら? このままでは声を出すこともできないですし、指の感触がリアルすぎて、このままでは心臓が壊れそうです。
私をジッと見つめていたレイ様の目元が緩んで笑みが浮かびました。八重の薔薇が絢爛と咲き誇るような麗しい笑顔。あまりの美しさに息を吞みました。
今夜のレイ様はいつもと違う。ぼんやりとそんなことを考えていると、唇から外された指は優雅に弧を描き私の胸元へ。
その様子がまるでスローモーションのように目に映って、呼吸をするのも忘れて見入っていました。しなやかな動きで髪を一房掬い取ったレイ様は唇を近づけてキスを落としました。
か、髪にキス⁈
一瞬、何が起きたのかわからなくて私のすべての機能がフリーズして頭が真っ白に……
「踊ろうか? ローラと踊らないと今夜は眠れないかもしれない」
形の良い唇が言葉を紡ぎます。ちょっとおどけたようなレイ様の声にハッと我に帰りました。
ううん。レイ様はきっと眠れるわ。だって、何事もなかったようにとても冷静だもの。
眠れないのは私の方だわ。今夜の出来事が忘れられなくて。狼狽えているのは私だけで、レイ様にとっては何でもないことなのよ。自惚れてはダメよ。
ふわりと抱えあげられた体はすぐに地に下ろされました。手を取られて空いている場所まで来ると呼吸を整えます。レイ様のリードを受けて体を動かしました。
今も大ホールではダンスが続いているのでしょうか。ここまで音楽は聞こえないけれど、体は自然とリズムを取っていました。レイ様のリードが素晴らしいからだわ。とても踊りやすい。
レイ様が曲を口ずさみます。聞き覚えのある音楽だわ。私と踊った曲かしら?
つないだ手がお互いの体温を感じて、お互い見つめ合うと天にも昇る心地に自然と笑みが零れます。
レイ様が好き。
このまま、ずっと踊っていたいわ。永遠なんてないのに、願ってしまう。あの時の瑕疵が頭をもたげそうになるのを抑えて、抑えて、蓋をしました。今は、今だけは無垢のまま幸せのままでいたいわ。
「今夜はこれで眠れますね」
ちょっと茶目っ気を出して、冗談めいて言ってみました。
「まだ、眠れないかな? だから、もうちょっとだけつきあって?」
一曲では足りなかったのかしら?
レイ様と踊るのは楽しくて一曲で終わりにしたくなくて、頷きました。踊る準備をと思ったら、手を引かれて行ったのは先ほどのベンチです。
「話があると言ったのは覚えている?」
腰を下ろしたレイ様はまっすぐに私を見つめていました。そういえば、先日も言われたような気がします。ダンスではなく話がしたかったのね。
「はい」
また逃げ出すとでも思っていらっしゃるのか、真剣な表情のレイ様は私の両手をしっかりと握りしめています。
先日は完全なる私情で逃げましたが、今回はそんな心配はいらないと思うのです。どんな内容か想像もつきませんけれど、逃げ出すような事はないでしょう、きっと。
お菓子の話かもしれませんし、厨房の調整ができたとか、現実逃避しているような感は否めませんが、妙な邪推はいけませんよね。
覚悟を決めました。
「レイ様、お話というのは?」
今までにないくらいの真剣で真面目な表情のレイ様に私の心にも緊張が走ります。何か深刻な話なのでしょうか?
緊張しすぎて逃げ出したくなったわ。どうしましょう。がっつりと掴まれた手がそれを許してくれません。
「うん。逃げないでね」
釘を刺されました。先ほどよりも距離も縮まっているような気がします。至近距離で話さないといけないことなのでしょうか。あまりの非日常な雰囲気にごくりと唾を飲み込みました。
二度目の覚悟です。
話を聞かないと帰してもらえないような気がしたので、大きく頷きました。
「俺は、ロー……」
バキ、バキッ。
突然、何かが折れたような大きな音が辺りに響きました。
レイ様の声は空へと吸い込まれて、最後まで発することが出来ませんでした。
誰も入れないはずの王族の庭園での不気味な物音に怖気が全身を襲います。レイ様が恐怖に震える私を抱き寄せてくれました。
私達は顔を見合わせて、それから、音のした方をゆっくりと振り向きました。
ヒッ。
思わず悲鳴が漏れました。
なぜ、ここに、ビビアン様が……
恐ろしいほどの瞋恚の目で睨みつけるビビアン様が立っていたのです。
3
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された聖女リリアナの庭には、ちょっと変わった来訪者しか来ません。』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
王都から少し離れた小高い丘の上。
そこには、聖女リリアナの庭と呼ばれる不思議な場所がある。
──けれど、誰もがたどり着けるわけではない。
恋するルミナ五歳、夢みるルーナ三歳。
ふたりはリリアナの庭で、今日もやさしい魔法を育てています。
この庭に来られるのは、心がちょっぴりさびしい人だけ。
まほうに傷ついた王子さま、眠ることでしか気持ちを伝えられない子、
そして──ほんとうは泣きたかった小さな精霊たち。
お姉ちゃんのルミナは、花を咲かせる明るい音楽のまほうつかい。
ちょっとだけ背伸びして、だいすきな人に恋をしています。
妹のルーナは、ねむねむ魔法で、夢の中を旅するやさしい子。
ときどき、だれかの心のなかで、静かに花を咲かせます。
ふたりのまほうは、まだ小さくて、でもあたたかい。
「だいすきって気持ちは、
きっと一番すてきなまほうなの──!」
風がふくたびに、花がひらき、恋がそっと実る。
これは、リリアナの庭で育つ、
小さなまほうつかいたちの恋と夢の物語です。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
冷徹侯爵の契約妻ですが、ざまぁの準備はできています
鍛高譚
恋愛
政略結婚――それは逃れられぬ宿命。
伯爵令嬢ルシアーナは、冷徹と名高いクロウフォード侯爵ヴィクトルのもとへ“白い結婚”として嫁ぐことになる。
愛のない契約、形式だけの夫婦生活。
それで十分だと、彼女は思っていた。
しかし、侯爵家には裏社会〈黒狼〉との因縁という深い闇が潜んでいた。
襲撃、脅迫、謀略――次々と迫る危機の中で、
ルシアーナは自分がただの“飾り”で終わることを拒む。
「この結婚をわたしの“負け”で終わらせませんわ」
財務の才と冷静な洞察を武器に、彼女は黒狼との攻防に踏み込み、
やがて侯爵をも驚かせる一手を放つ。
契約から始まった関係は、いつしか互いの未来を揺るがすものへ――。
白い結婚の裏で繰り広げられる、
“ざまぁ”と逆転のラブストーリー、いま開幕。
異世界転生公爵令嬢は、オタク知識で世界を救う。
ふわふわ
恋愛
過労死したオタク女子SE・桜井美咲は、アストラル王国の公爵令嬢エリアナとして転生。
前世知識フル装備でEDTA(重金属解毒)、ペニシリン、輸血、輪作・土壌改良、下水道整備、時計や文字の改良まで――「ラノベで読んだ」「ゲームで見た」を現実にして、疫病と貧困にあえぐ世界を丸ごとアップデートしていく。
婚約破棄→ザマァから始まり、医学革命・農業革命・衛生革命で「狂気のお嬢様」呼ばわりから一転“聖女様”に。
国家間の緊張が高まる中、平和のために隣国アリディアの第一王子レオナルド(5歳→6歳)と政略婚約→結婚へ。
無邪気で健気な“甘えん坊王子”に日々萌え悶えつつも、彼の未来の王としての成長を支え合う「清らかで温かい夫婦日常」と「社会を良くする小さな革命」を描く、爽快×癒しの異世界恋愛ザマァ物語。
元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界にお助けキャラとして転生したリリアン。
無事ヒロインを王太子とくっつけ、自身も幼馴染と結婚。子供や孫にも恵まれて幸せな生涯を閉じた……はずなのに。
目覚めると、何故か孫娘マリアンヌの中にいた。
マリアンヌは続編ゲームの悪役令嬢で第二王子の婚約者。
婚約者と仲の悪かったマリアンヌは、学園の階段から落ちたという。
その婚約者は中身がリリアンに変わった事に大喜びで……?!
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる