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第二部
リリアside⑦
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しばらくすると友達は婚約者とダンスをするために離れていった。イネスとヘレンのダンスを見ながらエドガーを待っていたけど、なかなか帰ってこない。男友達と盛り上がっているのかもしれない。
「お腹、すいたなあ」
待てども待てども来ないエドガーにしびれを切らして、あたしは料理コーナーへ行くことにした。王城で出される料理は超一流できっと美味しいだろうな。いつもは飲まないけど、お酒もチョッピリだけど飲んでみようかな。卒業祝いだもんね。広いとはいえ室内だし、ここにいなくてもエドガーは探してくれるよね。
そう結論づけると早速歩き出した。
料理コーナーを目指していると子供の姿が目に入った。しかも、フローラさんがいる。見知った顔を見つけてあたしは近づいて行った。
『かわいい。こんなところに子供が。ねえ、ねえ。僕の名前はなんていうの?』
気が付けばそんな声が出ていた。
だって、ホントにかわいかったんだもん。
金髪碧眼。絵に描いたような整った顔立ち。周りは金粉が舞ってキラキラしていて、まるで天使みたい。こんな神々しい子どもって初めて見たかも。
あたしは一目で気にいってしまった。
この子のお世話をしてあげたい。一緒に遊んでお友達になりたい。姉弟のように慕ってくれたらいいなあ。なんて、夢を見た。
『申し訳ありませんが、こちらは王太子殿下の御子様でいらっしゃいます。軽々しく話しかけるのはいかがなものかと思います』
固い声で牽制するフローラさんの声がした。
なるほど、王子様か。そういえば、この子を抱いていた人がいたな。その人が王太子殿下? 偉い人の子供なんだ。
『へえ。小さくても王子様なんだ。かわいい。別にいいじゃないの。子供なんだし。それにあたしって子供好きされるのよ。近所では大人気だったんだから』
偉い人の子供でも子供だもん。遊んだっていいはずよ。そうなの。あたしって物凄く子供に懐かれるんだよね。あたしに纏わりついて、抱っこしてーとかかくれんぼや鬼ごっこしよーとか誘われて大変だったんだから。
『ねっ。お姉ちゃんと遊ぼ』
『やだ』
なのに、ソッコーで振られたんだけど。なんで?
子供悩殺スマイルで微笑みかけてみるも、反応がないどころか、ちょっと怯えてる感じ?
子供ってこの笑顔を見せるとたいてい打ち解けるはずなんだけど。なんで、この子は怖がるの?
『もしかして、照れてるのかな? たまにいるのよね。ホントは遊びたいけど、恥ずかしがってもじもじしている子』
きっと、そう。
いるいる。いるんだよね。兄姉の後ろに隠れて顔を見せない子。
警戒心が強かったり、引っ込み思案なだけで、慣れるとウソみたいに仲良くなるタイプ。きっとこの子もそんなタイプね。大丈夫。あたしは面倒見のいい優しいお姉ちゃんだから。
『ローラおねえちゃん』
天使がフローラさんを見上げて愛称を呼ぶのを聞いて、ズルいと思った。ローラおねえちゃんだなんて親し気に呼ばれるのはズルいわ。あたしだって。
『ローラお姉ちゃん? フローラさんのこと? じゃあ、あたしはリリアお姉ちゃんって呼んでね。ねっ、お腹すかない? お料理取ってあげるから、一緒に行こうよ』
『チェント男爵令嬢。いい加減にお止めください』
『もう、男爵令嬢ってなんなのよ。他人行儀な呼び方は背中がムズムズするわ。リリアでいいわよ』
ホントにイライラする。さっきからなんなのよ。眉間に皺を寄せて機嫌の悪そうな声であたしを睨みつけなくてもいいじゃない。
それともあたしに天使を奪われると思って怒っていたりして。
その線も考えられるわ。なにせあたしって子供好きされるから。天使もあたしに夢中になったりして。なんて考えていたら、笑いがこみ上げてきたけれど、ここは我慢。まずは天使と仲良くならなくちゃ。
『あっ、そういえば。僕の名前はなんていうの? 教えて』
『……』
『あたしはリリアよ。教えてくれるかな?』
『……』
『ちょっとくらい、教えてくれてもいいでしょ」
『……』
子供悩殺スマイルで聞いてみるも返事なし。たいていこれで子供は落ちるのに。その上、フローラさんの後ろに隠れてしまった。
なんなのよ。もう。
『フローラさん、邪魔しないで。というか、ちゃんとフォローしてよ』
そばにいるんだから、あたしのために手助けしてくれてもいいでしょ。ホント、気が利かないんだから。非難じみた視線を送るとさっきよりも不機嫌な顔になったフローラさんがいた。
あたしに協力する気はないわけね。それじゃあ、自力で頑張るわよ。
『リリア様、リチャード殿下は王族です。敬意をもって接してください』
リチャードって名前なんだあ。いい名前。さすが王子様。
フローラさん、名前教えてくれてありがとう。心の中でお礼を言う。
敬意をもってって、子供だよね。変に畏まるよりざっくばらんに接して親しみが持てた方がいいんじゃない?
ホント、お貴族様って面倒。身分って、そんなに大事なの?
『リチャードっていうの。リチャード君、リリアお姉ちゃんと遊ぼう』
今は、リチャード君と遊ぶ時間よ。久々振りに子供と遊べるわ。子供達の笑い声を聞くと元気をもらえたりして、癒しにもなっていたんだよね。お母さんが病気がちになっていた時は特に。
あたしはリチャード君の手を掴んで歩き出そうとした。
『イヤだ』
『リリア様、いい加減にしてください』
連れていかれまいと抵抗するリチャード君を見兼ねたのかフローラさんの叱責が飛ぶ。
『なによ。ちょこっと遊ぶだけじゃないの。すぐにフローラさんの所に連れてくるわよ。だから、安心して』
『そういうことではありません』
リチャード君を抱きしめたフローラさんとバッチリと目が合う。
ここで目を逸らすと負け。
それに抱きしめられたリチャード君の表情が和らいだのにムカついた。あたしとは全然違うじゃない。ローラお姉ちゃんって呼ばせるくらいなんだから、仲が良いのかもしれないけど。あたしだって、すぐに仲良くなってみせる。
バチバチと火花を散らせて睨み合っていた。
そんな時に
『どうしたの?』
緊迫感を解く、ちょっと低めの心地よい声があたしの耳を擽った。
「お腹、すいたなあ」
待てども待てども来ないエドガーにしびれを切らして、あたしは料理コーナーへ行くことにした。王城で出される料理は超一流できっと美味しいだろうな。いつもは飲まないけど、お酒もチョッピリだけど飲んでみようかな。卒業祝いだもんね。広いとはいえ室内だし、ここにいなくてもエドガーは探してくれるよね。
そう結論づけると早速歩き出した。
料理コーナーを目指していると子供の姿が目に入った。しかも、フローラさんがいる。見知った顔を見つけてあたしは近づいて行った。
『かわいい。こんなところに子供が。ねえ、ねえ。僕の名前はなんていうの?』
気が付けばそんな声が出ていた。
だって、ホントにかわいかったんだもん。
金髪碧眼。絵に描いたような整った顔立ち。周りは金粉が舞ってキラキラしていて、まるで天使みたい。こんな神々しい子どもって初めて見たかも。
あたしは一目で気にいってしまった。
この子のお世話をしてあげたい。一緒に遊んでお友達になりたい。姉弟のように慕ってくれたらいいなあ。なんて、夢を見た。
『申し訳ありませんが、こちらは王太子殿下の御子様でいらっしゃいます。軽々しく話しかけるのはいかがなものかと思います』
固い声で牽制するフローラさんの声がした。
なるほど、王子様か。そういえば、この子を抱いていた人がいたな。その人が王太子殿下? 偉い人の子供なんだ。
『へえ。小さくても王子様なんだ。かわいい。別にいいじゃないの。子供なんだし。それにあたしって子供好きされるのよ。近所では大人気だったんだから』
偉い人の子供でも子供だもん。遊んだっていいはずよ。そうなの。あたしって物凄く子供に懐かれるんだよね。あたしに纏わりついて、抱っこしてーとかかくれんぼや鬼ごっこしよーとか誘われて大変だったんだから。
『ねっ。お姉ちゃんと遊ぼ』
『やだ』
なのに、ソッコーで振られたんだけど。なんで?
子供悩殺スマイルで微笑みかけてみるも、反応がないどころか、ちょっと怯えてる感じ?
子供ってこの笑顔を見せるとたいてい打ち解けるはずなんだけど。なんで、この子は怖がるの?
『もしかして、照れてるのかな? たまにいるのよね。ホントは遊びたいけど、恥ずかしがってもじもじしている子』
きっと、そう。
いるいる。いるんだよね。兄姉の後ろに隠れて顔を見せない子。
警戒心が強かったり、引っ込み思案なだけで、慣れるとウソみたいに仲良くなるタイプ。きっとこの子もそんなタイプね。大丈夫。あたしは面倒見のいい優しいお姉ちゃんだから。
『ローラおねえちゃん』
天使がフローラさんを見上げて愛称を呼ぶのを聞いて、ズルいと思った。ローラおねえちゃんだなんて親し気に呼ばれるのはズルいわ。あたしだって。
『ローラお姉ちゃん? フローラさんのこと? じゃあ、あたしはリリアお姉ちゃんって呼んでね。ねっ、お腹すかない? お料理取ってあげるから、一緒に行こうよ』
『チェント男爵令嬢。いい加減にお止めください』
『もう、男爵令嬢ってなんなのよ。他人行儀な呼び方は背中がムズムズするわ。リリアでいいわよ』
ホントにイライラする。さっきからなんなのよ。眉間に皺を寄せて機嫌の悪そうな声であたしを睨みつけなくてもいいじゃない。
それともあたしに天使を奪われると思って怒っていたりして。
その線も考えられるわ。なにせあたしって子供好きされるから。天使もあたしに夢中になったりして。なんて考えていたら、笑いがこみ上げてきたけれど、ここは我慢。まずは天使と仲良くならなくちゃ。
『あっ、そういえば。僕の名前はなんていうの? 教えて』
『……』
『あたしはリリアよ。教えてくれるかな?』
『……』
『ちょっとくらい、教えてくれてもいいでしょ」
『……』
子供悩殺スマイルで聞いてみるも返事なし。たいていこれで子供は落ちるのに。その上、フローラさんの後ろに隠れてしまった。
なんなのよ。もう。
『フローラさん、邪魔しないで。というか、ちゃんとフォローしてよ』
そばにいるんだから、あたしのために手助けしてくれてもいいでしょ。ホント、気が利かないんだから。非難じみた視線を送るとさっきよりも不機嫌な顔になったフローラさんがいた。
あたしに協力する気はないわけね。それじゃあ、自力で頑張るわよ。
『リリア様、リチャード殿下は王族です。敬意をもって接してください』
リチャードって名前なんだあ。いい名前。さすが王子様。
フローラさん、名前教えてくれてありがとう。心の中でお礼を言う。
敬意をもってって、子供だよね。変に畏まるよりざっくばらんに接して親しみが持てた方がいいんじゃない?
ホント、お貴族様って面倒。身分って、そんなに大事なの?
『リチャードっていうの。リチャード君、リリアお姉ちゃんと遊ぼう』
今は、リチャード君と遊ぶ時間よ。久々振りに子供と遊べるわ。子供達の笑い声を聞くと元気をもらえたりして、癒しにもなっていたんだよね。お母さんが病気がちになっていた時は特に。
あたしはリチャード君の手を掴んで歩き出そうとした。
『イヤだ』
『リリア様、いい加減にしてください』
連れていかれまいと抵抗するリチャード君を見兼ねたのかフローラさんの叱責が飛ぶ。
『なによ。ちょこっと遊ぶだけじゃないの。すぐにフローラさんの所に連れてくるわよ。だから、安心して』
『そういうことではありません』
リチャード君を抱きしめたフローラさんとバッチリと目が合う。
ここで目を逸らすと負け。
それに抱きしめられたリチャード君の表情が和らいだのにムカついた。あたしとは全然違うじゃない。ローラお姉ちゃんって呼ばせるくらいなんだから、仲が良いのかもしれないけど。あたしだって、すぐに仲良くなってみせる。
バチバチと火花を散らせて睨み合っていた。
そんな時に
『どうしたの?』
緊迫感を解く、ちょっと低めの心地よい声があたしの耳を擽った。
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